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初心者が舞台、お芝居をつくりながら思うこと
大変ありがたいことに、現在私は自分の団体を持ち、自分の脚本で、自分の演出でお芝居を作っている真っ最中である。
2017年にミュージカル『キャッツ』に出会ったことで、「どうしても自分で舞台がやりたい」と強く思ってしまい、今に至る。
まったくの素人、大学に入るまで少しも演劇のことなんて学べなかったし、学ばなかった。
それでもなんとかメンバーを集め、今、私は念願の「芝居をつくる人」になれている。
やっていると本当に苦しいことばかりだし、毎日のように「やらなければよかった」とも思う。こんな苦行、偏差値がまったく足りていないのに県内有数の進学校を目指した高校受験のときや、高校時代にひたすらに地味な生物系の研究を行いひたすらに論文を仕上げようと頑張ったときの比ではない。
本当に、やらなければよかった。切実に思う。
私はこの団体を、自分が演技の経験を積むために作った。つまり私が役者として出るために作ったのだ。
それなのにいつの間にか演出を任され、演出をやるなら出るなと言われ、気がついたら全責任を負う立場になっていた。
どうしてこうなった?
地獄の中に真っ裸で放り込まれたような気分である。
確かにこれは私が目指した「やりたいこと」ではあるのだけれど、だんだんと「やりたいこと」から離れていっている気がする。けれどやらなければならないし、やると言った以上はやるのが誠意だし、ちょっと楽しくなってきているのも事実だ。辛いなあしんどいなあ、と思っている間が一番自分にとって充実している時期だと、なんとなく理解しているので、 これでよかったのかな、という気もする。
そこでいつも考えるのは、「お客様は何が観たいのか」ということだ。
今回、初公演にして有料公演(低価格ではあるけれど)なので、好き勝手やるわけにはいかない。
お客様がお金を払って観に来てくださっているのだから、生半可なものは観せられない。
私は「自分たちがやりたいこと」をやるのは第一だが、それよりもまず「いただいたお金以上のものを披露すること」を大事にしたいと考えている。
そのあたりの意識の違いがメンバーにあると、演劇団体は絶対に上手くいかないと思う。
実際今、私の団体はその意識の違いによって厳しい状況にあるし、私の考えに寄り添ってくれている役者が、私とは違う考えを持つ役者の態度にいらだち、焦りを感じているのが観てわかる。
考えの違いは決して悪ではない。ただ、それがあからさまに態度に出てしまってはアウト以外の何物でもないし、いくら学生演劇とはいえお客様をないがしろにしすぎている。
コンセプトの違いだ。
私は最初から「お客様第一の、いただいたお金以上のものを作る」という考えを皆に説明し、それに賛同してくれた人と物を作りたいと公言し続けてきた。
それが伝わっていなかったのが悲しいし、ふがいない。私はリーダーとしてメンバーに考えを伝える力が足りていなかったのだ。情けなさ過ぎて涙が出る。
私が観てきた商業演劇はすべて、観客に満足してもらうために、役者もスタッフも全員が努力し、全員が全力だったように思う。
だからこそ、観ていた私が感動したのだし、演劇が好きになったのだ。
ままならぬものだ、と思った。
精進していかなければならないのはわかっている。こうやって考えるのも言い訳なのかもしれない。
それでもあと一ヶ月後には本番なのだから、演出家として私ができるすべてをやりつくさなければならない。
お客様にいいものを。今、私たちができるすべての力を使って。
この柱はまだ変わっていない。
言い訳や愚痴はこのくらいにして、あと一ヶ月、頑張ろうと思う。
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