見出し画像

人を温める「ことば」、傷つける「ことば」

「はしけい」こと、橋本恵子です。
「ことば」が大好きで『話すように書く』トレーニングを実践中。
どうぞ、あたたかく見守ってくださいませ〜


「質問」にうーむ

2月28日の「ことばを楽しむ、ことばでつながる」と題したフォーラムで、元NHKアナウンス室長の山根基世さんと一緒に、登壇する機会を頂いた。

事務局から、事前の「質問」が届いて、うーむ。
果たして、何をどのように答えたらよいのだろうか?

届いた質問とは・・・

言葉でだれかを温めたこと、傷つけたこと。思い出深いエピソードは?

正直、どう答えたらいいものか、悩んでいる。
誰かを傷つけようと思って「ことば」を放つことはしていないつもりだ。だけど、知らず知らずのうちに傷つけてしまっていることはあるだろう。そして、誰かを励ましたい、とか、温めたいと思って「ことば」を放つこともあるけれど、それがその人の心を、本当に温めたかどうかは、わからない。

小中学校で特別授業などを担当する時に、よく例に出すのが「晴れて良かったね」エピソードだ。

入社して間もないころ、天気予報のコーナーで「明日は晴れそうです、よかったですね」と何の気なしにコメントしたら、放送後、先輩に呼ばれて問われた。

「晴れると、よいの?なぜ?誰が?」

戸惑う私に、先輩は続けた。

「晴れて嬉しいのは、あなただけじゃないの?雨を望んでいる農家の方だっているかもしれないじゃない。ちゃんと考えて話しているの?」

正直、そんなこと、考えてなかった。何となく、何気なく、ぼんやりと「晴れたらいいな」と思って口にしたのだ。もちろん、雨を望んでいる(かもしれない)農家さんを傷つけようなんて、つゆほども思ってなかった。それなのに、もし、相手を傷つけていたとしたら、怒らせていたとしたら・・・
話すことは、言葉を選ぶことは、とても怖いことなんだと思った、と。

思いやりをもって話しているか

未熟な私に、先輩が示したかったのは「思いやりをもって話しているかどうか」と言うことだったんだろうと、今は、思う。その上で、お叱りを受ける覚悟も持って、カメラの前に立っているのかどうかを、私に教えたかったんだと思う。

今ほどしっかりと、先輩のことばの「裏」まで、当時の私は理解できなかったけれど、とにかく、それまで以上に、キチンと考えて発言することを心がけるようになった。それでも上手くいかないことも多くて、誤解されたり、お叱りのはがきや手紙を頂いたりもした。

それに、「考えて、話す」のではまだまだ足りなくて、「感じて、話す」ことができていたら、もう少し、行き違いも少なかったかもしれないなぁと、これも、今ならわかる。

「ことば」は「こと刃」にもなる

子ども達には、こんな風に説明する。

「極端な話だとは思うよ。だけど、もしも?って思うことが大事なんだよ。『ことば』は時に『こと刃』という凶器になってしまうことがあるんだよね。そうなってないか?って、考えること、そして、一旦、心のフィルターを通すことが、出来たらいいね」と。

楽しく学んだあとの「こと刃」は、少し刺激も強いかもしれないけれど、大事なことなので、先生にも説明した上で、話すようにしている。

子ども達からの感想にも「こと刃」に触れる子も多く、私の失敗経験が、少しはお役に立てているとしたら、失敗した甲斐もあると言えるかな。そして、子どもに語りながら、私は自分にも戒めの気持ちで語り続けている。「ことば」は意図せずとも「こと刃」になることもあるんだと。

「ただ、置くだけ」

「ことばは届けるのではなく、ただ置くだけでいい」
そう教えてくれたのは、大久保寛司さんだ。「寛司さんの言葉は、なぜそんなに伝わるんですか?」という私の質問に、答えてくださった。ただ置いて、相手が掴むのを待てばいい。無理やり押し付けても、相手の奥には届かない。自分で掴んだ「ことば」は、必ず、その人のものになるから。

「ただ、置くだけ」って、勇気と優しさがないと、難しいなぁと思う。掴んでくれなかったとしても相手をゆるせるか、責めずにいられるか。掴んでくれるかどうかもわからないのに、ことばを置けるか。見て見ぬふりを決め込む方が楽じゃないか・・・。

相変わらず未熟な私は、いまだに、葛藤したり、反省してばかりだ。それでも「相手を傷つけたくない、できるなら、温めたい」と言う気持ちだけは持っていたいと思う。

結局、答えは?

人の心を「ことば」だけでコントロールすることは、難しいということなら話せるかな。そして「ことば」に相手への「想いや気持ち」をのせることを、あきらめたくないということも。

そうしておかれた「ことば」は、相手にも多少は、掴んでもらいやすいんじゃないかな、そうだったらいいな。

うーん、答えになっているかな?どうだろう?
わからないけれど、当日まで、まだ時間があるので、もう少し、深ぼってみよう。


今日の一日1noteも、思いがけず時間がかかってしまった。トレーニングの先に、刃物出現率も低くなるかもしれないからさ、練習し続けよう。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?