見出し画像

割とわかる行政法 1〜行政手続法総説と適用除外〜

 行政書士の勉強をする上で避けて通れない行政法。
イメージのしにくさから苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。ですが、一度わかってしまえば得点源にできると感じ、自分の勉強がてら要点をまとめてみました。
 行政書士の勉強中の方、さらっと行政法がどんなものか知りたい方にもおすすめです。
 早速勉強を始めたい方は目次の「行政手続法総説」からお読みください。

※この記事は全て無料で読めます。(投げ銭を設けてます)




行政法は行政手続法から勉強するのがおすすめ

 行政法の難しさはイメージのしづらさと聞きなれない言葉の多さが大部分を占めているんじゃないかと思います。誰だって知らない言葉で身近じゃないものは中々親近感を覚えにくいですよね。参考書などは特に、行政法総論と言って、行政法全体のことから書かれている場合がほとんどなので、専門用語やつかみどころのなさから、行政法の最初から読んでしまった日にはやる気を挫かれること請け合いです。
 その上、行政法自体は試験で大きな比重を占めますから、行政書士の勉強自体を諦めたくなっちゃう方も多いのではないでしょうか。
 なので、私のおすすめは一旦総論は飛ばして、より具体的な行政手続法から勉強することです。戦略的撤退というやつです。

行政法総論より具体的でとっつきやすい

 先ほども書いた通り、行政法は民法などに比べイメージのしづらい分野です。その上、独特の用語も多く勉強につまづきやすい分野ではあります。
 しかし、行政手続法はその中でもかなり具体的で、しっかり整理すれば条文からの出題も多いので得点源としやすいのです。なので、行政手続法から勉強を始めることで負担が少なく学べると思います。
 総論を飛ばすことに不安を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、まず具体例を学ぶことでより抽象的な行政法総論を乗り切れます。
 あと、これは勉強してた個人の感想なのですが、行政法総論と行政手続法はさほど繋がっていないので、いきなり行政手続法を学んでも問題ありませんでした。わからない用語はその時々に調べれば良いのです。

条文からの出題が多いので条文を読む練習にもなる

 これも大きいと思います。自分の場合、民法や憲法はある程度知識があったので、味気のない条文を読むのが苦手でした。ですが、行政手続法の問題を見てみると条文そのまま出題されることもあり、何より条文の理解が大切だとわかります。ポジティブに捉えれば、素直な問題が多いのです。なので問題をがむしゃらに解いて慣れるスタイルよりは、じっくり理解して、問題を解くことで知識の定着度を確かめるような勉強法がおすすめです。(私はこれで結構な時間のロスをしてしまいました)



行政手続法総説

 では、本題に入りましょう。行政手続法、なんだか仰々しく難しそうな感じですが、大丈夫です。ざっくりとしたイメージはお役所とかの手続きであったり、それに関するルールだと思ってください。次の見出しを読むとそのイメージがよりはっきりします。

この法律の目的は?

 そもそも、なぜ行政手続法は定められたのでしょうか?
法律には定められた理由があります。行政手続法の目的は条文に記載されています。読んでみましょう。

この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に質することを目的とする。
(※一部省略)

行政手続法 第1章 総則 第1条1項(目的等)

 どうでしょうか。そこまでややこしさは感じませんよね。
行政がルールを守って運営することで公正、透明性を確保して国民の権利や利益を守ろうということですね。ルールを定めていないと権利の濫用などの恐れがあるのでそれを阻止するという効果もあります。実際、行政手続法が制定されたのは1993年と比較的新しく、より国民の権利利益保護を実現しようする意図が伺えます。

 また、行政手続法は行政手続きの一般法であり、個別法があればそれに従います。(行政手続法が制定される前はそれぞれ個別法で対応していました)
 一応条文も読んでおきましょうか。

処分、行政指導及び届出に関する手続き並びに命令等を定める手続に関しこ
の法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。

行政手続法 第1章 総則 第1条2項(目的等)


 大まかなイメージは掴めても、個別の単語をみると少し難しく感じるかもしれません。処分に、行政指導、いずれも他の分野では聞きなれない単語です。それぞれ詳しくみていきましょう。

処分、行政指導、命令等って一体何??

