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コロナ禍における働き方やコミュニケーションに関するQ&A

管理職として、コロナ禍での環境の変化に伴い、働き方やコミュニケーションの方法などさまざまな局面で対応を変えていくことを余儀なくされている方も多いでしょう。ピースマインド主催のウェブセミナーご参加者から寄せられたご質問と、当社臨床心理士からの回答をご紹介します。ぜひこちらの回答を参考にしてください。

本記事の監修者

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1. コロナ禍での働き方に関する質問

Q1.  在宅勤務中の作業スペース確保に困っている部下がいます。在宅時間が長くなり、夫婦がお互いに集中して作業できる距離が取れないようです。部下の妻は専業主婦で在宅勤務はしていませんが、リビングでパソコンを広げていると邪魔と言われてしまうようです。部下に対して、どのようなアドバイスをしたら良いでしょうか。

A. 夫婦間で作業スペースに関する取り決めをし、話し合いの際にはポジティブなメッセージでやり取りをするよう伝えてみましょう。大変な状況での勤務について、部下を労うことも大切です。

在宅勤務における作業スペースに関しては、何気なく決めるのではなく、夫婦間で相談して取りきめをしておいて方がよいです。その際、お互いの立場を主張しすぎず、妥協点を見つけていくことが重要です。具体的な工夫としては、

・カーテンや家具などで作業用スペースを区切り空間を作る
・時間帯を決めて交代しながら使い合う

などの方法も効果的です。また、

・そんなものいつでもできるだろう等のように、相手の業務(家事)を否定しない
・ネガティブなメッセージではなくポジティブなメッセージで伝えてみる
(例)「あなたがいると、邪魔なんだけど...」ではなく、「別の部屋にいてくれるお陰で仕事に集中できる、ありがとう」と伝えてみましょう。

など、コロナウィルスの問題で、普段と異なる環境や精神状態になっていることを自覚し、その点について夫婦で確認し合いましょう。その上で協力して家庭を守り、維持していくというスタンスを保つようにするのが大切です。

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また、部下の方が「現状の大変さを伝え理解を求めている」だけなのか、「問題解決を望んでいる」のか等、レベルに応じてご対応を選択していただく事もポイントとなります。アドバイスの前に部下の話を聴き、状況への理解を求めているだけの場合は、大変な状況での勤務を労うことで 問題が解決することもあります。

Q2. 在宅勤務の取り入れ方について、具体的な事例をいくつか教えてほしいです。

A. 業界や業態によって在宅勤務の取り入れ方は異なり、取組みも様々です。よろしければ、厚生労働省がまとめている「テレワーク活用の好事例集」もご参照ください。

顧客企業におかれては、在宅勤務に関してさまざまな取組みが試されています。業界や業態によって、在宅勤務の推進体制も個別性が高い様子です。 全ての社員が在宅勤務可能になっている企業もあり、社内外コミュニケーションにおいては、ウェブ会議システムの導入、メール以外の社内コミュニケーションツール 活用、共有スケジューラーの活用などによって、効率が向上している企業もあると聞いています。

一方で、オフィスに出社しないと出来ない業務に関しては、処理時期をずらす、ウェブ上のやり取りで推進できる方策で代替する、少数の出社社員が短時間出社し対応するなどの工夫をされているようです。

Q3. コロナの影響で新入社員を在宅ワークとしましたが、与える仕事がありません。他社での事例があれば教えてほしいです。

A. 業務関連や関係部署とのTV会議に参加してもらい議事録を任せたり、今後に活かせる知識や資格習得の推奨など、やるべきことを明確にしてあげましょう。

不安の中にいる新入社員へは、パフォーマンス優位よりも、人材維持を優先して対応する時期です。 定期的なコンタクトは必須です。

業務イメージがつかめない不安に対しては、TV会議などで先輩社員が行っている業務の一端を見せたり、会議録のまとめを担当したりするなど、いくつか方法があります。会社によっては仮の配属を先行しておこない、現場のリアリティに触れている新入社員もいるようです。 それ以外にも、義務とせず、緩やかに資格習得を課題として求め、自宅で出来ることを与えている会社もあります。

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いずれにせよ、会社の状況がわからない新入社員はより不安を抱えがちです。特に「解雇されるのではないか」「自分たちだけ後れをとってしまい、今後のキャリアにとって不利益なことがあるのではないか」といった不安を抱えても、質問もしづらい状態にあります。 会社から今後の方向性と彼らへの期待値を伝え、現在できること(本来この時期に覚えておきたい知識などを伝え、自己学習させるなど)を示し、やるべき課題を与えることが安心感につながります。

2. コロナ禍でのコミュニケーションに関する質問

Q1. 在宅勤務でメールのやりとりをしていたところ、若手が1人暮らしで滅入っていることがわかりました。まだ当分在宅勤務が続きそうで心配です。どのようにアプローチする方法がありますか?

