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福祉の「ごちゃ混ぜ」という言葉の何に違和感を覚えるのか

福祉の世界では、地域共生社会を象徴したものとして、「ごちゃ混ぜ」という表現が使われることがある。これは、年齢、性別、障害の有無に関係なしに集まれるようなコミュニティを指す。

この「ごちゃ混ぜ」を福祉の理想郷として扱われることもしばしばある。僕は、本当にごちゃ混ぜなコミュニティを作ることが理想と言えるのかに違和感を感じる。

決して「ごちゃ混ぜ」を否定しているわけではなく、僕の単なる違和感である。そして、この違和感を言語化することで、逆にごちゃ混ぜなコミュニティを形成していく上で、何を大事にしていく必要があるのかが見えてくるように思う。

今回は僕の違和感を言語化する作業に、ぜひお付き合いいただきたい。

ごちゃ混ぜをマネジメントするということ

「ごちゃ混ぜなコミュニティを作りたい!」と僕なら気軽に言えない。年齢、性別、障害の有無に関係ないコミュニティをマネジメントすることはとても難しいのではと想像するからだ。

ただでさえ人は、多様な価値観を持っている。そこに目や耳が不自由な方や認知症がある方などいわゆる障害を持った方々が加わるのだ。求められるケアの質(深さも広さも)も必然と高くなるだろう。

また、ごちゃ混ぜであるためには、地域との距離感もかなり近くなるため、地域住民からの理解も必須だ。きっと最初からごちゃ混ぜの必要性を理解されない。根気よく活動を続け、説明を行い、結果を示し続ける覚悟は必要なのであろう。

地域の方の出入りが多くなればなるほど、障害施設や介護施設などの福祉施設との境界線も曖昧になり、誰が利用者で誰が地域住民かが、一目でわからなくなる。目が届きにくくなると、事故や離設(利用者が施設から出ていくこと)も増えていく。

さっと想像するだけで、ケアの質という人材の問題、地域住民との関係性の問題、施設運営の問題など越えねばならないハードルはたくさんある。

「ごちゃ混ぜなコミュニティを作りたい!」と本気で思うならそれなりの覚悟と準備は必要なのではないだろうか。

ごちゃ混ぜは誰がみたい映像なのか?

年齢、性別、障害の有無に限らず、談笑していたり何かに取り組んでいるコミュニティを写真や映像でみると微笑ましい。しかし、そのごちゃ混ぜの光景は「誰がみたい映像なのか?」と一度問ってみることが大切なのではないだろうか。

本当にごちゃ混ぜな場を提供する人の想定しているターゲットの人が、笑顔になれるのだろうか?もしかすると、場を提供する人"が"夢みる場になってはいないだろうか。ごちゃ混ぜを目的化してしまっていると、何を大切すべきかを見失ってしまうだろう。

ごちゃ混ぜはユートピアではない。常々、ターゲットとなる人のニーズに応えることができているか、立ち返ってみることは大切だと感じる。

結果としてのごちゃ混ぜへ!

僕は、暮らりというデイサービスを立ち上げるために準備を進めている。子育て中のお母さん(以下、彼女)も働きやすくするために、子連れ出勤も許可しているのだ。

つまり、暮らりでは、お年寄りと子どもの少しばかりのごちゃ混ぜな空間ができることが予想される。

僕はごちゃ混ぜというコミュニティが心地よい場となるためには「利得の有無」が重要なのではないかと思う。

僕(暮らり)と彼女は暮らりという場に対する利得がある。僕にとっては、能力の高い立ち上げメンバーが就職してくれるだけで、万々歳だ。彼女にとっては、子育てしながら働きやすい職場に就職ができるという良さがある。

さて、暮らりに通われるであろう、利用者に対して利得はあるのかが重要な点ではなかろうか。僕は利得があると考えている。

彼女には、介護経験はないが物腰も柔らかい。そして、しっかりと思考することができると感じる。これほど優秀だと感じるのに、子どもがいるというだけで働く場に困っているのだ。

経営努力が可能な範囲で彼女のニーズにアジャストできるならば容易い。彼女が能力を活かせる環境を提供することで、利用者に良いケアを提供できるだろう。つまり、利用者にも利得があるのだ。

ごちゃ混ぜであろうとなかろうと、場が持つ機能に何かしらの利得で集まることが大事なのだと思う。その場に来ている人たちを許容することが重要だと感じる。

また、何かしらの利得を感じて、その場に来たい人の中には、身体的・精神的ハードルがある人もいるかもしれない。その人たちを排除しないようなデザインが必要だ。そのデザインができていると、結果としごちゃ混ぜになるはずである。

ごちゃ混ぜな場とは、無理矢理に多様な人たちをねじ込むものではなく、一人一人のニーズに向き合った結果できる福祉的な場ではなかろうか。

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ごちゃ混ぜの素晴らしい実践

・はっぴーの家ろっけん

・シェア金沢

・鞆の浦さくらホーム


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【暮らりでは一緒に働くスタッフを募集しています】

下記の写真にある三原市の古民家を改修して、介護保険により失われた、「暮らしとケアの分断」を、介護保険サービスを使いながら取り戻していく事業です。

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デイサービスだけではなく、2階では子育て中のお母さんや学生に向けたコミュニテスペースの運営も行う予定です。

このデイサービスで働いてみたい(関わってみたい)という方々と談話する機会を設けています。

正社員(常勤)、非常勤ともに募集をしています。
経験・資格は不問です。
しかし、看護師、介護福祉士、社会福祉士/精神保健福祉士を持たれている方は優遇させてもらう予定です。

・今よりもケアの質を求めたい
・まちづくりも含めてチャレンジしたい
・立ち上げの経験をしたい
・子育てと仕事を両立させ暮らしを充実させたい

上記のような方と一緒にデイサービスを作っていきたいと思っています。
コメントでも構いませんので、気軽に声をかけてもらえると嬉しいです。


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