 では、次に用語の検討です。
ありがたいことに、それぞれの用語についても条文で定義されていますから、条文を見ながら用語を理解していきましょう。
 それぞれ、後で詳しく学ぶことになるので、ここではぼんやりとした理解で十分です。

 処分  行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。

行政手続法 第1章 総則 第2条2項(定義)

 なんか、抽象的でわかりづらかったのでさらに調べてみたところ、総務省のサイトからよりわかりやすい処分の説明を見つけました。

処分とは、役所の行為によって、国民に義務を課したり権利を付与したりするような、国民の権利や義務に直接具体的に影響を及ぼすことが法律的に認められているものをいいます

総務省 行政手続法Q&Aより

随分わかりやすくなりました。大まかに、公権力の行使で国民に影響を及ぼすことを処分というんだな、くらいの理解で大丈夫です。行政から国民への権利義務など直接具体的に影響を及ぼすということは、処分については慎重な運用が必要であると考えられますね。
 それと、この処分には申請に対する処分と不利益処分の2つがあることを留意しておいてください。後でじっくり勉強しましょうね。


次に行政指導です。また条文から見てみましょう。

行政指導  行政機関がその任務または所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

行政手続法 第1章 総則 第2条6項(定義)

 行政指導は、先ほどの処分のような強制力はなく、あくまで勧告や助言等によって目的を実現させようとする行政の行為です。

届出  行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためのものを含む。)をいう

行政手続法 第1章 総則 第2条7項(定義)

 届出は国民から一方的に行政に通知する行為です。身近な具体例としては婚姻届などが挙げられます。後々出てくる申請との違いに注意です。


 最後に命令等です。ここはサッと目を通すだけでいいです。この後の申請に対する処分とか不利益処分を勉強することで意味がわかってきます。
いったん飛ばして大丈夫なやつです。

命令等  内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいう。
  イ 法律に基づく命令
  ロ 審査基準
  ハ 処分基準
  ニ 行政指導指針
(※一部省略)

行政手続法 第1章 総則 第2条8項(定義)

適用対象は?

 さて、今ここまで読んでくれたなら、行政手続法の意義、処分などの意味が理解できたと思います(わからなかったら気軽に質問ください)
 意味はわかったけど、まだぼんやりしてますよね。

それは行政手続法はいつ必要になるのかわからないからです。
つまりどんな手続きがこの法律の対象が何なのか、それを知る必要があります。
それが以下の手続きです。 

  • 処分に関する手続(申請に対する処分の手続き、不利益処分の手続)

  • 行政指導に関する手続

  • 届出に関する手続き

  • 命令等を定める手続き(意見公募手続)

以上です!そう、さっき用語の定義を学んだやつばっかりです。
どうですかね、行政手続法のイメージが少しずつ形になってきたのではないでしょうか。つまりは行政運営において守るルールブックみたいなもんなんです。(大事なことなので何度でも言います)

行政手続法の適用除外

ここまでくれば、後一息です。後は例外を覚えておきましょう。
そもそも、処分や行政指導は内容や性質が多様であり、手続の対象にするのが不適当なケースもあります。行政手続法の第3条では適用除外のケースがそれぞれ記載されています。お手持ちの六法なんかでみてもらえるとわかるんですが、かなり量が多く、覚えられない、やっぱり自分は行政法が苦手だ……なんて思わなくて大丈夫です。これを丸々覚える必要はないです。
大事なポイントをおされば十分なので、焦らずいきましょう。

処分・行政指導に関する適用除外

行政手続法第3条1項〜16項まであります。(こんなの覚えなくてOK)
ここでは大まかこそ正義です。
下記のような内容は手続法の適用外なんだなと理解できれば十分です。

