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『ダンキラ!!!』椿聖人の謎が知りたい。コーヒー、脚、宇宙などの要素を結びつけるのは?

5月12日は少年ダンサー育成ゲーム『ダンキラ!!! - Boys, be DANCING! -』に登場する椿聖人の誕生日。
所属チームはジャズダンスを得意とするシアターベルで、高校生ながら大人っぽい魅力に満ちている。

しかし知れば知るほど謎が深まる人物であることもたしか。

寮長で温泉&オカルト好きでコーヒーにこだわりがあり、いつも飴ちゃんを持ち歩いている神出鬼没の脚フェチお兄さんと、特徴を挙げ始めればキリがない。
さらに宇宙に対して並々ならぬ興味を抱いており、宇宙人がいると信じている。

ひとつひとつの要素が独立しているように見えるが、そこは意外と設定が深い『ダンキラ!!!』。なんとかつながりを見出せないだろうか。

そこでヒントにしたのは聖人の名前
清酒としての意味もあるが、宗教における崇拝対象も聖人(せいじん)と呼ばれる。
とくにキリスト教では、教えを忠実に実行した者を聖人として認める場合もあった。

今回は宗教との関連性などに目を向けながら、椿聖人の行動や嗜好に込められた意味合いを考察してみたい。

※このnoteは個人が趣味で書いたものであり、公式等とは一切関係ない。

聖人が好む悪魔の飲み物

まずは聖人の好物であるコーヒー。
今でこそ一般的な飲み物だが、ヨーロッパに伝わってきたばかりの17世紀初めは悪魔の飲み物として警戒されていた。
「悪魔の飲み物」という響きは、オカルト好きの聖人がいかにも好みそうである。

とくにキリスト教は、イスラム教徒に親しまれていたコーヒーを異端視したという。
しかし当時のローマ教皇・クレメンス8世はコーヒーの味にベタ惚れ。
コーヒーに洗礼を施し、キリスト教公認の飲み物として広めていった。

聖人もコーヒーの魅力をわかってもらおうと、ゴールド生たちに自慢の1杯を振る舞うことがある。
残念ながらミルクや砂糖を入れなければ飲めない生徒が多いが、いつか自分と同じようにブラックコーヒーの味を気に入ってくれる人が現れると信じていた。
その様子は、コーヒーを広めようとする宣教師のように見えなくもない。

断食でも口にできた砂糖

聖人が皆に振る舞うのはコーヒーだけではない。常にを持ち歩いており、感謝や賞賛の印に差し出すことも。

飴は日本では古くから親しまれている食べ物で、『日本書紀』にはすでに水飴が登場している。
神への供物や薬として使われていた時代もあり、その経緯は聖人の実家でも取り扱っている酒を連想させる

ヨーロッパに目を向けると、キャンディーの原料である砂糖はやはり薬品として重宝されていた。
砂糖が貴重だったことも理由のひとつだが、食品として扱いたくなかったキリスト教的な事情も含まれている。

イースター前の断食中、キリスト教徒は食べ物や飲み物を一切口にできなかった。
それでも空腹を紛らわすために何かを食べたくなるのが人の性。
では食品でも飲料でもない薬品ならば許されるのではないか、とキリスト教徒が頼りにしたのが砂糖だった。

苦しいときに食べる甘いものはまた格別。
聖人に飴をもらった人々も、どこか救われたような気持ちを抱いたことがあるかもしれない。

イギリスからアメリカへと渡ったコーヒー

特別な存在だった砂糖だが、流通量が多くなると嗜好品や食品としても親しまれるようになる。
とりわけイギリスで砂糖が活躍した代表的な場所がコーヒーハウス
つまり砂糖とコーヒーには歴史的なつながりがあったといえよう。

コーヒーハウスとは、17世紀半ばからイギリスをはじめとするヨーロッパ諸国で広まった社交場だ。

前述したようにクレメンス8世によってコーヒーはキリスト教徒たちに受け入れられたものの、その味は未知のものだった。
しかしコーヒーや紅茶、チョコレートなどの舶来品を提供するコーヒーハウスができると、イギリスを中心にコーヒー文化が広まりはじめる
紅茶に砂糖を入れる文化がヨーロッパで定着したのも、コーヒーハウスがきっかけだったという。

コーヒー代さえ払えば身分に関係なく入場できたコーヒーハウスは、政治・経済・文化などの発展に貢献した。
まるで出自に関係なく実力さえあればダンキラを学ぶことができる紅鶴学園のようだ。

コーヒーがよく飲まれていたイギリスだが、徐々に紅茶の人気が高まり始める。
植民地としていたアメリカにも紅茶は持ち込まれ、イギリス流の文化として根付いていった。

しかし紅茶に高い関税がかけられるようになると、アメリカでは紅茶を避けてコーヒーを飲むようになる
アメリカで紅茶とコーヒーがたもとを分かつきっかけとなったボストン茶会事件はあまりにも有名だ。

その後も戦時中のレーション、禁酒法時代の代替品など、コーヒーはさまざまな形でアメリカ人を支えてきた。
まさにアメリカの象徴的な飲み物といえよう。

ところでコーヒーがアメリカに受け入れられていった過程は、聖人がシアターベルに加入するまでの経緯を思わせる。

とある理由から家族と距離を置き、さまざまなチームの助っ人として活動した末にたどり着いた居場所。
奇しくもそれは、アメリカを象徴する文化・ジャズと関係の深いチームだった。
そう考えると、イギリスに(オカルト的な意味で)あこがれを抱いている聖人が、紅茶よりもコーヒーを好んでいることにも納得がいく。

足に触れるのは模範となるため?

