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Watson Orchestrateの機能

はじめに

前回はWatson Orchestrateの登場の背景、コンセプトについてお話しました。さて、今回は、Watson Orchestrateの機能について解説したいと思います。Watson Orchestrateの代表的な機能は以下の通りです。

自然言語の理解

Watson Orchestrateは自然言語を理解してくれます。例えば、「田中さんに見積もりを送付して」などと、あたかも秘書さんにお願いするように仕事を依頼することができます。ここでのポイントは、通常のチャットボットの実装のように、全てのパターンの会話をカバーした巨大な会話フローを定義する必要が無いことです。後ほど説明する”スキル”の定義により、Watson Orchestrateが必要な処理を判断して動的に会話が構成されます。

IDの保持

企業内のIDを持ち、メールやチャットを介してユーザーとやり取りできます。何か頼みたいときは、”Watson Orchatrateさん”に依頼すればOKということです。またWatsonOrchestrateはそのIDを使用して様々なシステムにアクセスします。

様々なインターフェースのサポート

Watson Orchestrateはマルチモーダルなインタラクション、つまり、UI経由だけではなく、メール、Slackのようなチャットツールを介した処理をサポートします。また、ユーザーからの依頼だけではなく、システム上のデータを監視し、更新があったら通知するようなイベント・ベースの動作も可能です。

コンテキストの理解と会話内容の記憶

組織の情報や、会話の内容を記憶します、例えば、「さっきの案件の承認を回しといて」、と頼むと、それまで会話していた案件についての承認を、上司に依頼するような承認フローを回すことができます。こういった人間の会話では当たり前の細かいことが、実際に利用する際の使いやすさに大きくつながります。

"スキル"の呼び出し

”スキル”を動的に配列して実行します。スキルとは、再利用可能な処理の単位で、例えば

・メールを送信する
・SalesForce上の見積もりを更新する
・データを検索してグラフを作る
・承認ワークフローを起動する
・OCRでPDFから必要なテキストを抽出する
・システムにデータを入力するRPAのボットを起動する

といったものがスキルに相当します。これらのスキルを必要に応じて適切な順序で実行します。

Watson Orchestrateは、その名の通り、オーケストレイトを行う製品です。つまり、Watson Orchestrateがオーケストレイトする対象、スキルの品ぞろえが重要になってきます。あらかじめ製品には複数のスキルが同梱されますが、カスタムのスキルを実装することも可能です。

予定では、Watson OrchestrateはCloudPak for Business Automation(以下CP4BA)というIBMの自動化製品の1ファミリーとして登場することになっています。その理由は、Watson Orchestrateが呼び出すスキルを実装するには、OCRやRPA、ワークフローといった様々な機能が必要になってくるからです。CP4BAはまさにそれらの様々な機能が含まれた製品で、様々な処理を実装してWatson Orchestrateから呼び出すことが可能になります。

ローコード/ノーコードによるスキルの組み込み

業務ユーザーがスキルを定義する際に、コーディングを行うことなく、外部の処理を組み込むことができる機能が提供されます。CP4BA上で動作している様々な処理や、Open APIで定義された外部APIなどを、簡単に組み込むことが可能です。通常のチャット・ボットでも、Webhookの機能などを使用すれば外部のAPIを呼び出すことが可能ですが、

  1. チャットボットの会話フローを事前に定義する必要が無い

  2. チャットボトットからの呼び出し機能をノーコードで追加できる

という点が、通常のチャットボットによる実装と大きく異なる点ということになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回はWatson Orchestrateの機能について説明しました。Watson Orchestrateによって、業務ユーザーが自分専用のアシスタントに仕事を依頼するように、スキル、つまり、"自動化の処理"を呼び出すことが可能になります。そして、Watson Orchestrateにはそれを実現するための様々な機能が提供されます。

実際にWatson Orchestrateを活用するには、如何にこの"自動化の処理"の品ぞろえを充実させるかという点が非常に重要になってきます。次回以降、数回に分けて、この”自動化の処理”の例について説明していきたいと思います。


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