平成小説クロニクル

あなたの「好き」を見つけたくなる本|三浦しをん『マナーはいらない 小説の書きかた講…

こんにちは、「monokaki」編集部の碇本です。 2021年の新連載第一弾は今回から始まる「小説の書き方本を読んでみる」です。 小説を書く時に、ウェブにある「小説の書き方」なんかの記事やまとめを皆さん読んだことありませんか? 同様に今までたくさん出版されている「小説の書き方」本を読んだこと…

「公正さ」は日本の小説を世界と連帯させる|藤井太洋と深緑野分|仲俣暁生

 新たな元号への改元を前に、平成年間に書かれた小説を読み返す旅も、私の担当回はこれで最後となる。それにふさわしい作品を今回は紹介するつもりだ。  平成の30年間(とりわけその後半)はグローバリゼーションとIT化の時代だった。前者が意味するのはたんにモノや経済の国際化だけではなく、価値…

「就活」というリアルとアンリアル|朝井リョウと加藤シゲアキ|仲俣暁生

 平成という時代を象徴する小説家を一人だけ挙げようとすると、この時代のどの時期に着目するかによって大きく変わってくる。前半はまだ「J文学」などというくくりも可能だったが、後半になるにつれ小説ジャンルの幅も広がり、掲載媒体もウェブを含めて多様化していくが、逆に出版産業の市場は急速に…

娯楽作品は「戦争」と「軍隊」をどう描いたか|福井晴敏と百田尚樹|仲俣暁生

 平成元年は第二次世界大戦が終わってから44年目の年だった。昭和天皇が崩御したこの年、20歳で終戦を迎えた世代はまだ64歳。戦場体験のある人たちがこの頃の日本社会には大勢存在した。しかし30年の年月を減るうちに、「先の戦争」の記憶は次第に薄れていく。  その一方で、平成年間は自衛隊がはじ…

世界と「僕」を巡って|上遠野浩平と伊藤計劃〔前編〕|前島賢

「ファンタジー・ブームを終わらせた」作品  前回の連載では、ライトノベルにおける最初の(ライトノベルの始まりとともにあった)ファンタジーの歴史を大雑把に振り返った。続く今回は、そのファンタジーブームを「終わらせた」と言われている作品から始めたい。上遠野浩平『ブギーポップは笑わない…

「本」の世界を描いたラブコメが広大な読者層を獲得した理由|有川浩と三浦しをん|仲俣…

 平成の30年間は、出版産業が急速に市場を縮小させていった時代として後世に記憶されるだろう。だからこそというべきか、書店や古本屋、出版社や図書館など本にまつわるものを題材にした小説が数多く書かれた。これらをひとまず「本についての小説」と呼ぶことにしよう。  「本についての小説」は、…

青春ミステリーは「豊かで平和な時代」の外へと誘う|米澤穂信と桜庭一樹|仲俣暁生

 子ども向けの読み物と大人向けの読み物の中間段階、いわば階段の踊り場のようなものとして、かつてはジュヴナイルというジャンルがあった。アメリカではヤング・アダルト(Y・A)などとも呼ばれる、おもに十代向けの物語である。日本ではその市場を、ある時期から「ライトノベル(ラノベ)」と呼ばれ…

「語り」と「ダンス」が小説に動きをもたらす|町田康と古川日出男|仲俣暁生

 小説の世界に他のジャンルの表現者が参入することは、いまではもう珍しくもなんともない。音楽家や美術家、劇作家やマンガ家、さらにブロガーやAV女優や社会学者までが小説を書く時代である。しかしそうした「参入組」が、小説の世界にあらたな豊かさを持ち込めたかどうかは、厳しくジャッジしなけれ…

「システムにからめ取られない自由」をもとめて|阿部和重と伊坂幸太郎|仲俣暁生

 平成はインターネットに代表される情報通信技術が急速に発展し、社会のあり方が大きく変わった時代だった。オウム真理教による地下鉄サリン事件が起きた平成7年はウィンドウズ95が発売された年でもあり、パソコンからインターネットへの接続が容易になった。また平成11年にはNTTドコモが「i-mode」の…

ファンタジーからファンタジーへ|水野良から川原礫へ〔後編〕|前島賢

〔前編はこちら〕  今回の原稿執筆にあたっては、テーブルトークRPGをはじめとするゲームやWeb小説の歴史に関して、作家、翻訳家の海法紀光氏より貴重な助言を頂きました。記して感謝の意を表します。もちろん文責は評者にあり、文中に誤謬や不備等があれば、それは評者の勉強不足、理解不足によるも…