見出し画像

その11:接客が無愛想シンドローム

「接客が無愛想」というクチコミ

クチコミサイトに集まりやすい意見の1つ

先日、ここしばらく訪れていなかった店へ久々に行ってみようかなと思い立ち、営業時間の確認を兼ねてクチコミサイトでその店の情報を確認したところ、
「接客にやる気が感じられない」
「相変わらず無愛想」
「寡黙で頑固なコワモテ店主」

といったフレーズが並んでいました。

これらのクチコミに対して反論があるわけではなかったのですが、
「え?そうだっけなぁ。むしろ女将さんなんかよくしゃべる方だと思うんだが…」
と疑問を抱いたのと同時に、ひょっとしたら私がご無沙汰しているこの数年の間に、店主ご夫妻に何らかの心労が重なった結果、モチベーションの低下やマイナス感情の蓄積が起こったのだろうか?などと勝手な推測をしてしまいました。

だったら確かめに行ってみよう

こうした流れから、先述した「久々に行ってみようかな」程度のフワッとした動機から「今すぐ行きたい」に変わったので、これらのクチコミには感謝しています。

さて結論を述べると、店主ご夫妻は以前のまま、特に変わった様子はありませんでした。
実際、私が入店するそばから
「こんにちは~」
と言いながら席に向かうと、
店主「あ~い」
女将さん「はい、いらっしゃ~い!」

と、数年前と全く同じ調子で出迎えてくれたのです。

郊外の住宅地にある店ですので、ご近所に住む常連さんも多く来店しており、その常連さんたちの問いかけには楽しそうに返答していました。
何なら、会計の際に
「ごちそうさま~!」
と話しかけると、女将さんは
「はい、〇〇ラーメンと△△飯で◇◇◇円ね、お待たせして悪かったね~、ありがとね~」
と、価格以外のフレーズも添えて対応してくれました。
私は改めて、別に無愛想な印象は受けないけどな…と自らの認識に変化がないことを確認しました。

無愛想だと書かれやすい店の傾向

今回の例に挙げた店に限らず、クチコミに「無愛想」およびそれに類するフレーズが散見される例として、ラーメンは他ジャンルに比べて非常に多いように感じます。
これらはラーメンという食べ物が持つ特性ではなく、店主ご夫妻または店主お一人でで営んでおられる個人店が多いこと、一人客が多いこと、男性客が多いことが要因だと考えられます。

なぜなら、ラーメン店でもチェーン店をはじめとする大型店へのクチコミでは「元気な接客」というフレーズを見かける機会が多いですし、ラーメン以外のジャンルでも前段落の条件に当てはまる店では、似たようなクチコミをよく見かけるからです。
(例:丼もの専門店、中華料理店、洋食店など)

それにしても、特定のお客さんが店内に滞在する、たかだか20~30分間の口数が少なかっただけで「頑固」というにはあまりに早計ですし、おしゃべりだけど営業中は封印している可能性だって考えられます。

何より、愛想の良い接客は飲食店を営む方々にとって、ベターではあってもマストではないはずです。それなのに、なぜこの店は不特定多数のお客さんから「無愛想だ」と思われるようになったのでしょうか。

先述した通り久々(4~5年ぶり)の再訪でしたし、通算訪問回数でも2ケタには及ばない程度、当然店主ご夫妻は私が数年ぶりに来店した、ということなどお分かりではないでしょう。
実際、常連さんには
「あら◆◆さんいらっしゃい、カウンター端っこね」
なんて調子で、誰だと分かるや否やすぐに名前で呼んでいましたし、その後の世間話が弾んだのは先述の通りです。

このことから、この店を無愛想だと感じるお客さんと私との間に、常連か否かという差はないはずだと考えられます。となると、今回訪れた私に対して、以前の通り接してくれた理由はどこにあるのでしょうか。

訪れる側が、まずあいさつ

いつも初動は私から

改めて今回の訪問を振り返ってみると、店主ご夫妻からではなく、常に私から話しかけていることに気付きました。入店時のあいさつ、注文はお冷を供された際に即答、会計時のあいさつ、全て相手の初動を待たずに私から動いていたのです。

