見出し画像

メンタルの成長に重要なのは”スローな競技体験”

スポーツメンタルコーチ橋本です。

緊急事態宣言が出され自粛生活をする中で、UberEatsで食事を頼む機会が増えました。スマホでメニューから選ぶと20分もしないうちに自宅に届きます。なかなか外を出歩けない状態で、家に直接食事を届けてくれるというのは、本当にありがたい。配達員さんに心から感謝したいです。

しかし、便利なものにもいいことばかりではないですね。料金が通常よりも割高なこともあって、頼むものはどうしても元の値段が安いファストフードばかりになってしまいます。現役時代の延長線上で気にかけていた食習慣が一気に崩壊し不健康になりました。集中も続かなくなったり、イライラを感じることが増えた気がします。あと、単純に脂肪がついた。

手軽に欲望が満たされるという体験は、それまでに培ってきた習慣やバランスを変えてしまう力を持っているんだなぁ。そんなことを某ハンバーガーチェーンの茶色い紙袋を眺めて考えています。

美味しいから罪深いですよね。なんとかせねば。

画像2


ただ、そんな時に同時に感じたことがあります。それは「食生活に限ったことではないかもしれないなぁ」ということです。

例えば、”依存症”とよばれるもの。具体的にはタバコやギャンブルなどなど…やはり過度になってしまうと健康を害してしまいます。心と体はつながっているので、体の調子が悪ければ必然的に心の調子も悪くなります。

心から体へという影響ももちろんあります。不安やストレスから目を背けるために、一時的な欲求の満足で解消しようとする。しかし根本は解決されていないために、また同じ状況に陥る。また目を背けようとして、同じことを繰り返す。そうやってやがて体に影響を与え始めます。

競技活動においても似たような構造を感じることがあります。具体例を挙げるならば、指導者の怒りによってモチベートされている選手。必要以上に不安を抱えた選手が、必要以上の練習をこなすことで、その指導者から認められる。しかしその結果としてオーバートレーニングになったり、怪我を抱えてしまったりする。これではプレー自体ができなくなってしまいます。

他にも、プロとして結果を出さなければいけないという焦りから、新しい技術や環境ばかりに目を向け、今の自分の長所や短所をきちんと把握できなくなってしまうと言ったケースにも出会ったこともあります。今いる場所が正確でなければ、目指す目的地にもズレが生じるのは想像に難くありません。

不安や焦りの中で、目先の結果や評価(それが大事な時ももちろんあるが)にばかり目が行くと、長い目で見た時に色々なものを損なってしまう。目の前にある刺激に反応するだけの毎日が、思い描いた未来を作るかといえばそうではないのです。

選手のメンタルにとって必要な体験とは

「選手のメンタルにとって重要な体験とは何か」

そんな風に考えていてふと頭をよぎったのは”スローな競技体験”というワードです。ファストフードばかり食べていたから思いついたことを考えると皮肉ですが…

目先のものに反応し続ける体験を”ファストな競技体験”(これはこれで重要なときもあるが)とするならば、じっくりと少しずつ技術を醸成させていったり、じわじわと湧き上がる競技への気持ちを喜んだりするのは、スローな競技体験といえるでしょう。スローな競技体験で重要とされるものについては、他にも以下のようなものが考えられます。

・競技することの喜びや幸福感を育てること
・失敗経験から学び乗り越えること
・心技体をじっくりと醸成すること
・自分をコントロール力を伸ばすこと
・自分自身とのコミュニケーション
・他者とのコミュニケーション
・競技を通した他者への貢献
・自分の競技とは一見関係のない領域の体験
…etc

メンタルの成長とは、個人の中にしかない価値観や世界観を広げていくことです。そしてそれは、今この瞬間に選手自身の目の前にあるたったひとつの体験とじっくり向き合うことでゆっくりと広がっていくものです。

その過程は植物の成長に似ていると感じます。花や実をつける前には、根や幹の成長が不可欠です。

画像1

スポーツの華やかな側面を陽とするなら、スローな競技体験とは「毎日の地味なことを大切する」という陰の部分にあたるかもしれません。文字通り、目に見えにくいものや複雑なものだからこそ、腰を据えて、着実に進めていくことに価値があります。

より大きくより速い変化を求められる社会だからこそ、その逆の発想を持ってバランスを保っておくことは、自分のメンタルを調整するひとつの方法です。そういったことをメンタルコーチングを通して選手に体験してほしいと感じます。

”スローな競技体験”という着想を得たばかりで、まだまだまとまっていない部分がありますが、これから少しずつ解像度を高めていきたい。ゆっくりじっくり深めていきます。

支援していただける方々のおかげで活動できております。いつもありがとうございます。