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スーパーファストファッション

こんにちは、コーイチです。
「SheIn(シーイン)」というファストファッションブランドをご存じでしょうか?
いつもは実店舗のことを書いていますが、今回は実店舗を持たず、アメリカや日本のZ世代から、密かに注目を集めているファストファッション・ブランド「SheIn(シーイン)」について見ていき、今後はこのような実店舗を持たずに大成功を収めるブランドが日本でも誕生出来る可能性があるのか考えたいと思います。

1. SheIn(シーイン)とは

                                                                           (出典:SHEIN youtubeより)

「SheIn」は、2008年に中国南京市で誕生した南京希音電子商務有限公司という企業が運営するファストファッションブランドです。
ファストファッションといえば、ZARAやH&M、GAPなどが知られていますが、一般的に最新のトレンドに合わせて次々とアイテムを投入する業態を指します。
 ZARAなどのファストファッションブランドとの大きな違いとして、「SheIn」は実店舗を構えておらず、すべてオンラインのみで販売していることとなります。

創業者の許仰天(Chris Xu、Yangtian Xu)は、アメリカで生まれてワシントン大学を卒業、Nanjing AODAOという企業のオンライン取引に関するマーケティング部門で働いた後、同社を起業しました。
 元々はWEBマーケティング事業をおこなっており、当初から越境ECで世界をターゲットに展開していました。
 最初は、中国製のウェディングドレスを海外向けに販売する事業を始め、2012年に「Sheinside」というブランドを立ち上げ、ECサイトで販売をスタートし、2014年にブランド名を『SHEIN』に改めました。
 元々ウェブマーケティング会社ということもあり、SEOやリスティング広告、SNS広告などを積極的に行うことで、規模を拡大していきました。
 
 同社の強みは企画から販売までのサイクルの速さ、大量に投入される商品点数、信じられないほどの低価格などにあり、「SheIn」は現在、米国や中東、ヨーロッパなどで人気を誇るブランドとなりました。

 米インフルエンサーマーケティング会社ハイプ・オーディターのリポートによると、動画投稿アプリ「TikTok」で2020年に最も話題に上ったブランドが「SheIn」で、4120万人のフォロワーと4000人超のインフルエンサーが動画で話題にしたといいます。
 App Annieの統計データでも、2021年5月に「iOSプラットフォームにおける「SheIn」のアプリのダウンロード数」でアマゾンを抜き1位のECアプリとなり、世界54カ国のiOSプラットフォームやAndroidプラットフォームでも13カ国で最もダウンロードされたECアプリとなっています。
 また、GoogleとKanterが共同発表した「2021年 ブランドZ™ 中国グローバルブランドトップ50(2021 BrandZ™ Top 50 Chinese Global Brand Builders)」によると、「SheIn」はテンセントグループを超え11位にランクインしています。

 2021年4月時点で、彼らのInstagramは1800万人以上のフォロワーを抱えており、米国をはじめとする世界中のファンから支持が集まっています。
 日本でも10代の若者を中心に注目を集めています。

 しかし、「SheIn」は業績PRや派手なリリースをほとんど行わず、日本はまだしも中国国内でも30代以上の世代にはほとんど存在を知られていないブランドということです。
 同社はメディアなどへの露出を控えており、「SheIn」の創業者で最高経営責任者(CEO)の許仰天は、メディアのインタビューに応じたことも、公の場でスピーチしたこともありません。推計企業価値が約3000億元(約5兆円)にものぼる企業としては非常に珍しいことです。

 現在に至るまで同社のメインターゲットは海外の消費者で、国内向けの販売はほぼ行っておらず、中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」やウィーチャットの会社アカウントは、主にサプライヤーの募集に使われているだけということです。
 その反面、「SheIn」はアーティストのケイティ・ペリーやリタ・オラ、モデルのヘイリー・ビーバーなど有力なインフルエンサーと手を組み、海外では高い知名度を誇っています。
 コロナ対応基金の支援を目的に昨年実施したストリーミングイベント「SheIn together」では、こうしたセレブたちの出演が注目を集めました。

「SheIn」は世界中の消費者と政策当局から反中感情が高まっている現状を踏まえ、中国発であることを前面に出さないようにしているようですが、同社を成功に導いているのは紛れもなく“世界最大の工場”としての中国の構造的な強みだといいます。
 こうしたリーンスタートアップ(無駄を省いて効率的に新規事業開発を進める手法)と、得やすいものは失いやすいという精神は、今や彼らのブランドのDNAに組み込まれており、 中国は世界の工場であるため、彼らは何が作られているかを非常に早い段階で知り、すぐに模倣して改善することができるのです。

