【詩】今はさよなら

液晶に映る光の粒の集合を見て君だ、と思うように、
例えば夕焼けを見て君だ、と思う。
例えば深夜の細い路地の、外灯の明かりを見て君だ、と思う。
ある急に寒くなった日の朝に君だ、と思う。
君がいなくなった世界は、全部が少しだけ君で、
それは君を好きになった日のことに似ている。

恋の速さは光速を超えるから、時間の外側にだって到達する。
全ての過去に手が届くし、全ての未来に偏在している。
いつだって今にだけ、君がもういないのだった。

ある日ふいに耳に飛び込んでくる音楽があって、懐かしい音楽があって、
僕はその曲が好きだったことを思い出す。
それが君とのさよならだった。
そんな風にしてまたひとつ手離す。
カケラを拾い集めるように、再会を繰り返すように、
無限に続くお別れの中で僕は自分を取り戻していく。

ありがとう、そして今はさよなら。
永遠がもう、始まっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?