クレオパトラ第0回単独公演 「産声シャンデリア」公演台本

クレオパトラ単独公演
「産声シャンデリア」

　　　　　　　　脚本・演出　長谷川　優貴
　　　　　　　　構成　クレオパトラ

2014年の銀座博品館の単独から2年ぶりの単独公演。所属事務所を辞めフリーとして初ということで0回公演と題し、生まれ変わりを題材とした。暗転ナシのぶっ続けで一度もはけず、音楽は全て生演奏という新しいスタイルのクレオパトラを披露した。

2016.11.12 渋谷＠spaceEDGE

照明：渡辺敬之

演奏：大原巧(タムダイ)・小金丸慧・壷阪健登

※本当に稽古に使っていた公演台本なのでアドリブの個所とかは箇条書きになっていたりします。ご了承ください。

【客入れ状態】
Ｍ—客入れ曲
Ｌ—【客電明転】
※ 開演時間になりましたら
Ｍ—客入れ曲　ＵＰ〜
Ｌ—【客電徐々暗転】

Ｍ—ＦＯ
～プロローグ～
「暗闇」

長谷川、桑原板付き

暗闇の中薄暗い明かりがポツンとある。その下に二人は窮屈そうに立っている。

長谷川：なににででも始まりがあって終わりがある。永遠なんてものはないわけです。終わりが来て零になれば次は１が現れるわけです……聞いてます？
桑原：これ、止まってますよね？
長谷川：そうみたいですね。
桑原：故障、ですかね？
長谷川：故障って言い方はどうかと思いますが。
桑原：（ボタンをタッチするマイムしながら）駄目ですね。
長谷川：駄目って？
桑原：どのボタンも反応しない。非常ボタンもダメですね。
長谷川：ボタンって……。
桑原：あ、携帯は？
長谷川：持ってないでしょ。
桑原：そうか。そうだよな。
長谷川：まあ、落ち着いて。
桑原：いや、よく映画とかであるじゃないですか。エレベーターが突然止まって下にドーン　　　　　ってなるやつ。
長谷川：グレムリン２で見ました。
桑原：僕もグレムリンだな。というかグレムリン以外で見たことないか。
長谷川：確かに。
桑原：映画なんて見るんですね。
長谷川：まあ。

桑原そわそわする。

桑原：そわそわ、そわそわ、そわそわ……。
長谷川：そわそわしてますね。
桑原：よくわかりましたね。
長谷川：はい。わかりやすかったんで。まあ、大丈夫ですよ。
桑原：ずいぶんお気楽ですね！　これからどうなるのかも分からないのに！　僕嫌ですよ。こんな暗闇にずっといるの！　光が見たいですよ！
長谷川：大丈夫だから落ち着きましょ。
桑原：なんで言い切れるんですか！　このまま外に出られない可能性だってあるでしょ！　
長谷川：それは……そうですが……まあ、だから今を楽しみましょうって！
桑原：はあ？　楽しむって、こんな狭い密室空間で何するんですか！
長谷川：う～んっと、おしくらまんじゅう、とか？
桑原：いや、結構です。
長谷川：尻相撲は？
桑原：もっと結構です。
長谷川：人見知りずもうは？
桑原：なんですかそれ？
長谷川：まあ、一度やってみましょうよ。
桑原：はあ……。

※やってみる

桑原：つまらねーわ！　人見知りだから全然はじまらねーじゃん！
長谷川：じゃあ、椅子取りゲームは？
桑原：椅子がありませんよ。
長谷川：じゃあ、意志取りゲームは？
桑原：なんですかそれ？
長谷川：まあやってみましょう。
桑原：はあ。
長谷川：ここから出たいですか？
桑原：なんですか急に？
長谷川：でたいですか？
桑原：出たいですよ。
長谷川：でも出たからと言って楽しいことばかりじゃないですよ。いや辛いことのほうが多いかも。今あなたは目標に向かうことに意固地になっているだけ。そんな自分を肯定するためにマイナスなことに蓋をしている。よく考えてください。本当に出ることが幸せなんですか？
桑原：……そういわれると。
長谷川：はい！　あなたの負け―！
桑原：意志をとるな！！
長谷川：楽しいでしょ？
桑原：楽しくねーよ！　他人事だと思ってバカにしてるんでしょ？
長谷川：い、いやー？
桑原：してるんじゃねーかよ！　ふざけんなよ！
長谷川：ちょっと言いすぎじゃないですか？
桑原：あんたがちゃんとしねーからだろ！
長谷川：なんだ？　喧嘩か？　よしかかって来いよ！
桑原：ああ！　やってやるよ！

