知らないと損する!「会議費と交際費の使い分け」
みなさんは会議費と交際費の使い分けに、明確なルールを設けていますか?
「名前が違うだけで、内容は同じじゃないの?」
「全部まとめて交際費にしている」
という声もちらほら耳にします。
しかしこの2つの経費は全く違うもので、無計画に計上していると税務調査の指導対象になったり、場合によっては損をするかもしれません。
シリーズ「犬も歩けば税に当たるー経営者なら一度は悩むことー」では、日常で疑問に感じつつスルーしがちな税のアレコレを解説しています。今回は全ての法人、個人事業主、フリーランスに関係する税務の基礎基本、交際費と会議費を説明します。
会議費とは
会議費になる経費
会議費とはその名前のとおり、会議に関連する費用のことです。損金(経費)計上することが認められていて、次のような費用が一般的に会議費として計上できます。
会議室代
会議で出す飲み物やお菓子、弁当などの飲食代
資料の印刷費
プロジェクターなどの備品レンタル代
国税庁は交際費の定義は明確にしていますが、会議費については明確にしていません。したがって、「事業にに関連する交流で使った経費のうち、交際費に該当しないものは会議費」と考えると良いでしょう。
計上できる金額に上限はないが・・
交際費には、1人あたりの単価や法人として計上できる金額に上限があります。しかし会議費は国税庁によって定められたルールがないので、交際費のような金額の制約はありません。とはいえ、無制限に計上できるわけではありません。会議費として常識の範囲内で計上しましょう。
後ほど紹介しますが、1人あたり1万円以上の飲食代は交際費、というルールがあります。1人あたり1万円未満の飲食代は会議費とするのが適切です。
会議費を計上するときにやっておくべきこと
会議費(特に飲食代)を経費計上する際は、次を記録しておくのをお勧めします。とういのも、後ほど説明する交際費の制約から、企業は会議費として計上した方がお得で、無理な節税対策として利用されやすいからです。当然、税務署は念入りにチェックする項目です。「この金額高いですが、本当に会議に必要だったんですか」と指摘されたときに、はっきりと答えられるようにしておく必要があるのです。
飲食が発生した年月日
参加者数
参加した人の名前、会社名
会議目的
特別な書類である必要はありません。議事録などはこれらの要件を満たせるでしょう。
交際費とは
交際費になる経費
交際費には明確な定義があります。国税庁のHPから紹介します。
上記を要約すると交際費は、事業に関わる取引先など社外の人との交流で認められているものです。社内の会議や飲み会などは対象外となります。
更に令和6年の税制改正で、1万円以上の飲食費は交際費と定められました。つまり、事業に関わる飲食で1万円以上使っているにも関わらず、先述の会議として計上している場合、税法に抵触する可能性があるのです。
また、税務調査が入ったときに事業に関わる支出だったことをしっかり説明できるよう、会議費と同様に詳細を記録した書面を残しておくことをお勧めします。
原則として交際費は経費にできないが・・
実は法令上、「交際費は原則として全額損金不算入」とされています。つまり経費にできない、という点が基本ルールなのです。なぜならば、交際費を経費にできてしまうと企業が利益を圧縮しやすくなり、大規模な節税を許してしまうからです。
しかし、企業にとって接待交際は販促活動において必要不可欠な支出で、それによって事業が成り立っている飲食業も多いのが現状です。コロナ禍からの回復や中小企業の経営改善を促す面からも、ある程度の配慮が必要ということになりました。
そこで現状は、交際費の一部を損金算入可能とすることが特別に認められているのです。そう、あくまで「原則経費化できないが、特別に認めている」のが現状なのです。
(参考)経済産業省 令和6年度(2024年度) 経済産業関係 税制改正について:P.20
経費にできる交際費の金額
先述のとおり、1人1万円以上の飲食経費は交際費となります。そのうえで、経費にできる交際費の総額には明確なルールがあります。法人の場合は上限が決まっているので、会議費にできるものを交際費として計上していると、いつのまにか上限に達している、ということもあり得るのです。
個人事業主:制限なし
資本金1億円以下の法人:年800万円まで or 接待飲食費の50%
資本金100億円以下の法人:接待飲食費の50%
資本金100億円以上の法人:無し(全額不許可)
損金不算入制度は要チェック
ここまで紹介してきた交際費に関するルールは、今後も改正されていくことが分かっています。例えば先ほど紹介した800万円の控除限度額は、「令和6年から3年間」の期間限定と定められています。また、交際費になる飲食費が1人あたり1万円以上と紹介しましたが、昨年度までは「1人あたり5千円以上」でした。激しい改正が繰り返されているのです。
交際や会議費に特に関係深いのが「損金不算入制度」です。今後も改正されていきますので、都度チェックしていきましょう。
さいごに
会議費や交際費は、全ての人に関係する経費です。その分、国にとっては税収を大きく左右する支出でもあります。今後も社会情勢や国の財政状況のバランスを見ながら、制度変更が繰り返されるでしょう。
会社で明確な使い分けのルールを設けて、経理担当の方が迷わないようにしてあげましょう。また、法令改正を個人で追いかけ続けるのは骨が折れる作業で、経営者の方々によっては最重要業務でもありません。だからこそ、税理士に頼っていただきたいと思います。
橋本美菜税理士事務所は、
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