A. 部下と定期的に1対1の面談機会を作り、課題を一緒に考えたり、出来ていることをフィードバックしましょう。


在宅勤務は、上司からの承認やサポートを得ているという感覚が低くなることが、モチベーション低下につながります。これを解消するために、部下社員と定期的に1対1で面談の機会をつくりましょう。面談は、可能であれば顔が見えるツールで、難しければ電話でも良いでしょう。その際、まずは部下の現状を聞く、在宅勤務で思うように業務が進行しない状況をよく聞きましょう。途中で意見を述べず、まずはできるだけ相手の主張を聞くことを心掛けてください。話の内容を吟味した上で、どのようなアクションを起こせるかを一緒に検討されると良いでしょう。また安否確認のため、メールなどは出来る限り負担のないものでよいので、1日1回は勤怠の報告など入れて確認できると良いと思います。

このような状況下で出現しやすい自責感・不安に共感し、課題を一緒に考えたり、既にできている事をフィードバックしたりすることで、上司への信頼感が高まり、次のアクションに至るモチベーションが生まれます。 まずはきっかけを作ってあげましょう。アクションに至る道ができれば、そこから先は本人のやり方で自分なりの業務を構築していくことができる可能性があります。

Q2. 業務特性上出社せざるを得ないスタッフがおり、社員のコロナに対する不安に対してどのような対応をすれば良いのでしょうか。

コールセンターという業種上、出社せざるを得ないスタッフも多く、そういう社員のコロナへの不安が大きくなっており、会社として対応に苦労しています。また、表面上出社してきていても、内心非常に不安を抱えているスタッフもいます。在宅勤務でもすれ違いになることも多く、どこまでそういう不安をくみ取れているか、上司として心配なところもあります。

A. トップメッセージの発信や会社としての取り組みを示しましょう。また、定期的な面談を設け、社員の心境を聞くようにしましょう。

負担の多い部門や社員に対して

・会社として行っている感染予防対策
・万が一の際の安全確保の対応手順
・万が一の際の人材優先の方針

を定期的に示しましょう。

そして、この状況の中で出勤している社員を労いましょう。体調面を気遣い、不調を感じたら、体調を最優先することを伝えましょう。

定期的に面談の場を設け、不満や不平といった社員の心境を聞くことも大事なことです。面談時はできるだけ意見を挟まず、表現された感情に対して否定せず、傾聴に徹します。可能であれば、聴取した話を集積し、上長に共有できるとよいでしょう。社員としては、「どういう思いで自分たちが毎日出勤しているか、会社がわかっているのか?」という気持ちがあるでしょうから、まず自分たちの声が会社にちゃんと届いている、という感覚が持てると感情も変わってきます。

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さらに、不安感や不公平感を抑制できるような会社の取り組みがあるのであれば、それも説明できるとよいです 。例えば、時差出勤、交替勤務、特別処遇などです。可能であれば、出勤してくる社員に対して、トップから労いや現状報告、対策の内容、方針表明などについてメッセージを出すことも有効です。「君だけが大変な思いをしている訳ではない、みんな大変なんだ」という精神論的な声掛けは効果的に働かない可能性があります。その感情や気持ちを別の言葉に置き換えて伝えてみましょう。

<声掛けの例>

「今、出勤している社員はほとんどあなたと同じような気持ちで勤務していると思う。不安や不公平感を持つのも当然だと思う。会社としては本当に感謝している。こんな状況だからこそ皆で力を合わせて乗り越えていきたい。会社としてもできる限り努力するので、あなたにも協力いただけるとありがたい」

不安な気持ちは一人で抱えていると大きく膨らむので、誰かに話すことが大切です。部下が文句を言っているように感じるかもしれませんが、吐き出す場があることで気持ちが落ち着きます。またそれを受け止めることが、心身の不調やモチベーション低下を防止することに繋がります。

Q3. メンタル不調による休職経験のある部下に対して、在宅勤務中どのように接することが適切なのでしょうか。

A. 定期的なMTGなどで会社・組織の方針や状況を伝えて、1対1の面談では業務進捗だけでなく、可能であれば健康状態や通院状況の確認もできると良いでしょう。

休職経験がある部下でも、概ね対応は変わりません。 把握しているのであれば、1対1の面談の際に通院状況などを確認できると良いかもしれません。「今医者に行くのが怖いから受診していません」などと述べた場合は、注意が必要です。自己判断で受診や服薬を中断することで、症状を悪化させてしまう懸念があるためです。 この時期に病院へ行くことへの不安は理解できますので、その気持ちは受け止めつつ、健康状態を保つためにも、これまで通りの受診や服薬が出来るよう促して頂くとよいでしょう。

コロナ対策としてオンライン診療を受け付ける医療機関、処方薬を郵送してくれる薬局も増えてきました。このような情報もご提示頂けるとよいかもしれません。 頑張りすぎてしまうことが休職の要因であるようならば、その点は是非注意したいところです。集中し過ぎてしまう傾向があるようでしたら、タイムスケジュールを工夫することも有効です。1時間に1回は席を立って一区切りつけることが、結果的には健康維持や効率化にも繋がったりします。

心配な社員がいる場合、フォローが偏る場合があります。在宅勤務のストレスは等しくあるため、一見元気に見える社員であっても、どこかで様子をうかがえる時間をとれると良いでしょう。

監修者プロフィール

後藤麻友 ごとうまゆ
ピースマインド株式会社 コンサルティング部 統括マネージャー兼スーパーバイザー 公認心理師 臨床心理士 国際EAPコンサルタント
臨床心理学の修士号を取得後、ピースマインド株式会社に入社。EAPコンサルタントとしての臨床業務の傍ら、研究、研修、サービス開発にも従事。現在は、主にコンサルタントのマネジメントや育成支援を行っている。

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