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福祉と建築について思うこと。

最初に断っておきたい。僕は建築の専門家でもなんでもない。今回はあくまで僕が思う建築に関する記事である。

僕は暮らりという、1階でデイサービス的機能と2階でコミュニティスペース的機能をもった拠点づくりを行っている。暮らりは、築120年の元診療所兼住居の古民家をリノベーションしている。

街に拓けたデイサービスにするためには、どのようにすればよいのだろうか、通ってこられるであろう利用者さんがどうすれば、家とまでは言わないが、ゆったりと落ち着いた気持ちで過ごしてもらえる空間になるだろうかと日々考えている。

考えている中で、感じた福祉と建築について思ったことを備忘録的に記しておこうと思う。

建築が利用者や患者をつくっている?

建築だけとは言わないが、建築も含めた環境が介護保険の利用者を利用者として、患者を患者として振舞わせている側面は多分にあるのではないかと思う。

環境が人に与える影響として、「アフォーダンス」という考え方がある。

人は能動的に物を扱っているように思えるが、環境から発せられているメッセージによって行動を規定されている側面もある。

一例として、下記の参考記事に書かれているように、駅でよく設置されている空き缶やペットボトルのゴミ箱がある。

円状に切り抜かれたゴミ箱に、わざわざほかのゴミを捨てようとするだろうか?このように円状のゴミ箱には円状(空き缶やペットボトル)のものを自然といれたくなるのではないだろうか。

より使いやすいデザインにする「アフォーダンス」って? | 株式会社ワールドカラー (worldcolor.co.jp)

僕は、暮らりの内装考えていくうえで、設備関連のモデルルームに足を運んだ。洗面所や便器、浴槽や手すりなどを見ていった。

モデルルームの身障者トイレに入ったときに、「介護施設っぽい」と感じてしまった。手すりの色や質感、洗面台の形状や色、トイレの色がそう思わせているように僕は感じた。

他にも死角がない柱無空間で広いスペース、同じ種類しかない介護用の椅子や机、照明のデザインや色、、、

僕はここで一つの気づきを得た。このような形状・質感・色などの小さい積み重ねで、人は病院や介護施設を連想しているということに。

環境によって人の行動が規定される側面があるならば、介護っぽい椅子に座ったり、机を使ったりしていれば、利用者はより利用者っぽくみえるだろう。

介護っぽい建築で働くなら、より利用者っぽい方をケアするのだから、より介護の職員は、介護職員っぽくふるまうかもしれない。介護の仕事をしているという側面が強調され、あくまで手助けをするという感覚である。

エビデンスを調べているわけでないため、断定はできないが、建築によって利用者も現場で働くスタッフも介護っぽいふるまいをしていることは可能性としてあるのではないかと感じる。

可能な限りデザインにこだわる

介護っぽいデザインをしたトイレ、手すり、洗面台などは、車いすを利用されている方や身体が不自由な方にとって機能的で使いやすいものになっている。

しかし、デザイン(しつらえ)にも可能な限りこだわりを持っても良いような気がしている。介護っぽい機能的なものは何が機能的ななのかということを因数分解する作業が必要だと思う。

例えば手洗い場を想像してもらいたい。
車いすに座った状態で使いやすい手洗い場の機能は何だろうか。

  • 車いすと足が奥へ入ることができるよう足の部分にスペースがあること

  • 蛇口まで手を伸ばしやすいこと(手洗い場の高さや蛇口の奥行きなど)

だろうと僕は思っている。

つまり、何も形や色や質感などは規定されていない。
上記の機能を満たした上でデザインを柔軟に変えれば良いだけなのである。

少し思考して、工夫をすれば解決することだ。
こういった些細な思考と工夫を繰り返すことで、居心地の良い空間になっていくのだと思う。

建築に責任を持つ

建築というのは、施主の人生よりも長くその場所に居ることになるだろう。
つまり、何十年、ものによっては、何百年とその街に影響を及ぼすということである。

簡単に安く早く建てる建築は個人的には少し勿体無いように感じてしまう。
自分の目的(介護施設したい、飲食店したいなど)だけではなく、街にとってどんな意味を持つ建物になるといいかまで考えながら建築に責任を持っていきたいと思う。

そして、建築というのは、ただの箱物ではない。
建築物の内外では人の営みが起こる。その営みの行動さえも左右するのが建築である。人の暮らしに直結し、健康や豊さに影響を与えると思っている。

  • 排泄物の匂いが上手に換気できる建築構造になっているのか?(衛生面)

  • ケアをする上でスムーズな導線になっているのか?(作業効率)

  • 利用者が選択肢(運動や作業ができたり、落ち着ける空間)を持ててるのか?(ケアの質)

  • 職員が休める空間があるのか?(福利厚生、仕事パフォーマンス)

  • 近所の人が足を踏み入れたいと思えるか?(誘導

  • 毎日、その空間にいても嫌にならない(愛着)

介護をする私にとって、居心地の良い空間を作るためには、ケアのスキルや知識だけではなく、建築(環境)の力を借りなければならない。それほど重要視している。

幸い、私は暮らりを設立するにあたって良い建築士と出会うことができ常に伴走しながら方向性を決めていけている。

建築士と施主(ケア職である私)のコミュニケーションがより良い建築を生み、人々のより良い暮らしの助けとなるのだろう。


PS. 私は「環境心理学」という学問があることを、最近知った。
環境(建築や空間デザイン)によって、人がどのような心理状況になるかや行動をとるのかについての学問だと思う。きっと今の僕に必要な気がしているので勉強してみることにする。


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