少々話は脱線したが、再び宗教との関係に目を向けてみよう。

次に注目したいのがである。
聖人はことあるごとに脚を観察し、理想の脚に触れたり踏まれたりしたいと語っていた。
なぜそこまで脚にこだわっているのだろうか。

脚、ひいては足になんらかの意味を与えている宗教は多い。
仏教では仏の足裏を刻んだ「仏足石」を拝んでいるし、イスラム教のように脚の本数によって食べてもいい生き物を定めている宗教もある。

注目したいのがキリスト教の儀式、洗足式だ。
最後の晩餐でキリストが弟子たちの足を洗ったエピソードに由来しており、互いを赦しあう意味合いなどが込められているという。
本来は奴隷の仕事だった足を洗う行為を自ら弟子たちに施すことで、キリストは手本を示したのである。

聖人はダンサーとして活動するだけでなく、学内では寮長も務めている。
つまり脚に触れようとする行動には、生徒たちの模範になろうとする意図が込められているのかもしれない。

……いや、やはり単に脚を好んでいるだけのような気もする。

脚への興味は宇宙へと続く

最後に、聖人がなぜ宇宙に興味を抱いているのかを考えてみたい。
(正直に言えば、コーヒー好きから派生して「宇宙人ジョー〇ズ」つながりではないかとも思うが、その考えはいったん端に置いておく。)

以前弟である椿賢人の考察をしたときは、椿と宇宙の関係性に着目してみた。
しかしいまだに不明点は多いので、聖人が好きな脚からもう少し視点を広げて、人体と宇宙の関係を見てみよう。

ミクロコスモスのように、人体はたびたび宇宙に例えられてきた
頭は天、胸は空気、腰は地上、両眼は太陽と月、アダムそのものが小宇宙など、提唱者や宗教によって解釈には違いがあるが、人体と自然、ひいては天体などを結びつけた点は共通している。
つまり人体に興味を持つ聖人が宇宙に興味を持つのは自然な流れ、と考えられなくもない。

ときには身体と十二星座を結びつけることも。
15世紀にフランスで描かれた『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』には「占星人体図」が収録されており、身体のパーツを星座とともに記した。
脚部に該当するのはいて座、やぎ座、みずがめ座、うお座である。

ゴールド生たちの星座を確認してみると、いて座は夜野零士と月光院ノエル、やぎ座は毒島九十九、みずがめ座は紫藤晶と愛宕蓮太郎、そしてうお座に属するのは日向まひる

聖人がとくに理想の脚の持ち主だと思っている蓮太郎は水瓶座
ミクロコスモスの考え方に当てはめると、とくに好きなパーツはふくらはぎだといえるのではないだろうか。

こうしてひとつひとつの要素を紐解いていくと、宗教とのつながりがありそうななさそうな……。
調べれば調べるほどミステリアスな部分が増えていくのも、聖人の魅力なのかもしれない。

さて、これまで約1年間にわたって、ダンサーの誕生日に合わせた考察記事を公開してきた。
定期的な更新は今回で一区切りとなるが、まだまだ奥の深い『ダンキラ!!!』への興味は尽きない。
今後もマイペースに考察を続けていくので、見守っていただけると幸いである。

参考
http://coffee.ajca.or.jp/webmagazine/wonderland/87sekai9
https://www.keycoffee.co.jp/story/culture/history
https://sugar.alic.go.jp/tisiki/ti_0509.htm
https://daimonji.co.jp/fr/9
https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/bsignal/18_vol_179/wagashi/
https://japan.diplo.de/ja-ja/themen/kultur/aschermittwoch/935854
https://www.ejcra.org/column/ca_76.html
http://www.katocoffee.com/agca/library/story06.html
https://www.alic.go.jp/koho/mng01_000148.html
http://www.cdij.org/shikohin/forum/data_12/special_lecture_kawakita.pdf
https://plus.chunichi.co.jp/blog/imai/article/297/9673/
https://www.seigakuin.jp/about/org/chaplain/chaplain_07/
https://kotobank.jp/word/%E4%BB%8F%E8%B6%B3%E7%9F%B3-125206
https://kotobank.jp/word/%E6%B4%97%E8%B6%B3%E6%9C%A8%E6%9B%9C%E6%97%A5-88516
https://kotobank.jp/word/%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%83%A2%E3%82%B9-637465
https://www.jans.or.jp/modules/committee/index.php?content_id=64
https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=19101&file_id=17&file_no=1
https://meiga-louvre.amebaownd.com/posts/7930048/

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