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M先生は詩人でもあったが、私はM先生の長編について、行間から立ち上る緊密な空気が冒頭から最後まで乱れていないことに驚き、そのことを指摘した。M先生は目を丸くして、 「そなことをいう編集者に初めて会った。君にはそれが分かるのか。私はそこに苦心し続けているのだよ」 とおっしゃった。

35年くらい前のこと。 先輩編集者で編集長だったNさんの、純文学系新人賞応募原稿で下読みを通過した作品を一通り読み終えての一言。 「自分探し(の小説)がほとんどだったね。自分探しは全部落としてね」

不自然な卓立