何度も通い詰めて既に店主と私との関係性構築が完了している場合は、店主から色々と話しかけてくれるケースもあります。また恐縮なことに、初訪の店でも店主が私のことを認知してくださっていて、店主から話しかけてくれるケースもあります。
しかし初めて訪れる大半の店では、私はあくまで一見客の中の1人であり、特別な存在でもありません。

店の「開店宣言」に対する、客の「入店宣言」

だからこそ、
「入店しましたよ!」
という宣言として、入店時のあいさつ(こんにちは/こんばんは/朝ラーだとおはようございます)を自らするように心掛けています。

店内が混み合っており、先に入店しているお客さんの
「すいませ~ん!」
が飛び交う活況の中に入っていくこともしばしば。そんな時は、普段より大きめに声を張ってあいさつします。
(元々ヴォーカリストなので腹から声を出すことは得意な方です)

店主や女将さんの接客が無愛想だと物申す前に、ご自身から明るい声であいさつしてみてはどうでしょう?それでも店主ご夫妻の対応が変わらなかった場合、私は責任を持ちませんが(笑)。

懐に入るのを楽しむ

青森遠征時に起こったエピソード

さて、今回の事例にカテゴライズされる私のエピソードの中で、最も極端な例を以下に記します。2021年8月に多くのファンから惜しまれながらも閉店した、青森県青森市「丸海鳴海中華そば店」での出来事です。

私が初めて訪れたのは2016年5月、この年のゴールデンウイーク遠征9泊10日のうち6日目でした。朝ラーで青森市内の別の店をハシゴし、この店に到着したのは午前9時ごろ。

「無許可の撮影禁止」というフレーズが持つ牽制力

食べログに記載されていた開店時刻の10時までは1時間ほどありましたが、前日の秋田県横手市からの長距離移動と早起きからくる疲れもあり、店の駐車場に車を停めてしばし休憩しながら開店を待とうと思っていました。

この店を選んだのはもちろん提供しているラーメンが魅力的に感じたからですが、それ以上に
「店主に許可を得てからでないとラーメンの撮影は禁止」
という前情報を掴んでおり、気難しい店主なのかな…という印象を勝手に持っていたからです。

いつも通り自分からあいさつしたら歓迎してくれるかな?なんて思い、車の中で開店時刻を待っていると、駐車してものの5分も経たないうちに店主が私の車までやってきたのです。その姿を確認した私は自ら車のドアを開け、車から下りたらすぐにあいさつしよう!と意思決定しました。

ところがところが、気難しいと勝手に空想していた店主の方から積極的に話しかけてきてくださったのです。その時の様子が割と鮮明に当時の私が書いたクチコミに残っているので、以下一部をに転載します。

店前に駐車した私の車のナンバーを見るなり「岐阜って栃木より遠いの?」と自ら話しかけてくる店主。
とりあえず「名古屋の近くです」と回答したが、そんなにしっくり来てない様子(笑)。
ネットに上がってる情報では「気難しい店主」という記述が多く、その辺りを警戒していたが、客席にただ一人の「わざわざ遠くから来てくれた」私に対して、話好き店主のエンジン全開。
店の歴史や商品へのこだわりに始まり、仕舞にはご子息の現在や店の今後まで色々と一方的に話された(笑)。
尚、県外人向けの言葉にして喋ってくれたとは思うが、それでも相手は高齢のネイティブ青森人。
ところどころに津軽弁の言い回しが入り込み、ヒアリングしてから脳が理解するまでにタイムラグがどうしても生じる(爆)。

-中略-

帰り際には、わざわざ店先まで笑顔で送り出してくれる好々爺の店主。
人柄も腕前も最高だ!

https://tabelog.com/rvwr/hashroyal/rvwdtl/B259264766/

といったように、愛想の良し悪しを超越したご対応を頂きました。

マイナス発進からのプラス転換

われわれ食べ手も人間であるように、店主やそのご家族も同じ人間です。
一度は無愛想だと感じた店も、次回「こう言ったら何て返してくれるのかな?」なんて思いを馳せながら、再び訪れてみるのはいかがでしょうか。
マイナス印象からの好転により、むしろお気に入りの店になるかも知れませんよ。

(トップ画像は2019年4月に訪れた時に食べた「そば 大」)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?