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【#創作大賞2024】骨皮筋衛門「第八章:蚊なしき野望①(2073字)

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第八章「蚊なしき悲しき野望①」


俺の名は太山ふとやまデイブ。骨皮筋衛門ほねかわすじえもんの最大の理解者であり無二の親友だ。帳面町のーとちょうには骨皮家ほねかわけ太山家ふとやまけの二大財閥があるのだが、日本国内でそのことはあまり知られていない。どちらの家風も「慎ましきに徹せよ」だからだ。

しかし、俺は生まれながらの美貌の持ち主、どうしても世間から注目を集めてしまう。町を歩けば、

「デイブ様ぁ!」

の黄色い声が必ず生まれてしまうのだ。ただ、その後に

「あのう……筋衛門すじえもん様は?」

との問いかけが多々あることは……気にしないでいる。長い手足と10頭身の俺と正反対の容姿なのに筋衛門すじえもん人気はものすごく高い。癒し系のシルエットが人気を集めやすいのかもしれないが、中身もなかなかのおとこであることも慕われる要因なのであろう。俺は心の広い男なので、それを認めているし尊敬もしている。

だが、筋衛門すじえもんの素晴らしさは、俺という優れた存在がいて切磋琢磨し合うからこそ際立っているのだ。筋衛門すじえもんも、

「デイブのおかげだ」

とほほ笑みながら言ってくれる。あの微笑みのためなら俺は……。

話がそれてしまった。今日は、骨皮筋衛門ほねかわすじえもんが解決した中でも最も難解と言われる事件の報告がメインだ。この事件は解決までに時間がかかってしまい、俺も筋衛門すじえもんもかなり悩んでしまった。たまにこういう事件が起こるため、

帳面町のーとちょうの犯罪発生率は「約」0%

なのだ。いつか完全な「0」にしようと常に筋衛門と誓い合っている。父親の代では成し得なかった偉業を俺達2人なら……え?前振りが長い?オホン。では骨皮筋衛門ほねかわすじえもん最大の難事件「蚊ーニバルカーニバル事件」について語っていこう。

近年、夏の高気温は異常で猛暑日が続いているが、そのおかげで蚊の活動も少なく刺される人も少ないと言われている。夏よりも夏が始まる少し前か秋に入ってから、酷いと冬が近いのに刺された経験のある方は多いのではないだろうか。帳面町のーとちょうでもそういう声が聞こえる。しかし……現在、昆虫ではない蚊が帳面町のーとちょうに不安をもたらしていた。

「寒天を「蚊んてん」にしてくださぁぁぁい!」
「手持ちのカードを「蚊ード」にしてくださぁぁぁい!」
「文化祭を「文蚊祭」にしてくださぁぁぁい!」

全身黒服で光るもの手にした怪しい人々が騒ぎを起こしている、その報告が帳面町のーとちょう警察にもあがってきた。

「「蚊」だと……?」

と眉根をひそめるのは我らがヒーロー骨皮筋衛門。

「まさか、蚊-ニバルカーニバルの奴ら?」

と受けたのは俺こと、太山ふとやまデイブ。筋衛門すじえもんと俺が一緒だと署内の室温が一気にあがる。

「きゃーーー!」
「デイブ様と筋衛門すじえもん様のツーショット!」

しばらく撮影会となり話にならないのでしばらくは俺の仔猫ちゃん達のためにポーズを取った。

「もう!デイブさん!話が進まないじゃないですか!」

プンプンと怒る筋衛門すじえもんの部下に

「すまんすまん」

と謝る。彼は生真面目すぎるきらいがある。筋衛門すじえもんを真似るために食べ放題の店で無理をしていた時、声をかけてから仲良くなった。

「体型ではなく中身を真似ろ」

と俺が忠告してから軽口をたたく仲になった男だ。今は見た目は太山ふとやま、中身は筋衛門すじえもんを目指していると言っている。中身も俺でもいいと思うのだが……まあいいか。

「気づくと「蚊藤加藤米店」「蚊ナリアカナリア書房」となっていたとの報告があります」
「デイブ……これは」
「うん。蚊―ニバルカーニバルだな」
「お2人はご存じなのですか?」

部下が驚く。

「高校時代に遭遇したことがある」

と俺が暗い顔をする。実は俺が生徒会長で筋衛門すじえもんが副会長だった時、下校途中に蚊-ニバルカーニバルに襲われたのだ。もう少しで俺は文化祭を文「蚊」祭にするトラブルに巻き込まれるところだったのだが、筋衛門すじえもんの必殺技で事なきを得た。しかし、当時は骨皮家ほねかわけの当主は筋衛門すじえもんの父である22代骨皮筋衛門ほねかわすじえもんだったため、当主しか使ってはいけない秘技を使ったと筋衛門すじえもんは叱責されてしまった。俺の父親が「仕方のないこと」ととりなしたため叱責だけで終わったが、それがなければ骨皮家ほねかわけを追放されていたかもしれない。「ヒラリ・クルリ・プルン・ボスン」は当主だけに許された技。その禁を破ってまでも助けてくれた筋衛門すじえもんを俺は一生サポートしようとその時決めた。

「あの時はお父上に助けられた」
「いや、俺こそお前に」

見つめ合う俺達に仲間外れ感を禁じえず部下がイラついた。

「もう!続きを聞いてください!」

部下の報告によると蚊―ニバルカーニバルの活動は今年に入ってから目立つようになったという。最初は「蚊」と叫ぶトンデモな集団と相手にされなかったが、勝手に看板や名刺を「蚊」に置き換えられたり、狂気の目で「蚊にしてくださ~い」と迫られる町民が増えてきた。増えるだけではなく突然隣の人間が

「蚊~~~!」

と叫び暴れ出す事例も出ている。

「潜る!」

そういうなり筋衛門すじえもんは姿を消した。

「きゃーーー!」

女性署員が叫ぶので俺もつい前髪をかき上げる。

「きゃーーー!」
「デイブさん……」

脱力する部下の肩をポンポンと叩き、

筋衛門すじえもんが潜ったんだ。大丈夫!」

と笑う俺。俺と筋衛門すじえもんは表裏一体。帳面町のーとちょう警察のゴールデンコンビだ。俺達が組めばどんな犯罪も……そう思っていたのに!この後、衝撃の事実が待っていようとは、俺は夢にも思わなかった。

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