長谷川人見知り相撲始める

桑原：人見知り相撲やめろー！　早く外にだしてー！

明るい曲調の中、クレオパトラが客席にお辞儀をする。
OP演出

『会長』

会長・長谷川
若手構成作家・桑原

※場所は会社兼工場の入口入ったロビー

桑原：すごいですね。
長谷川：なにが？
桑原：さっきの入口にあった……。
長谷川：ああ、電気自動車？
桑原：はい。
長谷川：あの形の規格のやつはないから特許出願中。
桑原：普通に道路走れるんですか？
長谷川：国土交通省の許可待ちだから、まだ難しいかな。
桑原：そうなんですか。この会社の主な仕事は……？
長谷川：（食い気味で）エネルギー開発さ！
桑原：はあ。
長谷川：人は様々なエネルギーを使いながら生きている。電力、石油、原子力……しかし、このままいけばエネルギーはそこをつき、奪い合いで戦争がおこる！　だから、私は新たなエネルギーをさがしているんだよ！
桑原：はあ。でも停電になったらここも電気消えちゃうんですね。
長谷川：え？
桑原：いや、独自のエネルギーがあるなら停電してもそのエネルギーでついてそうなもんなのに、消えちゃってるなと思って。
長谷川：この会社の電力は普通に東電からだからね。
桑原：そうなんですね。
長谷川：うちの会社は元々車の部品を作ってるだけだったんだけどね。私の代になってからソーラーパネル事業に手をだして、右肩上がりに業績をあげてるんだよ。
桑原：ソーラーパネル。凄いですね。

