M先生は詩人でもあったが、私はM先生の長編について、行間から立ち上る緊密な空気が冒頭から最後まで乱れていないことに驚き、そのことを指摘した。M先生は目を丸くして、
「そなことをいう編集者に初めて会った。君にはそれが分かるのか。私はそこに苦心し続けているのだよ」
とおっしゃった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?