オトカドールはわたしの救いだった
女児ゲー群雄割拠の昨今、ひっそりと存在する「オトカドール」というKONAMIの本気アーケードゲームをご存知だろうか。
水彩風の3Dモデル、当然かわいらしい登場人物たち、一人が全曲歌っているとは思えない神楽曲、ライバルキャラたちの女児向けらしくない設定。
オトカドールは、どこまでも、本気だった。
わたしがオトカドールに出会ったのは、おそらく高校1年のころだった。
友人の勧めで知り、そのクオリティの高さ、キャラにちらつく闇の深さに一発でK.O.された。
毎日学校帰りにイオンのモーリーファンタジーに通い、ちびっこたちの中に紛れて、一生列のできないオトカドールの筐体の前に座り続けた。
ときどきやってくるちびっこ様にやり方を教えて、と言われては嬉々として教え、ダブったライバルカード(なんとオトカドールはライバルキャラを使って遊ぶことができる)をあげていたのを覚えている。
そのころ家庭環境の悪さが最高潮に達しており、身の丈に合わない進学校で下から数えた方が早い順位を保ち続けていたわたしは(最下位はさすがに取ったことはない)、オトカドールだけが輝いて見え、オトカドールだけが救いだった。
期間限定の衣装が出たと聞けばモーリーファンタジーに行き、両替機に札を食わせ続けた。
けれど、ある日パッタリと、オトカドールの公式HPの更新が止まった。
わたしがオトカドールに出会って、そう日は経っていなかった。
それでもわたしはオトカドールをやり続けたし、モーリーファンタジーに通い続けたし、同級生にも布教し続けた。
オトカドールは本気なのだ。本気に見えたのだ。
何に対してなのかはわからない。ただ、圧倒的に「本気」だった。
筐体が最寄りのモーリーファンタジーにある限り通い続けると誓っていた。
友達と遊ぶときも「遊ぶ前にオトカやっていい?」と友達ごとモーリーファンタジーに行ってからだったし、試験の前日はほぼ毎回オトカをやった。
金はない。
金があった試しのない人生だ。
それでも、貯めてきたお年玉を注ぎ込んで、なんとかしてやっていた。
その日が来るのは早かった。
さすがに金もつき、でかい試験のためにわたしが行かなかった1ヶ月で、モーリーファンタジーからオトカドールは消えてしまった。
それからというもの、ないものは仕方ない、遠出する金もないということで、ただYouTubeで公開されている楽曲を聴き続ける日々を過ごした。
オトカはわたしの救いだった。
わたしのオトカは、もう戻らないのだと泣いた。
今年の4月、新社会人になった。
上京して、未だ、オトカドールには出会えていない。
長時間労働が当たり前の職についている。
この数ヶ月、10時間以下の労働で帰れた日の方が少ない。
今も、終電の中でこれを書いている。
オトカドールの曲を聴きながら。
泣きたくても 負けそうでも 本当の自分の姿見えてくる
見えないよ。向いてない仕事なんてするもんじゃないね。
上を向いて 今すぐこの指とまれ
首が痛すぎて上も向けねえよ。どうしたらいいんだ。
オトカドールはわたしの救いだった。
出会ってからずっと、オトカドールの楽曲に救われてきた。
それなのに今のわたしは、ドールたちにもライバルたちにも見せられない、死んだような顔をしている。
仕事、辞めさせてくれーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!
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