沈黙　缶コーヒーを買って渡すマイム

長谷川：こんな夜中に呼び出してごめんね。昼間色々と飛び回っていてこんな時間しか空いてなくてね。
桑原：いや、全然大丈夫です。
長谷川：この前の収録楽しかったよ。あの台本とかを書いてるんだよね？
桑原：僕はまだ駆け出しなんで、台本自体は書いてませんが会議で案を出したりはしています。
長谷川：構成作家さんていうの？　すごいよね。
桑原：まあ、まだまだ食って行けてないんですが……。
長谷川：仕事にしてたらもう作家先生だよ！　すごいよ！
桑原：ありがとうございます（少し照れながら）
長谷川：この前の私の絡みどうだった？
桑原：え？
長谷川：いや、みなさん笑ってたけどどうなのかなって。
桑原：面白かったですよ。
長谷川：高田純次さん私のカラオケで笑ってたもんね。素人としてはどう？
桑原：素人さんであんなにやりきれる人いませんよ。
長谷川：そうなんだ。いや、プロの感覚ってわからないからさ。どうだったのかなって。見てる人のコメントは良かったけどさ。素人のおっさんだからさ。
桑原：よかったと思いますよ。素人さんはあんなに笑い取れませんよ。
長谷川：じゃあ、本題に入ろうか。
桑原：急だな……。で、僕はなにをしたらいいんですか？
長谷川：実は、君に世界を守ってもらいたいんだ。
桑原：へ？　なに言ってるんですか？
長谷川：世界を守れるのは君しかいないのだよ。
桑原：僕ただの作家見習いですよ。
長谷川：私はね、政府に命を狙われているんだ。だから、私の活動のカムフラージュになってほしい。
桑原：政府？　カムフラージュ？　ちょっと言ってる意味がわからないんですけど。
長谷川：さっきも言ったけど、このままいったら世界からエネルギー資源がなくなるんだ。四年後にはエネルギー不足になる。
桑原：僕、良いバイトがあるって言われたから来ただけなんですけど……。
長谷川：そこで私は、ある資源に目をつけた。
桑原：聞いてますか？
長谷川：その資源とは「かさぶた」です！
桑原：かさぶた？
長谷川：そう。かさぶた。血液がかたまり皮膚の形成を回復しようとできる塊。あれこそが新しいエネルギーになるのです。
桑原：かさぶたなんて集めるの大変でしょう！
長谷川：（瓶を持つマイム）この瓶を見てください。
桑原：うわ！　ぎっしりとかさぶたが！
長谷川：今のところ２００本完成しています。
桑原：どうやって集めたんですか！
長谷川：高架下行って万札ちらつかせれば一発ですよ。
桑原：はあ？
長谷川：アスファルトや砂利の上で何回も転ぶだけで五時間１０万。
桑原：なにやらせてるんですか！
長谷川：ビックイシュー売る方が１００倍難しいと言っていたよ。
桑原：なんとも言えませんが……で、僕のバイトってなんですか？　まさか、砂利の上で転べとか言いませんよね？
長谷川：だから先ほどもいただろ？　君には僕のカムフラージュになってもらう。
桑原：どういうことですか？
長谷川：かさぶたがエネルギーになると国民が知ってしまったら、エネルギー産業は大変なことになる。何故ならお金を払わなくても自分でエネルギーが作れるようになり誰もエネルギーにお金を落とさなくなるからだ。こんな計画をを政府が知ったらどうなる？
桑原：さあ？
長谷川：私は殺されるよ。
桑原：またまた！　大袈裟な。
長谷川：なんなら、もう狙われている。命かけてやってるんだよ！
桑原：急に大声を……。
長谷川：で、政府の目をそらすために僕のもう一つの人格を考えた。
桑原：人格？
長谷川：正義のヒーローかさぶたマンだ！
桑原：なに言ってるんですか？
長谷川：私がヒーローの恰好をして、ふざけていたら政府はどう思う？
桑原：さあ……
長谷川：ああこいつは頭おかしいんだな放っておこうってなるんだよ。
桑原：はあ……それがカムフラージュ？
長谷川：そう！　で、君にはかさぶたマンの台本を考えてほしい！
桑原：台本ってお芝居か何かをするんですか？
長谷川：YouTubeに動画をアップするんだよ。
桑原：YouTube？　どんな内容をですか？
長谷川：それを考えてほしくて作家先生を呼んだんじゃないですかー！　ほら、考えて！　ほら！
桑原：いや、情報なさすぎますって！
長谷川：なんかクスッと笑えるやつが良いな。
桑原：んー笑えるやつ……。
長谷川：とりあえずこれわたしておくよ（紙を渡すマイム）
桑原：なんですかこの封筒？
長谷川：今日のギャラ。
桑原：ギャラって！　まだ何もしてませんし、今日は打ち合わせだけじゃないんですか？
長谷川：打ち合わせとか関係なく来たらギャラはでるよ。
桑原：（封筒の中身を見るマイム）え？　五万も！？
長谷川：ほら、面白いのちょうだい！
桑原：いきなり重圧が……五万の働きをしないと……。
長谷川：じゃあ、とりあえず作家先生のコメント撮りをするってのはどうかな？
桑原：え？　僕も出るんですか？
長谷川：最初に作家先生が謎に包まれたヒーローかさぶたマンに迫るドキュメントを撮ったので観てくださいというコメントをするところから始めましょう！
桑原：ドキュメントなんですね……内容決まってんじゃねーか……。
長谷川：もう、作家大先生がプロデュースした動画がYouTubeで流れるってプレスリリースもしちゃったから。明日にはほとんどのネットニュースに載るから。
桑原：もう逃げられない……。
長谷川：じゃあ、撮るよー。ほら、作家先生…いや、監督！
桑原：……はあ。（渋々座る）
長谷川：はい！　３，２，１！
桑原：どうも初めまして。作家の丸山です。私は今回なんとあの謎のヒーローかさぶたマンの正体に迫ることができました。
長谷川カンペを見せるマイム。

桑原：（ちらっと見て）僕の監修するかさぶたマンのドキュメンタリーに乞うご期待！　…どうですか？
長谷川：いいね！
桑原：作家先生って書いたカンペを何回も出してきたけどなんだったんだよ…もうこえーよ。
長谷川：じゃあ、撮り始めようか？
桑原：もうですか？
長谷川：さ、どんなのがいい？　作家先生！　面白いのお願いします！　ほら！
桑原：急なんだよな……じゃあ、○○みたいなのはどうですか？
長谷川：（真顔）うーん。いいね。じゃあさ、こんなのはどう？　私がパンツ一枚になってロビーをごろごろ転がるみたいな。
桑原：はあ……それはどういう意味が…
長谷川：さっ、撮っちゃおう！

※これの繰り返し

・食堂
・リフト
・かくれんぼ

長谷川：はい。じゃあ今日はここまで。また連絡します。
桑原：はあ……。
長谷川：あと、かさぶたマンのふりして毎日ブログを更新してくれないかな？
桑原：え？
長谷川：１日２千円出すから。よろしくね。
桑原：怖い…

