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vol.3 くもをさがす/西加奈子

西加奈子の作品を最初に読もうと思ったきっかけは、好きな人に連続で推されたからだった。好きな人の好きな人は、たいてい好きな人であることが多いから、多分間違いないはず。最初に読んだのは、きいろいゾウだったと思う。その後続けて、さくらも読んだ。やっぱり面白かった、説実証だ。


好きな人の好きな人は、たいてい好きな人・・説。


忙しさにかまけて、しばらく読書から離れていたが、
先日、本屋で平積みされている西さんの本を見つけ、そういえば西加奈子ってあの人とあの子が好きだったよな、とふと手に取ってみて驚いた。
私が、東京でくすぶっている間に、
西さんは母になり、カナダへ行き、そしてがんサバイバーになっていた。・・・いや、かっこよすぎるって。




―—乳がん。
乳がんで死亡する女性の割合は年々増加の傾向らしく、年間約1万3,000人も亡くなっており、これは乳がんを発症した人の30%程度にあたるという。
厚生労働省の調査によると、2022年度は女性のがん死亡数の第4位だが、
罹患率で言うと、女性トップのがんだそうだ。

自分の周りに、乳がんの罹患者がいなかったので、
恥ずかしながら、あまりピンときていなかったのだが、
改めて数字を見ると、その恐ろしさがよくわかる。



もし、私ががん宣告を受けたら、まず何を思うのだろう。
家族のこと、仕事のこと、色々と制限されるだろう日々に、
絶望して泣くのだろうか。

「まさか私が。」と。


エッセイでは、”リアル”が綴られていた。

それでも、文末で配慮の上で「書けない」こともあったし、意図して「書かない」こともあった。書くことを身体がどうしても拒むほどの醜い瞬間があった”、と書かれていたのを読むと、そんな状況の中でも、文章にして伝えてくれたことに対する感謝の気持ちと、この病気に対する恐怖、もし自分が罹患したら・・・という不安感と。色んな感情が混じって複雑な気持ちになった。心がグジャッとなった。

冒頭からネガティブなことばかりを書いているが、
このエッセイは、決してネガティブではない。
カナダの看護婦さんとのやりとり。日常の何気ないひとこま。
油断していると、「ここで?」というような、すごいシリアスなシーンでも突然笑かしてくるのだ。

病気になったから、絶望?闘病中はずっと暗い闇の中なのか?
「いやいや、そんなことはないで!」と、
苦しい時にも、ちゃんと”笑い”があり”光”があるのだ、と背中をどつかれた気がした。・・・さすが西さんである。

この”リアル”に、どれほどの人が勇気づけられただろう。
そして、これから。どれほどの人を勇気づけるのだろう、と思う。



文章を書くことは、そしてそれを発表することは、大海に小石を投げるようなことだと、尊敬する作家が言っていた。ささいな音だ、小さな波紋だ、でも、自分の持っているすべてを投げるのだと。

くもをさがす 西加奈子

私の意志のもと、あなたに読まれるのを待っている。そこにいるあなたに、今、間違いなく息をしている、生きているあなたに。それは、それだけで、目を見張るようなことだと、私は思う。

くもをさがす 西加奈子


こうやって作品を読んで、
感動したり、笑ったり。
違う価値観や自分の知らない世界に触れたとき、
何かを感じて、心が揺れ動く瞬間を大事にしたい。

そして、この揺れ動いた感情を大事にすることこそが、
作者への最大限の敬意になるんじゃないかって、
割と真面目に、思っていたりする。


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