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持続可能な農業公園を立ち上げた農家のお話 前半

先日、千葉県鴨川市で農業公園の事例に見学に行きました!

行った理由として
私たち(一般社団法人 畑会)が関わっている多摩市農業公園プロジェクトがあり、今後の運営の参考になればと思い行ってきました。

今回、行ってきたのがこちら。
【SOIL TO SOUL FARM PARK】

SOILは土、SOULは魂の意味。
「農業を通して、自然を通じて、子供たちの心を育てる場所づくりをみんなで」とありました。

こちらの場所の運営は
農業法人【農地所有適格法人】 苗目(なえめ)さんが行っており
代表の井上さんから直接、お話を伺うことができました。

画像は、ブルータス| BRUTUSさんのサイトから

またこちらの場所は「耕作放棄地を公園であり農園に」というスローガンで
クラウドファンディングでも、目標達成しています。

井上さんは、2014年に鴨川市へ移住し、農業を始めています。
その地域で、お子さんがいるお母さん達と仲良くなり、地域の現状を知ることに。
それは、学校の放課後に子どもたちが集まる場所がないということ。
いたるところに山や森、畑、たんぼは沢山ある自然豊かな地域ですが
個人の土地なので、移住してきた子どもたちは入ることができない。
本来であれば、地域に公園などがあればゆっくりできます。
しかし、行政も公園があることで指定管理などの
予算が割かれるために、積極的に作ろうという考えが無い。
もちろん
行政は構造的に、前例主義や縦割り組織や予算などの制約があるため
協力したくてもできなかった点もあるかと思います。

そのため
井上さん自身で、農地で公園のようなものができないかと思い作ったのが
この【SOIL TO SOUL FARM PARK】です。
農業を行うにあたり、農地を買って進めていく中で
ついでに耕作放棄地が買えたため、ここを公園にしようと思いついたそうです。
実際にこの畑には、お子さんやその親御さんが学校や仕事帰り集える場所にもなりました。

この農業公園は無料開放され、ポニーや山羊、にわとりがおり
公園内の豊かな土壌や果樹、草花に集う沢山の虫や鳥を間近で見て、
触れて、一緒に過ごすことができます。
結果、鴨川市の地域コミュニティとして注目を浴びるようになりました。
 
当初は、行政のサポートも無い厳しい状態でしたが
民間事業者が主体として成果や前例が出てきさえすれば
いずれ行政側もサポートもPRにもしてくれるように。
最初の壁さえ超えることができれば、市の代表的な事例にもなる。
これから地域を盛り上げたいという人達には、よい事例なのかと思います。

前置きが長くなりましたが
実際の行った時の写真をご覧ください。

【SOIL to SOUL FARMPARK】の全体像
【SOIL to SOUL FARMPARK】の中心にある建物
【SOIL to SOUL FARMPARK】の中心にある建物
横からみると登れるようになっていて土が盛られていました。子供たちも興味しんしん。
建物の中は、お絵描きがびっしり。ここで雨もしのげます。
建物を囲むように、いろんな野菜を作っていました。
「ほうづきトマト」や「マイクロきゅうり」というレアな野菜を食べさせていただきました!
また果樹も植えており、実がなっていたら誰でも食べてもいいとのこと。
これはお子さんだけでなく、大人もワクワクしそうですね。
ポニーが二頭いました。 このポニーは、ある大手企業さんが今回のプロジェクトに共感して贈呈されたみたいです。 この子たちの馬糞も、もちろん肥料として使われます。
畑の中に池も! ここでザリガニ釣りのイベントをやったそうですが、農園一番の人気企画だったそうです(笑)
また大人にとっては何気ない階段も子供たちが楽しめる場所に。 高めの段差の階段や畑の凹凸もあえて残して こどもたちにとっては楽しいアクティビティになります。

以上が【SOIL to SOUL FARMPARK】での写真でした。
それ以外にも、面白い仕組みがありましたが割愛します。

ただ個人的に気になったのは、さきほどのカラフルな建物。

畑のシンボルとして中心に建てられていて
子供たちが遊べるような遊具としての役割もあります。
この建物自体は、とても魅力的で価値的なものだと思います。
 
しかし

農業をやっている側から見ると

「え?これ農地に建てていいの?」


っていう疑問がずっと湧いてました。

そもそもの話ですが
農地に基本、建物は建てられません。
建てられるとしたら
それは農作業で使う資材や機械を入れておく倉庫などに限定されます。
屋根付きの建物を建てたてければ
地目を「宅地」などに変更する必要があります。
(地目を宅地にすることは可能ですが、固定資産税が上がります)

また「農業公園」という表現もしましたが
こちらの【SOIL TO SOUL FARM PARK】は
実際には地目は「公園」ではなく、「農地」のまま。
実際の農業公園であれば、地目が「公園」となり
遊具などの建物も建てることができます。
ですが、お伝えしたとおり地目は「農地」なので
普通に考えたら建てられるものではないです。

その点も井上さんに聞いてみました。
答えとしては
【農地法のギリギリの所をせめて建てました】とのこと。
例えば、さきほどの大きな滑り台。
あきらかに農業用とは言い切れない風貌をしています。

この滑り台のところは軒(のき)として申請を出しています。
軒とは、屋根が外壁から飛び出した部分です。

引用:SUMOさんサイトより

軒にしては、かなり広いですが、農地法的な大丈夫みたいです。

また中に小屋がありましたが、農業用の作業小屋は9㎡の大きさで作ったそうです。
都市計画区域外であれば、農地法10㎡までは基本的に申請なくても建てられるとのこと。
(もちろん、行政と建築可能かの確認をしながら建てられていますが)

ここらへんは農地法のグレーな所をついており
この許可が通るかは、その地域の行政の判断によるものは大きいと思います。
確かに農業をやっていますが、子供たちが遊んでいることを考えると
解釈によってはダメになる行政も多いかと思います。

ただ、公益性の高いものであることは明らかで
鴨川市にとっても公園の代わりを一農家がやってくれるのであれば
反対する理由もないため、解釈をゆるくしたのだと思います。
また農地法の本来の考え方として
農地を民間企業や外資企業から簡単に買わせないようにすることが
本来の農地法の目的でもあるため
こういった解釈での許可は、もっと広まるべきと個人的に思っています。

そして、もうひとつ大きな疑問が湧いてきました。
こういった農地を使った公園化は確かに素敵なことで
地域住民の人達の憩いの場になっているのは確かです。
ただ、この公園を利用料は無料で、たまのイベントがあっても
稼げるような額でもありません。
 
クラウドファンディングによってのお金集まったり
法人の寄付もあることも聞きましたが
それも永続的な仕組みではありません。

もちろん、生産自体はやっておられます。
【SOIL to SOUL FARMPARK】の隣には
ハーブ栽培用のビニールハウスが建てられていて
めずらしい種類のハーブを作って飲食店などに出しているそうです。

公園の隣にあるビニールハウス。こちらでハーブやエディブルフラワーなど作られていました。

しかし、農業公園のような慈善事業するほど余裕があるようにも見えません。

どうやって農業法人を運営しているのだろう。
持続可能な農業経営戦略なんだろうか・・など気になりだしました。

実は、公園の活動は井上さんの事業の一部でしかなく
それ以外の所で、幅広く事業に挑戦されていました。

本来、農業公園のことを聞くことだけでしたが
いろんな刺激的な現場や話を聞くことができました!

次回、そのことについてもご紹介したいと思います!


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