『ひきこもり』

少年・長谷川
謎の男・桑原

※場所は、少年の家の二階の少年の部屋。

長谷川：そう。怖いよ。心のかさぶたが取れないって感じ。
桑原：そうですか……。
長谷川：で、あなたはなに？
桑原：私は、学校の裏門の横の空き地にあるポプラの木の陰から、フェンスを越え校内に侵入しました。久しぶりに入ったグラウンドは狭く感じました。今でも、子供たちの声が聞こえてきそうだ。そして、懐かしさを惜しまなくなるくらい校内を徘徊した私は、学校から近くにある生徒の家に向かったのです。
長谷川：それでここに……。
桑原：そうです。おひさしぶりですね。
長谷川：なんなんですか？
桑原：あなたがまだ学校に通っていたいたころに用務員をやっていた男です。
長谷川：それがどうして？
桑原：懐かしくてきました。
長谷川：迷惑です。
桑原：そうでしょう。そうでしょう。
長谷川：わかっているなら帰ってください。突然人の家に入ってくるなんてどうかしてますよ。
桑原：生憎の雨ですから。
長谷川：降ってませんよ。
桑原：そうでしょう。そうでしょう。
長谷川：警察呼びますよ。
桑原：どなたですか？
長谷川：警察です。
桑原：お名前は？
長谷川：知りませんよ。
桑原：知らない方を家にお呼びになるなんて危ないですよ。
長谷川：今がその状況です。
桑原：ふんふん！（手をぶらぶらする）
長谷川：怖い。
桑原：トキオの松岡さんの髪の毛は盆栽だって知ってましたか？
長谷川：出てってください。
桑原：薬丸を名前を見ると正露丸を思い出します。
長谷川：出て行ってください。。
桑原：はなまるマーケットないと金銭的にきついなー。
長谷川：薬丸の心の声は聴きたくありません。出て行ってください。
桑原：私はゲイです。
長谷川：どうしてこのタイミングで告白を？
桑原：小さいころのあなたを見ていて欲情して。数年経った今でも忘れられずあなたを強姦しにきました。だから怪しいものではございません。
長谷川：こう見えて私恐怖で失禁しております。じゃあ、この停電もあんたが？
桑原：停電はただの停電です。
長谷川：ならよかった……ってよくねーよ！
桑原：ずっと見てました。なぜ君みたいな素敵な少年がひきこもりに？
長谷川：……変態には関係ないだろ！
桑原：ふっ……変態か。（座ろうとする）
長谷川：なにくつろごうとしてるんだよ！出てけよ！
桑原：そんなこと言って久々に人と話せて楽しいんじゃないか？
長谷川：……。
桑原：私は君のことをひきこもりなんて呼ばないよ。私たちは友達さ。
長谷川：うるせー！　もう力ずくで出て行かせる！
桑原：ひきこもり風情になにができる！
長谷川：さっそく呼んでんじゃねーか！
桑原：やめろ！　私は弓道をたしなんでいる！
長谷川：弓持ってないじゃんぇかよ！
桑原：だからどうしたー！
長谷川：思った以上にやばいぞこいつ！

桑原テーブルに目をやる。

桑原：あ、またファミマの幕の内弁当ですか……。
長谷川：…別にいいだろ！　ていうかなんで毎日食べてるの知ってるんだよ！
桑原：毎日見てたからね。
長谷川：かあさーん！
桑原：おかあさんは八百屋のおやじとラブホテルにいるよ。
長谷川：はあ？　適当なこと言うなよ！
桑原：嘘ではないよ。毎日見ていたからね。
長谷川：説得力がある……。
桑原：（弁当を捨てようとする）
長谷川：なにしてるんですか！　僕の幕の内弁当ですよ！
桑原：栄養不足になるぞ！
長谷川：俺はなにも考えたくないんだよ。何食べるか考えるのも面倒なんだ。俺は、幕の内弁当のことを思考停止弁当とよんでいる。俺は毎日これで十分だ。
桑原：野菜も取った方がいいよー。
長谷川：変態に身体を気遣われたくはない。
桑原：変態でも身体のことは気を使うよ。あなたも食のバランス考えて。
長谷川：…メンドクサイ
桑原：「…めんどくさい」じゃないわよ。お肌とか荒れちゃうわよ。
長谷川：なんでおねぇみたくなったんだよ。
桑原：少年に性的興奮を覚えるんだから、おねえ言葉使っても不思議ではないだろ？
長谷川：確かに……確かにじゃねーよ！　こえーよ！
桑原：もうしょうがないわねぇ…（股間に手を入れる）
長谷川：なにしてんだよ！？
桑原：え？　私の育てたひじきとキノコを食べてもらおうかと……。
長谷川：下世話！　でてってくれよ！
桑原：日陰で湿っているからよくきのこが育つ。軸になる木の根元にキノコは生えるんだよ。
日があたらないのに育つなんてたくましいよ。同じく日陰で暮らしているのに引きこもりの君とは大違いだね。
長谷川：うるせー！　キノコ生えてるなんて嘘だろ！
桑原：だったら見てみるかい？
長谷川：ああ！　見せてみろよ！
桑原：どうぞ見てください。（仁王立ち）
長谷川：（膝をつき見ようとして）……あぶねー！　むこう側に行くところだった！！

