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君はスプートニク

今日、人と会ってあれこれ話していて気がついたというか、ストンと腑に落ちたことがあったから、noteに書いてみる。



中学3年生のころに国語の教科書で作品の一節を読んで以来、村上春樹のファンだ。
最初の子どもが生まれてからの新作は読んでいないけれど(小説を読むどころではなくて、いつしか読書という趣味自体からも離れてしまった)、人生に影響を与えてくれた作品がいくつもある。

その中の1つが【スプートニクの恋人】だ。

スプートニクとは、1957年にソビエト連邦が打ち上げた世界初の人口衛星ロケットの名前である。
Sputnik はロシア語で、英語に訳すと“Traveling Companion”
日本語では『旅の連れ』。

孤独と喪失をテーマに書かれた、胸が苦しくなるような物語。



人口衛星を打ち上げるためのロケットは、積んだ燃料を使い切るごとに1段目、2段目と、カラになったタンクを順々に切り離して落下させながら、宇宙に昇っていく。
スプートニク号ではないにせよ、テレビやニュースで何度となく目にしたことがある、切り離されて形を変えていく衛星の姿を想像してみてほしい。



私は今、「また人を愛せたらいいな」という願いを抱きつつ、、、
「でも、愛せないように、強いブレーキがかかっているみたいだな?」と感じながら、生きているわけだけれども。

もしかしたら、私の心は、二度の離婚という“切り離し”によって推進力を失ったのかもしれない、という可能性に思いあたった。


最初の結婚から22年。
だいぶ地球を離れて、重力みたいなものからは開放されたけれど。
このまま漂うように、ふわふわと定まらずに生きていくのかもしれない。


もう、人を愛する燃料は使い果たされたのかもしれない。
中身がカラになり役目を終え、とっくに海に落ちたのかもしれない。

だから私は、人を愛せないんだ。
それは寂しくもあるけれど、ストンと腑に落ちた結論でもある。


それならば、私は地球をまわる衛星になればいい。
切り離して海に落ちた、カラのタンクのことなんて忘れてしまって。
そして同じように漂っている人と出逢い、いっときの航海をともにできたなら。。。
それだけで私は幸せなのかもしれない。
いつかは軌道がズレて二度と会えなくなる、孤独な同士だとしても。

そんなことを考えていた帰り道、ふと【スプートニクの恋人】という小説の存在を思い出した。
何度も繰り返し読んだ作品だけれど、また読み返したい。

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