2.SHEINの商品特徴

                                                                          (出典:SHEIN youtubeより)

①超低価格な商品
 「SheIn」の商品は「超低価格」で販売されています。
Tシャツが1着わずか445円、デニムもわずか1500円以下、ネックレスは80円から購入できます。他の商品もかなりの低価格で販売されており、更にこの価格からクーポンを利用することで、10%~20%の割引が適用されることもあります。
参照 SheIn日本語サイト:https://jp.shein.com/

②商品サイクルの圧倒的スピード
 「SheIn」は、2021年時点の1日の新作数が約25,000点に達したそうです。
比較例として、ファストファッションの先駆けともいえるブランド「ZARA」は毎週2回、新商品が届く商品サイクルとなっており、年間新作総数は約25,000点となっています。「ZARA」は、通常のファッションブランドに比べて新商品の入れ替わりは圧倒的に早いブランドと言われていますが、「SheIn」が「一日」に投入する新商品の数がZARAの「年間」の新商品総数に並ぶことになります。 
「SheIn」の新作数量、生産サイクルのスピードはZARAを圧倒的に上回っており、「ファストファッション」を超える「スーパーファストファッション」という概念を作り上げました

③豊富な商品ラインナップ

 商品のラインナップが圧倒的に豊富なことも特徴と言えます。
例えば、青いトップスがほしい場合、「SheIn」のウェブサイトで「青 トップス」というキーワードで検索すると、膨大な商品が出てきます。「青のトップス」といっても、色のニュアンスやデザインによって微妙に違います。色とデザインの組み合わせを工夫することで、何千点以上も異なる服を作成することができ、結果として「SheIn」は「年間数万点SKU」という目標を達成することができました。
 また、ファッションだけでなく、小物やアクセサリー、コスメなどの商品もラインナップしています。
 更に、「SheIn」はローカライズも行っており、異なる国、地域、人種、好み、体型の消費者が抱えているニーズを満たすために、現地のユーザーに好まれそうなデザインの服を制作していることも商品の豊富さにつながっているようです。

3.圧倒する強さの秘密

                                                                           (出典:SHEIN youtubeより)

非常に激しい競争がおこなわれているファストファッション業界でなぜ「SheIn」は、競合を圧倒する環境を作ることができたのでしょうか?
(*以下、enjoy japan記事より抜粋していますが、かなり専門的なことなので、興味がない場合は飛ばしてください。)

①超強力なサプライチェーン統合
 「SheIn」の「より豊富なラインナップ、より低価格で、より商品サイクルを短く」という理念が実現できるのは、それを支える強いサプライチェーンを構築したからです。
 「SheIn」は通常のやり方を選ばず、商品の企画・製造から流通・販売まで、中国国内だけでサプライチェーンを構築し、この仕組みによって、多少コストが高くなっても開発スピードは圧倒的に上がりました。
 商品のデザインから、プロトタイプ開発、生産に至るまで所要日数はわずか14日間、最速で7日間に短縮することができるようです。
 わずか7日間で製造から販売、ユーザーの手元に届くシステムを構築したということです。
 一方、ZARAの場合は製造からユーザーの手元に届くまでに、3~4週間かかると言われています。
このように垂直統合した生産体制とサプライチェーンが「SheIn」の強みになっています。
また、このサプライチェーンシステムによって、高頻度で短サイクルな商品供給が実現され在庫回転率も向上し、各段階のコストを抑えることに成功しています。

②コストシェアリング
 顧客はどのようなデザインの服を好むのか、AIを使用し独自の手法で分析をしています。
 まず、各通販サイトから商品情報を取得し、服の色やデザイン、模様などを解析し、「Google Trends Finder」を活用して、ユーザーによく検索されるアパレル関連の用語を分析し、今後流行になりそうな色、生地、デザインをAIを使って予測します。
 AIに加えて、「SheIn」には現在約800人のデザイナーとバイヤーで構成されたチームが存在し、リアルタイムなファッショントレンドを把握するため
高級ブランドの新作コレクション発表会、各種ファッション誌、各地のファッションショーなどから情報を集めています。
 その結果として、コストを抑えて流行や消費動向データから消費者に好まれそうな商品のデザインを制作しています。
 「SheIn」の公式ウェブサイトに掲載されたデータによると、平均日販点数が80万点に達し、年間総販売点数は約3億点ということです。
 近年は中国から東南アジア諸国に生産拠点を移転する企業が増加していますが、そういった市場で規模を拡大してきた「SheIn」は工場との交渉でより主導権を握れるポジションまで上り詰めていました。
 「SheIn」が2021年に発表した「サプライヤー募集要項」によると、「納期が7日~11日以内」、「100着~500着から受注可能」といった要件が規定されています。

