【長編小説】澄美子【最終話】
別名義で第45回すばる文学賞に応募しました小説「澄美子」を公開します。
二〇一八年 九月
安室奈美恵の引退は紀代にとって衝撃だったが、それ以上に、その情報を得たのが街月末の引退直前になってからであった自分に驚いた。聞けば連日報道されていたというのに、紀代の記憶にはまったく残っていない。毎日ニュースを見ていたし、暇さえあればテレビをつけていたし、人並みにSNSもやっている。それなのにまったく知らなかった。七月に石垣島に行って勝志に会い、戻ったホテルの部屋でたまたまつけた