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試行の授業デザイン③|中3社会科公民編

勤務校でのとある事情により、2学期から中3社会科公民の授業を受け持つことになりました。

これまでに考え、試してきた授業デザインがこちら。

授業とはまさに生き物で、あらかじめデザインされた授業とはいえ、状況に微妙に変化させていかなければなりません。

中学公民の一単元目を終えて、ここで、一度整理し、修正していきたいと思います。

試行の授業デザイン③を考えてみることにします。

お付き合いいただけましたら、幸いです。

1.読むこと|主体的に読む

主体的に読んで学び取る

授業の中に教科書を読む時間を設定しています。

1時間の授業で扱う内容は、教科書見開き2ページ分。
3〜4分で読むことができる想定です。

この時間は、まったくの個人学習の時間。静かな時間が流れます。
マーカーで、キーワードを拾いながら読む生徒もいます。

ここで、私が期待しているのは、
・教科書を読めば、ある程度のことは分かっちゃうということをわかってもらえる。
・わからない言葉や気になること、もっと調べてみたいはてな?は、自分で調べてみる人になってほしい。

ということ。

私が受けてきた、あるいは見聞きしてきた授業の多くは、この教科書との対話の時間が確保されていないことが多かったように思います。
授業でなくても、お家でもできる学習です。
だからこそ授業では、教科書をじっくりと読み切る習慣を身につけてくればと思います。

また、せっかく集団で学習しているのですから、読み終わった後に、感想や疑問を伝え合える場の設定も行うようにします。

2.聴くこと

主体的に聴いて学び取る

とはいえ、教科書から大切なことを読み取るための読解力については、生徒一人一人に差があるのは当然です。

そこで、今度は、教師である私からのインストラクションの時間を設定します。つまり、いわゆる説明・先生のお話しというやつです。

これまでに見聞きしてきた授業は、これが授業時間の大半を占めていました。中学、高校ともなると、こういう授業では、居眠りを始める生徒や早弁をする生徒もいました(^^; それだけつまらなくて、身にならない学習ということです。

確かに、話術がたくみで、上手にわかりやすく説明してくれる先生の授業は、楽しいです。説明力は教師の大事な教授力の一つですね。

私は、このインストラクションをできるだけ短くしたいと考えています。
授業は50分という限られた時間。説明の時間を短くすることで、生徒たちに対話の時間やアウトプットの時間を確保してあげられるからです。

また、説明を端的に、短くまとめることで、集中力を維持した状態で聴くこともできるでしょう。
長々と説明していたら、最初に聞いたことなんて、もうすっかり忘れてしまっているというのでは、笑い話にもなりませんから。

集中して話を聴く・聴かせるために

・先に教科書を読んでおくことで、多少なりとも事前に情報が頭にある状態にしておく。
・あらかじめスライドにしておいて、聴くだけじゃなく、見てわかる情報も用意しておく。

・スライドを印刷して、事前に配布しておくことで、ノートに写しながら聴くという器用なことをしなくても済むようにしておく。

といったことの環境整備に配慮します。

生徒の脳のワーキングメモリーをできるだけ聴き取ることに集中的に使えるようにしておくということです。

ここでもやはり、聴き取ったことのアウトプットの時間も設定します。グループで感想を話したり、スライドが印刷されたシートに、自分の言葉でメモったりといったことになります。

3.話すこと|ファシリテーションの力

主体的に話して学び取る

ここまで述べてきたように、脳にインプットしたことは、アウトプットすることで、その記憶が強化され、それを使って深い思考ができるようになります。

アウトプットの要として「話す」「説明する」が挙げられます。

ところが、「じゃぁ、今までのところの感想を話し合ってみて」と言っても、そう簡単にはいきません。

その学級、グループが心理的に安全・安心な場になっているかということが前提として必要ですが、逆に、対話の成功経験を積んでいくことで、心理的に安全・安心な場となっていくとも言えます。

なぜ、簡単にいかないか、一言で言えば、「対話力・コミュニケーション力が育っていない」ということになるのでしょう。
では、それらを育てるためには、いったいどうすればいいのでしょう?

