本当にあった怖い話_事務所番外編

これは私が実際に体験した話です。
(前回宣言した通り怖い話風にスタートしましたが、書き忘れた事務所編の続きの番外編です。)

私が深夜残業をしていた時。その日は、激しい雨が降り続いていました。
大きな雨音も聞こえていたので、大雨と呼べるような雨だったと思います。

窓の近くの席にいた私は、窓の外を見ながら雨が降り止むのを待っていました。
深夜ではあったものの、事務所には私と同じように雨止み待ちをしている同僚が残っていました。

私は入社して何ヶ月かで、まだ確定の人事配置ではなく、早く即戦力になりたいと気ばかりが焦っていました。
そんな気持ちを胸に、窓の外を見つつ仕事をしていると

ポタ…ポタ…

と何かがPC作業をしている私の腕に落ちてきました。

とても生ぬるい感覚。
私は何が起きたか分からなくて、思わず「きゃっ」と声を出してしまいました。

その声を聞いた同僚が「どうしたの?」と声をかけてくれました。
私は声を振り絞って「な、何かが上から、、、、」と言うのが精一杯でした。

すると同僚は顔色を変えて、オフィスから出て行きました。

オフィスで一人きりになった私は、言い知れぬ不安と戦っていました。心なしか強くなっていく雨音。するとまた、

ポタ…ポタ…

と今後は背中に生ぬるい何かが落ちてきました。
私は思わず「ヒッ、、、」と言ってしまいました。その瞬間、

バタバタバタバタッッ!!

と、こちらへ走ってくる何者かの足音がしてきました。
私は怖くて、早くこの時が終わりますようにと祈りながら、目を固く瞑って下を向いていました。

でもずっとそうしているわけにもいかず、下を向いたままうっすら目を開けてみると、私の目の前に誰か立っていました。そして、その人物は私に向かってこう言いました。

「…いつもなんだよねぇぇ…」

私は耳をすませて、その声に集中していました。

「雨漏り!!ほら、バケツ持ってきたよ。今日はバケツ足りるかなぁー。」

目の前に立っていたのは同僚でした。

そして私にいくつかバケツを手渡すと、追加のバケツを取りに行きながら
「他にも雨漏りしてるとこないか、探しといてー」
と言いました。

そう、この建物では、日常的に何十箇所にわたって雨漏りが起きていたのです。
私の席は雨漏り多出ポイントだったので、しばらくバケツを手放せませんでした。

聞いた話ですが、その場所では、まだ今も完全に雨漏りは止まっていないとの事。早く収まる事を願うばかりです。


もう一つ、私が体験した話。

ある炎天下の日、私は自分の地元の名古屋でのイベントを行なっていました。
そのイベントの責任者は自分という事もあって、度重なる不眠、大きな重圧に苛まれて当日を迎えていました。

名古屋の夏はとても暑く、気温も高くて湿気も多い、亜熱帯のような気候です。上から燦々と降ってくる陽射しと、アスファルトからジリジリと跳ね返ってくる熱気。
日陰になるような場所もなく、一瞬で滝のような汗が流れてきました。

とはいえ、責任者としてぼーっとしている時間などはなく、スポンサーへの挨拶、リハーサル進行、移動手配とずっとバタバタしていました。

体調が万全とは言えない中に、容赦のない忙しさと暑さ。
私は水分補給は怠らなかったものの、次第に少しクラクラとしてきました。

そんな弱った状態だったからか、私は遂に見てはいけないものを見てしまったのです。

私の目の前には、一緒に来てくれた男性の同僚がいました。
その男性の背中にうっすらと、”目“のようなものが浮かんできたのです。

私は暑さのせいか、と目を瞑りもう一度良く見てみました。

すると、さっきよりも“目”は濃くなっていました。
こっちを見る鋭い”目“は、どんどん凄みを増していました。

炎天下で、暑さにやられて、しかも睡眠不足だし、、と、私はすぐに目を逸らし、今見たものへの恐怖心を誤魔化していました。

頭の片隅にはさっきの”目“が鮮明にこびりついていましたが、こんな事誰に話しても信じてもらえるわけがありません。
少し経ったら、あの”目“もいなくなるだろうと思い、引き続き仕事をしていました。

リハーサルが終わって少し時間余裕が出た時、あの男性スタッフが「お疲れー」と言いながら、私の前に現れました。
私は、嫌が応にも先程の”目“を思い出してしまいました。

けれど、一緒に談笑している出演者や他のスタッフを見て、やっぱりさっきのは何かの見間違いだったんだろう、とも思い直しましたが、やはり背中は気になります。

そして彼が後ろを振り返った瞬間、先程の”目“とは比べものにならないような鮮やかな“光景”が背中に浮かんでいました。
まるで屏風絵ような、菩薩絵のような絢爛豪華な蒔絵のようでもあるその”光景“に私は唖然としていました。“何か”が訴えようとしているのだろうか。

すると、あるスタッフが
「キャーーーーーー!!!」と声をあげました。私以外にも見えている人がいたのです。

そのスタッフは続けて言いました。
「あははははははー、背中の刺青透けてますよーーーーー」と。

そう、彼は白Tシャツを着ていて、この亜熱帯並み暑さに大量の汗をかき、白Tシャツが透けに透けて、背中一面のでっかい刺青が丸見えになっていたのです。

「うっそ、マジで、やっべぇじゃん」と彼も笑っていましたが、反して私は背筋が凍っていました。

このイベントはどちらかというと、ファミリー向けイベントでした。そしてスポンサーもいるので、刺青丸出しで歩かれては、たまったもんじゃありませんでした。

私は常設されていたタオルを引っ張ってきて、彼の絞れるほどベタベタのTシャツと背中の間にタオルごと手を突っ込んで、刺青を隠しました。私はどちらかという潔癖だったんですが、そういった事も忘れてしまう程に慌てていたのです。

そんな子供騙しが長く続くわけもなく、止むを得ず、グッズで持ってきていたTシャツを着させましたが、それでも透けて見えたので、彼は結局Tシャツの下に着るためにコンビニの壮絶にダサい下着を買っていました。

それまで噂レベルで聞いていた大きな刺青をあんなにはっきり見たのは、後にも先にもあの時だけです。

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ここまで本当にあった怖い話風に話してきましたが、ただの雨漏りと刺青の話ですね。

次も物語調に事務所編続きを書いていきます。

ハタノ

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