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サッカーの面白さを教えてくれるスター選手

リヴァプールFCが、プレミアリーグ優勝を決めた。強豪がひしめく世界最高峰リーグで、(まだシーズン途中ではあるが)ここまでほぼ無敗。圧倒的な強さだった。

リヴァプールの「すごい選手」たち

そんなリヴァプールには、当然ながら多くの「すごい選手」が在籍する。

スピードと得点力を併せ持つサラー、身体能力モンスターのマネ、高精度キックの持ち主アレクサンダー=アーノルド、世界最高の守備職人の1人ファン・ダイク、世界最高のキーパーの1人アリソン…
日本代表の南野拓実も、主力ではないが在籍している。最近は時折試合に出場し、まずまずの評価を得ている。


特にイチオシの「すごい選手」

だが、僕が数年前から推している選手は、上記の誰でもない。

ロベルト・フィルミーノだ。
ブラジル代表のフォワード(アタッカー)で、28歳、181cm。愛称はボビー(ロベルトの短縮系)。

この、ドンキホーテで日本酒を大量買いしていそうな男の何が凄いのか。

彼がリヴァプールに加入したのは5年前。
当時、世界中のリヴァプールファンが彼の能力に否定的だった。
「こんな下手くそに何を期待するんだ」
「ブラジル人とは思えない。とにかく地味」
「取り柄がわからない」

一方、僕は彼に肯定的だった。
「彼は頭がいい。きっとこの移籍は成功する」

掲示板にもツイッターにも、そう書き込んだ。

そして、それは現実となった。彼はリヴァプールの絶対的な存在であり、今やその存在価値を否定する者は1人もいない。

以下では、彼のポジションやプレースタイルについて語る。

彼のポジション

彼のポジションは、チームの最前線の中央だ。日本代表で岡崎慎司や大迫勇也が務めてきた、9番、すなわちセンターフォワードの位置。
しかし、フィルミーノはセンターフォワードではなく、偽9番とされている。

偽9番とは何か

偽9番を語る前に、本来の9番について手短に語る。
9番(センターフォワード)とは、最前線の真ん中(すなわち相手ゴールに最も近い位置)に立ち、ゴールを決めたり、味方からのボールをキープして起点になったりするポジションを指す。

一方で偽9番は、形式上は9番と同じく最前線の真ん中にいることになっているが、試合中はあちこちに動き回り、もはや9番とは別物になる。だから「偽」なのだ。
位置的には、最前線と中盤の間のような位置にいることが多いと思う。

では、あちこちに動き回って何をするのか。
役割は多い。後方にいる味方からボールを受けて起点になったり、中盤から前線の味方にパスを出したり、中盤から前線までドリブルで進んだり、サイドで孤立気味の味方のサポートに走っていってパスのやりとりをしたり、最前線に走って相手を引きつける囮となったり… とにかく、あらゆる方法で攻撃を形作り、活性化させる。
また、攻撃の選手である以上、9番ほどではないにせよ得点力も求められる。あちこちに動き回っていても、チャンスシーンではゴール前にいることが多い。
さらに、前述した通り偽9番は最前線と中盤の中間あたりにいることが多いため、守備もそれなりに求められる。

偽9番に求められる能力

ここまで読めばわかる通り、偽9番に求められる役割は非常に多い。これを的確にこなすには、少なくとも以下の3つの能力が求められると思う。

1、頭の良さ
いわゆるサッカーIQ。自チームと相手チーム両方の戦術を深く理解し、戦況を素早く把握したうえで、自分がどこで何をすべきかを考える力、とでも言おうか。

2、技術
偽9番は、潤滑油としてチームの攻撃を活性化するべく、あらゆる役割をこなす。最前線でボールをキープしたり、ゴール前で味方にラストパスを出したり、自らシュートを決めたり、中盤まで下がって長めのパスを出したり… あらゆる技術が総合的に高くなければ、なかなか務まらない。

3、運動量と献身性
偽9番は、良くも悪くも「なんでも屋」である。最前線にいるのに、チームのために四方八方に走り回り、自らの得点よりも味方の得点のサポートに回る。サボって歩いていては役割を果たせない。当然ながら運動量は不可欠だ。
また、偽9番は9番に比べゴール前にいる機会が減る以上、得点数も稼ぎづらい。時には得点の少なさを批判される。それでも、自らを犠牲にしてチームのために走り続ける。そんな献身性が必要だ。

彼は偽9番の達人である

長々と偽9番について語ってしまったが、同時にフィルミーノについて語ったとも言える。
ロベルト・フィルミーノという男は、ここに挙げた能力の全てを最高水準で備え、理想的なプレーをするのだ。
まさに「偽9番の達人」。難易度の高いこのポジションの、最高のお手本と言える。
ちなみに彼には、上述した役割だけでなく、意外性あるトリッキーなプレーで味方のゴールをお膳立てする、ファンタジスタとしての側面もある。

かつてはテクニックがイマイチだったが、リヴァプール加入後メキメキと成長し、文句の付け所のない攻撃のオールラウンダーに。これぞミスター万能型。彼の存在が大きすぎるゆえ、リヴァプールは彼の不在時のクオリティ低下に悩まされている。

彼の代役を期待される日本人選手

日本代表の南野拓実は、フィルミーノの代役となることでリヴァプールの難点を解決することを期待され、今年リヴァプールに加入した。

リヴァプールの戦術の難解さゆえ、現時点での南野は最低限のプレーに終始している。しかし、チームメイトやクロップ(監督)から確かな評価と信頼を受けているのは、彼らのコメントや試合中の様子を見れば一目瞭然だ。前所属クラブでチームメイトだったマネとケイタが全力でサポートしてくれているそうだし、後は一つ一つの能力を高め、戦術に適応するだけだと思う。現地メディアからは、将来的にはフィルミーノの後継者になりうると評価されている。
まだ25歳になったばかり。今後の彼に大いに期待したい。

おわりに

フィルミーノはすごい選手だ。メッシやクリスティアーノ・ロナウドとは少しタイプの違う化け物と言える。世界中を探しても、彼の代役が満足に務まる選手は片手で数えるほどしかいないと思う。
しかし、将来的にそれができるようになると期待されている日本人選手がいる。

僕は、フィルミーノを推している1人のサッカーファンとしてそれを素晴らしいことだと思うし、年齢の近い1人の日本人として、とても誇らしい。

サッカーは奥が深い。
世界最高峰でプレーする、得点よりも重要な役割を担うブラジル人フォワードが、そのことを改めて教えてくれる。そして、彼の代役として期待されている1人の日本人選手がいる。

彼らのことを多くの人に知ってほしいと思い、この文章を書いた。

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