最近私の中に再ブームが来ているのが「ファシリテーション」です。

ホワイトボードミーティングの開発者であるちょんせいこさんの本です。

この本は、中学生、高校生のみなさんに話し合いの進行役であるファシリーテーターの技術(ファシリテーション)について伝えています。この技術をみんながもつと自分や他人の人権を尊重しながら、意見を出し合い、学びを深め、課題解決へと向かいやすくなります。意見を言うのが得意な人も苦手な人も、互いの意見を聞き合いながら、効率的、効果的に話し合いに進めることができます。正直に意見を出し合うと、時には、対立がおこるかもしれません。でも、ファシリテーションを使うと、対話は、起こっている問題をより深く理解し、解決へと進める「すてきな学びの種」になります。

「13歳からのファシリテーション」ちょんせいこ著 メイツ出版 はじめにより一部引用

「これだぁ!」と思いました。
一言に対話力を育てる、コミュニケーション力を向上させるといっても、何をどうすればいいかわかりませんし、実践の糸口があやふやで取り掛かりにくくなってしまいます。

教師がファシリテーターの役割を担うのはもちろん、グループワークでは、その役を子どもたちに渡していくことで、深い対話のできる主体的な学習者になっていくのはないでしょうか?

この本は、タイトルの通り、中・高校生が自分で読み進みながら、ファシリテーションのためのスキルを学べるような構成なっています。
本当は、たーんと買って、生徒一人ずつにプレゼント!をしてあげたいところですが、そういうわけにもいきませんので、そのエッセンスを少しずつ、子どもたちに伝えたいと思います。

授業で仕組む対話の中で、まず使ってもらいたいスキルが、質問の技です。

この本の中には、「質問の技カード」というものがあって、ファシリテーター役になった人が次のような質問の技を使いやすいように見える化したツールです。

○9つのオープン・クエスチョン
①〜というと?
②どんな感じ?
③もう少し詳しく教えてください。
④例えば?
⑤具体的にどんな感じ?
⑥どんなイメージ?
⑦エピソードを教えてください。
⑧なんでもいいですよ
⑨ほかには?
●8つの相づち
①うんうん
②なるほど、なるほど
③わかる、わかる
④そうなんだぁ
⑤へぇ〜
⑥だよねぇ
⑦それで、それで?
⑧そっかぁ

「13歳からのファシリテーション」ちょんせいこ著 メイツ出版 P97
こんな感じのカードにして配ってみます

これらの技をまず、使いこなせるようになってみる。
そうすることで、授業の中で、ひんぱんに機会のある感想や疑問についての対話が深まっていくのではないかと考えています。

まとめ|試行の授業デザイン③

今回の記事は、試行の授業デザイン①②を試してきた私が、授業での手応えをもとにあらためて考えていることを書いてみました。

そこで、試行の授業デザイン③として次のように整理し、また実践していこうと思います。

まず、この時間のファシリテーターをグループで一人決めておきます。毎時間、じゅんぐり交代してもらいます。
ファシリテーターには、質問の技カードを持っていて、グループでの対話の時に使ってもらうようにします。

授業の流れは、次の通り。

0.準備(休み時間)
①スライドのプリント、質問の技カードを配っておく
②パソコン等準備を済ませておく

1.ガイダンスタイム(5分)
①単元の中での現在地を確認する
②授業の見通しを持たせる(課題の設定/確認)
③態度目標の確認
④ファーストインプレッション/最初の考え
⑤考えたことをグループで対話

2.インプットタイム|知識の伝授(15分)
①教科書を読む(個人学習)
②私からスライドを使ってインストラクション
③スライド一枚ごとに感想・疑問の対話

3.アウトプットタイム|知識の活用(20分)
A学んだことを生かして課題についてまとめる(スライドなど)
B課題についてグループで対話しながら追究する
Aだと対話がうまれにくいのですが、Bだとファシリテーションによって、対話が深まるはずです。

4.リフレクションタイム|学びの振り返りを(10分)
①学習内容の理解度確認テスト(Googleフォーム)
②内容目標と態度目標についての振り返り(Googleスプレッドシート)

とりあえず、このデザインでしばらく試してみます。
アウトプットタイムについては、ちょっとまだ悩んでいるところです。

この悩みが晴れてきたり、また新たな悩みが生まれたら、試行の授業デザイン④へと進化させていきたいです。
その時は、またお付き合いいただけると嬉しいです。

一つ前に考えたていた試行の授業デザイン②はこちらから。



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