③SHEINの商品戦略
 「SheIn」は売れ筋商品を見つけるために常にA/Bテスト*を実施しています。まず、異なるスタイル、色、生地を組み合わせた試作品を小ロットで生産しテスト販売を行います。評価が高かった商品を大量に生産し広告を運用しながら人気商品を制作しています。
*ABテスト:WEBマーケティングにおける手法の一つで、WEBサイトや広告のバナー等の画像をAパターンとBパターンの2パターンを用意して
「どちらがより良い成果を出せるのか」ということを検証するもの。

④オンラインテスト販売
 すべてオンラインで販売行う「SheIn」は、オンライン通販のデータからリアルタイムで消費者のニーズを把握できるため、データ収集から分析、結論まで時間的な優位性があると言えます。
 一方、ZARAでは日々世界中にある7,000軒以上の店舗から販売データと顧客のニーズなどの情報がスペインの本社に届くようです。取得した情報によって人気商品の追加生産を行います。各店舗にて情報収集⇒データ集約⇒データ分析⇒本社が結論を出すという4ステップの流れと言われています。

⑤異なるテストマーケティング手順
 「SheIn」は顧客のニーズを正しく把握するため、すべての新しいアイテムを多人種、多民族が集まるアメリカで優先的にテスト販売を行います。 その後、消費者の新商品に対する評価によって、ヨーロッパ、オーストラリア、中東などの市場でプロモーション戦略を策定します。
 通常、伝統的なファストファッションブランドは、ブランド発祥地や本社の所在地でテスト販売を行うのが一般的です。しかし、このやり方はサンプル母集団の多様性が限られているので、すべての消費者のニーズを正確に把握できません。欧米のファッションブランドのサイズとデザインがアジア人の体系に合わないとよく言われるのはこのためと言われています。
 
⑥小ロット生産
 「SheIn」と提携している工場は100着から受注が可能なことが条件となっています。対してZARAの工場は少なくとも500着からの受注となっており一般的には1,500着~3,000着から受注していることが多いようです。
 小ロット生産はコストが高騰するリスクがあり、小ロット生産の注文に応じない工場が多いのが一般的です。しかし、「SheIn」は工場とウィンウィンの関係を構築するために積極的に補助金を支給しており支払いも迅速に行っています。また、売れ筋アイテムがあれば追加生産の注文が多く入るので多くの縫製工場から高い評価を得ているようです。
 「SheIn」社内の事業計画書によると、全商品の約50%の商品が人気アイテムであり、売れ行きの悪い商品は全商品の10%に過ぎないとのことです。

⑦SHEINのプロモーション戦略
・インフルエンサーマーケティングを海外で再現
 インフルエンサーマーケティングは、中国でブランドの知名度や商品の知名度を高めるためよく行われている方法ですが、海外でも同様の方法を行っています。

・KOC(Key Opinion Consumer)の大量起用
  2011年から、すでにインフルエンサーマーケティングの手法を使ってSNSで集客や商品宣伝を行っていますが、KOL(Key Opinion Leader)ではなく、フォロワー数は比較的に少ないものの影響力があり親近感があるKOCを大量に起用しました。
 *KOC(Key Opinion Consumer):より一般消費者に近い存在のインフルエンサーを使うことで、専門性やフォロワー数はKOLに劣るものの、フォロワーとの関係がより親密で、フォロワーに信頼され、フォロワーの行動への影響力が高いと言われています。

 KOCは、YouTube、Instagram、Snapchat、TikTok、Facebookといった主要SNSプラットフォームで自ら商品購入の体験レビューやコーディネートなどのコンテンツを投稿することで消費者の目を引き付けます。
 「SheIn」は、自社のプロモーション活動に協力してもらうため、積極的に各SNSプラットフォームのインフルエンサーと連絡を取り、インフルエンサーの育成にも力を入れています。
 また、「サンプル品を配る」、「インフルエンサーマーケティング」、「広告運用」等の手法で消費者にアプローチし、口コミの力をうまく活用して、人気商品を作っています。
 さらに、すでに提携しているインフルエンサーと良好な関係を保ち、質問に迅速に答えます。

