社会の植物
...あっ。いつの間に寝てたのか。
時間は…3時間も過ぎているのか。
はぁ、早く作業しなくちゃ。休日なのに…。
すぐ気絶しないためにも、これ飲まなくちゃ。
プシュッ、カッコン。グビグビ、グビグビ。
…カンカラコン。
集中したいからもう一本。
プシュッ、カッコン。グビグビ、グビグビ。
…カンカラコン。
さて、やらなくちゃ。
カタカタカタカタカタカタ...
あー、また眠くなってきた。
ここで寝るわけにもいかないから、飲まなくちゃ。
...これもカラ。それもカラ。
やばい、買わなくちゃ。
ちょうどお腹もすいてるみたいだし、コンビニで何か買おう。
* * *
片道を大量のエナドリを持ちながら帰るのがめっちゃ辛い。
やっぱ、ネットショップ使うべきかな…。
と、毎回言っておいて、すぐ作業で忘れるんだけど。
なんで、仕事をするためにエナドリを買わなくちゃいけないんだ。
必要経費として誰か払ってくれよ。
...あぁ着いちゃった。とっととやんなくちゃ。
作業が捗らないのに、もう20分。残酷すぎる。
耳が寂しくなってきた。今日は趣向を変えて新しいやつ聴くか。
…なんだこの動画。「【作業用】脳死BGM ver.2.5」?
1時間前に投稿されていて、チャンネルの中身はすべて「脳死BGM」。
再生回数は、最新動画になるにつれ多くなってる。
今どき、こうゆうのが流行ってるのか。2.5が多いし試しに聴くか。
再生した瞬間、いろいろな音楽が混ざった、混ざり合わないBGMが耳を襲う。しかし、すぐに止めなかった。BGMよりも、映像にすべてに持っていかれた。気持ち悪いのに逸らせない。なぜか離れたくなくなるほどの何かが混乱と錯覚を引き起こす。その間も、BGMは終わらない。気づいたころには、脳が「脳死BGM」の全てを受け入れていた。
ここまで、1分のこと。動画は終わっていないが、なぜか作業を行う気になれた。映像を見ていなくても捗ってしまっている。効率など関係ない。目についた作業をこなしていく。
...気がつくころには作業が終わっており、BGMも開始時間から考えて、5時間前に再生が終わっていた。
エナドリを飲まずに、しかも、これまで終わらなかった分まで返上しちゃったよ。…なんなんだよ、この動画。これさえあれば、エナドリ買わずに済むじゃん。もっと早くに知りたかった。
* * *
やったー!お荷物を脱して、褒められちゃった!
昨日から、全然眠気が襲ってこなかったけど、さすがに堪えてきたか。
でも、なんだかよく寝れそうな気がする。早く帰って、ダイブしよう。
* * *
それから、エナドリを仕方なく1本消費しながら、「脳死BGM」を聴き漁る。与えられた作業は、周りとの数倍まで時間が短縮。追加の作業も喜んで引き受け、この部屋の仕事を全て終えてしまう事態を引き起こした。
異常な速さに、大勢が引いたり、なにか悲しいことが起きたのか等、噂がたつほどになっていた。上司は、同僚に訳を聴くように促した。
「お、おい。お前、どうかしちゃったのか?」
「どうかしたって…何が?」
同僚は、1度も見たことがない大げさな笑顔を見て恐怖を覚えた。
急に離れてしまった同僚を不思議に思いながら、鞄をもって立ち上がる。
「お先です。お疲れさまでした!」
* * *
さて、久しぶりに早く帰ってこれたし、「脳死BGM」を聴かなくちゃ。
…ん?仕事は終わった。あとは、のんびりするだけでいいのにナゼ?
...まぁ、いっか。他にすることもないしな。
何も考えずに今を過ごせればいい。
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