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人生は挫折からはじまるー2024/03/29中日×ヤクルト開幕戦を見てきた

「これで今日の試合はもらった」2024年3月29日、神宮球場にいた私を含め多くの中日ドラゴンズファンはそう思っただろう。8回裏、ノーアウトでバッターは日本を代表する大砲、村上宗隆。中日のピッチャー松山晋也渾身の投球で、ショートフライに打ち取った…はずだった。その日、ショートを守っていたC.ロドリゲスが、背走しながらボールを追い、あとはキャッチするだけというところでボールを落としてしまう。ボールは転々と転がり、打者の村上は二塁まで到達した。それからそれまでの中日の勝ちの雰囲気はボロボロと崩れ、松山が失点し、さらに緊急で登板した梅野雄吾も点を失う。攻撃陣の必死の反撃も虚しく、中日は敗戦という結果となった。ロドリゲスは球場を後にするとき、頭からタオルを被り、まるで犯罪者であるかのような雰囲気で球場を後にしていった。

今日の試合で負けた理由をひとつだけ挙げろと言われれば、ロドリゲスの落球と答える。多くの中日ファンが同じことを言うだろう。実際、神宮球場でのロドリゲスへの野次は酷いものであった。たしかに、今日の敗戦は守備のミスによるものが大きかった。ロドリゲスはそれ以前にもマズい守備をいくつかしており、最後の落球が決定打となった。

失敗に失敗を重ねていく姿は、過去の自分と重なってしまった。自分も仕事で「お前があそこでミスさえしなければ、目標は達成できていたのに」というような冷たい視線を感じながら仕事をしていた。そんな冷たい言葉を、実際に多くのファンから浴びせかけられるロドリゲスはどれだけ苦しいのだろうか。

数万人ものファンに囲まれ、いつもと同じパフォーマンスをしなければいけないという過酷な環境でプレーするだけで尊敬できる。しかもその日、ロドリゲスは、NPBの公式戦で初めてのスタメンだった。試合の前の日やもっと前から、開幕戦のスタメンであることを告げられ、ずっと緊張する日々を送っていたのではないかと勝手に想像してしまう。ミスしてしまうのではないかという不安や、もしかしたらスーパースターになれるかもしれないという期待がないまぜになった感情を抱えて、開幕戦の日を迎えたのではないだろうか。結果的に、自身はミスをしてチームは負けるという現実になってしまったのだが…。

私は、ロドリゲスという選手の人生はここからはじまるのではないかと思っている。何事も始めるときには、失敗への不安や成功への期待に胸を膨らませているものだ。そこから様々な経験をして、思いがけない成功や大きな失敗をしてしまうこともある。大切なのは、いつか必ず大きな失敗をするときが来るということだ。必ず訪れる大きな失敗のときに、どんな決断をするかで人生は変わる。もう同じことは二度としないと心に決める人、手ひどい傷を負ってもそれでも前を向くという人。その選択が人生を大きく左右するのではないだろうか。

ロドリゲスという選手は、開幕戦でとても大きな手ひどい傷を負ったかもしれない。ここから、彼がどんな姿勢で野球をしていくかに注目したい。人生は、挫折してからがスタートである。

p.s. 翌日の試合もロドリゲスはスタメンで出場し、ヒットを放っていた。これから、どんな活躍をしてくれるだろうか。楽しみである。

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