・アフィリエイトマーケティング

 「SheIn」では、アフィリエイトプログラムを行っています。     商品紹介のコンテンツを投稿して宣伝することでコミッションをもらえる仕組みです。アフィリエイターたちが自発的に商品を購入することを促しながら一部お金を稼ぎたいユーザーやインフルエンサーをアフィリエイターによって外部からの安定したアクセスを確保し販売チャネルの拡大につなげています。

・ライブコマース

                                                                        (出典:SHEIN youtubeより)

 中国で一般的となっているライブコマースを「SheIn」は海外でも積極的に駆使しています。2017年からライブコマースのテストを実施、当初はあまり良い結果がでませんでしたが、新型コロナ禍で「引きこもり消費」の需要が生まれてライブコマースが注目されるようになり結果大量のトラフィックをもたらしました。
 2020年、「SheIn」はライブコマースを何度も実施し、多くのインフルエンサーを起用しました。その中で、2021年5月にSHEINのアプリを通じて世界中で放送されるバーチャル・ミュージックフェスティバル「SHEIN Together Fest」を開催し、「Lil Nas X」と「Kate Perry」など有名な歌手を起用しました。そのライブは世界中で180万人を超える視聴者を獲得し、多くの人はライブを視聴するためSHEINのアプリをダウンロードし、1日にして大量のユーザーを獲得することに成功しました。
 インスタグラムやYoutube、または公式ウェブサイトで様々なテーマのライブコマースを実施することによって、消費者との距離感を縮めユーザーの注意を惹きつけてSNSから自社ウェブサイトにトラフィックを誘導することに成功しています。

・ローカライゼーション戦略
 海外進出する際、様々な課題に直面しますが、「SheIn」のブランドのローカライズ(現地化)はスムーズに成功させています。

・自社ウェブサイト構築
 企業が海外に進出する際、母国市場での経営戦略や商慣行を当てはめてしまうことは海外事業展開を阻む一番の壁となります。
 例えば、ZARAやH&Mは中国に参入した当初、自社が精通しているビジネスモデルを採用し自社ウェブサイトの開設を優先的に行い中国最大ECサイト天猫への出店の招待を拒否しました。しかし、ご存知の通り中国のユーザーはECプラットフォームで商品を購入することが多く思った通りの成果を得ることができませんでした。

・SEO/SEM(検索エンジン最適化/サーチエンジンマーケティング)
 Similarwebのデータによると、広告経由で「SheIn」のウェブサイトに流入したユーザーは全体の48.61%を占めており、Googleでリスティング広告やバナー広告などを大量に出稿しているようです。

・ソーシャルメディア
 SNSは「SheIn」がブランド知名度を上げるために下記のように積極的に活用しています。
①複数のアカウントを開設、フォロワー数が多いメインアカウントとフォロワー数が少ないサブアカウントはお互いに紹介しあい、トラフィックを誘導しています。
② アメリカ、日本、カナダ、スペイン向けに配信するサブアカウントが開設されており、投稿するファッションスタイルも現地のユーザーが持つニーズよって変えています。
③ジャンル別にアカウントを設立し、よりこのジャンルに関心を持つ消費者に効果的に発信します。
④より良質なUGCを増やすため、SNSのハッシュタグ機能をうまく活用しています。                 

4.最後に

 「SheIn」の広報担当者は、今のところIPO計画はないとブルームバーグに語っています。非上場企業のシーインに財務諸表を開示する義務はなく、様々な詳細はわからないままとなっています。

 「SheIn」は成功して未踏の領域に入ったかもしれませんが、パンデミックが収束して消費者が再び実店舗で買い物をするようになっても成長を続けられるかは不明です。
 また、米国の繊維業界からは800ドルの輸入免税水準を引き下げるようバイデン政権に働き掛ける動きもあり、これが実現すれば、「SheIn」は価格設定上の優位性を一部失うことになります。
 さらに「SheIn」がいかに曖昧にしようとも、中国のブランドであることはアキレス腱となり得るかと思われます。(例:生地の生産地など)

 しかし、たった8年程度でこのように世間を騒がすようなブランドになったのは、驚くばかりです。
 また、服飾デザインの世界にもAIが普通に使われていて、成果を出しているのも驚きです。(まだ100%ではないですが、その内、人の手がいらなくなるかもしれませんね)

 日本で同様のことをしようとしても、かなり難しのではないでしょうか。但し、商品制作の手法やプロモーション戦略においては、参考になるべきこともあるかと思います。「UNICLO」「無印良品」「しまむら」などに続く、世界的ブランドが出来ることを願っています。
これからも「SheIn」については、注目していきたいと思います。

今回も最後まで見ていただき、ありがとうございました。        よろしければスキ、フォロー、サポートのほどよろしくお願いいたします。

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