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Watson Orchestrateが解決してくれること

はじめに

2021年の5月にIBMはWatson Orchestrateという製品を発表しました。簡単に言うと、自然言語で話かけて仕事を依頼すると、AIが複数の業務処理を組み合わせてよろしくやってくれるという製品です。凄い時代になったなぁと思う一方で、どこまで賢いんだろう? どうやってAIに業務ノウハウを学習させるんだろう? といった疑問が出てきます。この疑問を解決するには、そもそもWatsonOrchestrateが解決しようとしている課題が何か? ということを理解することが重要です。この記事では、Watson Orchestrateの機能の解説ではなく、生まれてきた背景や、解決してくれる課題について説明したいと思います。

現場依存の業務を自動化することの難しさ

これまで、業務の自動化というと、どちらかというと付加価値の低い、大量定型処理に対して適用することをイメージする人がほとんどだったのでないでしょうか?
最近ではAIの普及により、例えば、癌の画像診断といったような高度な専門知識を要するものに対しても自動化の対象が広がってきました。しかしながら、実際の現場で担当者が、その時々で行っているような判断をAIが完全に肩代わりしてくれる時代が来たかと言うと、残念ながらもう少し時間がかかりそうです。

いろいろなお客様と業務の自動化に関する会話をすると、「RPAを適用したいんだけど、現場のノウハウを抽出して標準化するのが難しい」といった悩みをよく聞きます。

その通りなのだと思います。特に、日本の会社は現場のノウハウが大きく、日常の雑多な業務の中で、その場、その場で、柔軟に対応するようなことが求められるものも多くあります。このような業務は自動化することの難易度が高く、無理に標準化、自動化を行うと品質が下がってしまうこともあり、これまで自動化の対象から外れてきました。

(現場の暗黙知をしっかりと形式知化して会社の資産として管理するという考え方もありますが、またそれは別の機会で述べたいと思います。)

あえて判断を人に任せるというアプローチ

現場のノウハウを活用していわばオーダーメイドの対応を行っているような業務を完全に自動化するのは難しいのですが、完全自動化以外のアプローチもあります。それは、現場の優秀な社員に判断を任せ、その社員にアシスタントを付けてあげて負荷をオフロードするというものです。その社員にしかできない付加価値の高い業務に集中してもらうことよって全体のスループットが向上します。Watson Orchestrateはまさにそのアプローチに沿ったものになります。

Watson Orchestrateが解決する課題

Watson Orchestrateは具体的には以下のような課題を解決してくれます。

・システムがたくさんあって、学習コストが高かったり、使用方法を他の人に聞かないと分からない
・業務判断に必要なデータを揃えたり加工するのが大変だ
・システム上のステータス確認を頻繁に行うのが煩わしい

Watson Orchestrateは超高性能なAIにより、そのお客様にどう対応すべきかを適切に判断する、、、という製品ではありません。しかし、システムの使い方を理解して処理を実行したり、データの収集/加工を行ったり、業務システム上のデータを監視し、変更があったら通知を送ることが可能なのです。あくまでも重要な判断は人が行います。そしてその上で実行が必要な様々な処理をWatson Orchestrateが効率よく支援してくれるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?業務現場で日常的に行われている日常の”雑多な処理”には多数のノウハウが含まれています。そしてその”雑多な処理”をすべてシステムに落とし込むには多大な労力が必要です。Watson Orchestrateはこれまで自動化の対象外であった”雑多な処理”をAIによって支援する新しいソリューションになります。

業務ノウハウの標準化、自動化で悩んでいる人は、少し視点を変えて、「高度な業務ノウハウを持つ社員を如何にサポートできるか」という観点で業務の効率化を検討してみるとまた違ったものが見えてくるかもしれません。

次回は、Waton Orchestrateの持つ具体的な機能について説明したいと思います。


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