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『ベニス』か『ベネチア』か?(地名の呼び方・イタリア編)

皆さん『ベニスの商人』ってご存知ですよね。
イギリスの文豪、シェークスピアが書いた戯曲で原題は"The Merchant of Venice"です。
「借金を返せないときは自分の肉を1ポンド(約450g)渡す」という契約についての『裁判』で、「肉は渡さねばならない。しかし血を1滴でも流せば契約違反」という判決で万事まるく収まる(?)、というお話です。(省略しすぎ?)

ネットで拾ったシェークスピアとされる肖像画

シェークスピアの戯曲の題名を『ベニスの商人』と書きましたが、『ヴェニスの商人』という表記も目にすることが多いと思います。

そして、物語の舞台は、現在のイタリア・ベネチア(ヴェネチア)です。
中世のベネチアは都市国家として、世界(ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジア)を舞台に、中継貿易で莫大な富を築いていました。

さて、1つの都市について「ベニス」「ヴェニス」「ベネチア」「ヴェネチア」と4種類の表記が出てきました。

「べ」「ブ」と「ヴェ」「ヴ」(ウ点)については、以前も触れました。

https://note.com/hatano_toshiya/n/nf31738a6f931

話がややこしくなるので、今回は「ベ」にとりあえず統一して考えようと思います。

(さらに「ベネツィア」「ヴェネツィア」と「チ」と「ツィ」の違いも考えると選択肢がもっと増えますが、「チ」と「ツィ」の違いも無視して「チ」として考えます。)

イタリアの多くの都市名は、以下のようにイタリア語と英語でかなり違っています。(左がイタリア語、右が英語です。)

ベネチア(Venezia) ベニス(Venice)

ナポリ(Napoli) ネイプルズ(Naples)

ミラノ(Milano) ミラン(Milan)

フィレンツェ(Firenze) フローレンス(Florence)

ジェノバ(Genova) ジェノア(Genoa)

結構違いますよね。
ナポリと言えば、高校のころ、英語の模擬試験で「『ナポリを見て死ね』を英訳せよ」という問題があって、どうしたらいいのかさっぱり分からなかったのを思い出します。
ちなみに、英語だと“See Naples and then die”、イタリア語だと"Vedi Napoli e poi muori"
ナポリが風光明媚であることを讃え、「死ぬ前に一度訪れるべきだ」とするこの文章は、ドイツの文豪ゲーテの言葉とも言われています。

ラテン語では「新しい街」の意味の"Neapolis"(ネアポリス)と呼ばれていたそうです。

ここでようやく本題です。

世界の都市の呼び方、日本では「なるべく現地の呼び方を使おう」という傾向にあります。
大手メディア(新聞・テレビなど)もそのようになっているはずです。

例えば、イタリアの首都は、英語のローム(Rome)ではなく、イタリア語のローマ(Roma)を一般に使っています。
でも、「ベニスの商人」はイギリス人のシェークスピアが英語で書いた戯曲ですから、"Venice"が使われているわけですね。
ベネチアの街そのものと同じくらい、「ベニスの商人」もよく知られているので、『ベネチア』と『ベニス』でどちらにするのか混乱してしまっている、というのが現状だと思います。

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