往復小説

short‐short:普通の形

 手を伸ばしている若い男性が視線に入った。
 スーパーのペットボトル・コーナー。
 視線はその二段目。
 見ると、セール中とある。
 彼は悔しそうに顔を歪めた。
 車椅子だ。
 腰を浮かし、支える手が震えるほど再び伸ばす。
 届くことは無さそうだ。
 彼はぐったりと車椅子に身体を預けた。
「これですか?」
 声をかけた。
 セール品のお茶、五百CC。
 彼は驚いたように目をパチクリさせる。
「あれ

もっとみる
ヽ(´エ`)ノ 気に入って貰えて嬉しいです
1

short‐short:景色

仕事柄の癖のようなもの。
誰にしろあるだろう。
真剣に取り組んであれば当然のことに思う。
僕は人間観察かもしれない。
この前、親父に怒鳴られた。
「人ばっかり見て、お前はどうなんだ!!」
つい言いすぎた。
見ていれば自ずと口も出る。
他人事は無責任に言える。
例え事実だろうと欠点を白日の下に晒されるのは誰しも嫌なものだ。

(食事の時ぐらい忘れよう)

食事は必ずといっていいほど人通りの多いところ

もっとみる
ヽ(´エ`)ノ 気に入って貰えて嬉しいです
3

随筆:小説による対話

 「言葉というものは肝心なことが伝わらないものだなぁ」と実感します。直接的かつ具体的な会話より、何かを媒介にした象徴的なコミュニケーションの方がより深く相手を感じられることがあります。書や絵画、音楽等の諸芸術等はその最たるもの。言葉を使いながら象徴表現であるものに、詩や俳句、短歌等があります。嘗ては手紙のように互いに返し合うものでもありました。そこを発想の起点とし、「小説」を媒介にコミュニケーショ

もっとみる
ヽ(´エ`)ノ 気に入って貰えて嬉しいです
3

短編:白い眼

よく晴れた夏の日。
世界は力強さに溢れていた。
自然の英気を浴びながら、不意に最後の時を思う。

(死ぬには最高の日。)

先住民の言葉。
「こういう日を言うんだ」と感じた。

姉の所属する交響楽団のコンサートを聴きに親戚一同で訪れたこの地。
誤魔化し難い疲労感を抱えながも精神的には充足感に満たされる。
普段寝たきりの彼にはいい気分転換。
一時的とは言え、音楽は精神を切り替える。
姉は嘗ての教え子

もっとみる
(●´ω`●) 読んで下さりありがとうございます
2

短編:いただきます

泣くとは思わなかった。

人が何を思って泣くか、わからないものだと彼は思った。

自分にとっては単なる無意識の行為、習慣に過ぎない。

とても泣くほどのこととは思えないが。

それでも堅い表情に鋭い眼光を宿した彼女は自ら想像だにしなかったほど泣いていたし、その様に彼は激しく胸を動かされる。

彼女は顔を真っ赤にし、何事かと自ら狼狽え、慌てて手で涙を拭う。

彼が癒やされたとも知らずに。

彼女とは

もっとみる
ヽ(´∀`)ノ ご感想ありがとうございます
3