  1. 当該分野に慎重な手続きがあるもの(国会とか裁判所とかの決定でされる処分) 

  2. 掲示手続等の一環として処理されるもの(刑事事件で検察官がする処分や行政指導など)

  3. 権利、利益の性質上、特別の手続きをとるべきもの(公務員の職務や身分に対する処分)

  4. その他、性質上、行政手続法の規定を一律に適用することが不適当なもの(不服申立てに対する行政庁の裁決等)

いずれも、行政手続法を適用するまでもなく慎重な手続きがなされていたり、そぐわないものですから、そういったものは適用外になるのだ、くらいの理解度でOKです。

命令等に関する適用除外

法律の施行期日について定める政令などには第6章(意見公募手続等)は適用されない。

とりあえずこれを理解しておけば大丈夫です。というかあまり深く突っ込まれません。法律の施行期日以外には恩赦に関する命令や公務員勤務条件についての命令等、6項目ありますが、問題を解いててここまで聞かれることはなかったので、頭の片隅に置いておくだけで良さそうです。

地方公共団体の機関における適用除外

 ここ大事です。よく問われます。そして間違いやすく覚えにくいです。
ゆっくり一歩ずつやりましょう。
まず、条文を見てみましょうか。

地方公共団体の機関がする処分(その規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第7号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第6章までの規定は、適用しない。

行政手続法 第1章 総則 第3条3項(適用除外)

 はい、正直どう思います?わかりづらくないですか???私は目が滑って仕方なかったです。なので、条例が何を言いたいのかまとめてみましょう。

 まずは確認です。地方公共団体の機関がする行政行為は、今までと同じように⒈処分 ⒉行政指導 ⒊届出 ⒋命令等を定める行為 の4つですね。
 ここからが問題です。例外があります。注目するのは()内です。
 そう、(その規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)という一文です。ここがややこしいポイントで、()内に当てはまるものは適用除外で、当てはまらないものが適用される訳です。
 この条文では「処分」、「届出」にそれぞれ括弧書きが付されていますね。つまり、処分と届出に関しては適用される場合とされない場合があるのです。
 それを分けるのが、根拠は法律か条例・規則か?という点です。
処分と届出の場合、法律が根拠なら行政手続法の適用範囲内で、条例や規則が根拠であれば適用除外という訳です。
 もっと簡潔にすると「条例・規則は原則適用除外。例外が法律に基づく処分と届出」です。文字にするとこれだけのことなのですが、いざ問題を解いてみると案外混乱します。でも、要点さえわかってしまえば「何だ、これだけのことじゃんか」という程度のものです。

国の機関等に対する処分等の適用除外

 最後です。

国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、この法律の規定は、適用しない。

行政手続法 第1章 総則 第4条1項(国の機関等に対する処分等の適用除外)

なんで条文ってこう、すっきりしないんでしょうね?
わかりづらい方は()部分を読み飛ばして下さい、そうすれば理解しやすくなりますよ。
 要は、国等が処分や行政指導される場合には行政手続法は適用されないよん、っていうだけです。なぜなら、行政手続法の目的が、国民の権利利益の保護であったり公正、透明性の確保だからですね。国等への処分はそこまで神経質にする必要がないでしょう、という意図だと思われます。




これで、行政て手続法の総則は一通り終わりです!
お疲れ様でした。
今勉強した所は、行政手続法の中では一番抽象的なので、わかりにくい点もあったかもしれません。次回は、申請に対する処分について書きます。ここはかなり具体的に申請の手続きの流れを学んでいくので、今回よりはわかりやすいと思いますので、これに懲りずにゆっくり学んでいきましょう。
ではまた次回!


サポートしてくれるととっても嬉しいです! いただいたサポートは活動費として書籍の購入に充てたり、飼いボルゾイのおやつを買ってあげるのが夢です!!!!!!でも、コメントとかも嬉しいです!!