桑原指を鳴らし悔しがる

長谷川：マジで警察呼ぶぞ！
桑原：今警察の話してないでしょ！　今はアナタの体のこと心配してるの…あんたねぇ、そ
の体あんただけのじゃないのよ？　わかってんの？　まったく！
長谷川：僕が体壊そうと怪我しようと勝手だろ？
桑原：違う！　心配してる人間はたくさんいる！　少なくとも私は君が死んだら悲しい。
長谷川：……はじめて人に必要とされたかもしれない。
桑原：少年…。
長谷川：変態…

抱き合おうとして

長谷川：とはならい！　何故なら知らない変態に悲しまれても嬉しくなから！　さあ帰れ！

桑原ナイフを出すマイム

長谷川：包丁！？　やっぱりやばいやつじゃねーか！　最悪だよ！
桑原：いつ死んでもいいみたいなこと言っていたのに死にたくないのかい？
長谷川：……それは。
桑原：（ドッキリっぽい音口ずさみ）なーんてね！　
長谷川：え？
桑原：実は私は元用務員の変態じゃなくていつもフェンス越しに校内をの
ぞいていたただの無職の変態でしたー！
長谷川：……ドッキリだったみたいな言い方したけど、状況はまったく変わっていない…。

「コンビニ」
※場所はコンビニの中

舞台は個人経営の商店、北村マートの休憩室兼事務室。休憩用の机といす、アルバイト用のロッカーがある。出入り口は二つ。一方は店舗、もう一方は北村夫妻の住まい及び勝手口につながっている。

桑原・北村店長（５６）　長谷川・まなみさん（４１）女性

桑原ブレイカーをさがしている。

長谷川登場

長谷川　　　お疲れ様でーす。
桑原　　　　（ブレイカー探しながら振り向き）あ、おつかれ様！　まなみさん今日は早　　
いね。
長谷川　　　早く来ちゃ悪いんですか？　セクハラですよ。というか深夜のバイトなのにはやいってなんか変ですよね。だって夜中的には遅い時間なわけで（変な笑い方をする）
桑原　　　　は、はあ。
長谷川　　　で、店長は今なにをしているんですか？　万引きですか？
桑原　　　　自分の店で万引きはせんだろ。いや、急に電気が消えてしまったんでね。ブレイカーをさがしててね。
長谷川　　　この町全体が停電してるみたいなんでブレイカーは関係ありませんよ。きっと。
桑原　　　　そうなのかい？　どうしよう。食品が傷んでしまうよ。
長谷川　　　コンビニには停電とか災害時用に自家発電の機能があるって聞いたことありますよ。確か。昔に。
桑原　　　　コンビニといってもチェーンでもなんでもない個人経営の商店だからね。
長谷川　　　切な。
桑原　　　　まあ、それでもこの町の人は喜んでくれてるから。
長谷川　　　他がないから来てるだけだと思いますけどね。
桑原　　　　相変わらず、まなみさんは厳しいなー。
長谷川　　　で、今日は営業どうするんですか？
桑原　　　　まあ、誰か来るかもだし一応開けておこうか。
長谷川　　　はーい。

沈黙

携帯をいじる長谷川

桑原　　　　そっか停電していても携帯は使えるのか。
長谷川　　　充電なくなったらおしまいですけどね。
桑原　　　　そっか……いつも携帯みてるけどゲームでもしてるのかい？
長谷川睨む
桑原　　　　ごめんごめん！　プライベートなことだものね。
長谷川　　　Twitterです。相棒の情報とか二次創作とかをチェックしてるんです。
桑原　　　　ああ、ドラマの相棒が好きだったよね。
長谷川　　　正確に言うと及川みっちーが好きでそこから入りました。
桑原　　　　は、はあ……そうなんだ。
長谷川　　　そうです。
桑原　　　　あれ？　他にも好きな歌手いなかったっけ？
長谷川　　　フミヤです。
桑原　　　　ああ！　あのチェッカーズの！
長谷川　　　フミヤとみっちーのツアーで全国周る為にお金稼いでます。
桑原　　　　結構お金かかるんじゃないかい？
長谷川　　　実家暮らしで一切家にお金入れてないんで大丈夫です。
桑原　　　　自信満々で言うことじゃないけどね。いい歳なんだから少しくらいお金入れた方が良いよ。
長谷川　　　４２歳フリーター未婚。処女。相棒ガチヲタ。細谷まなみ！
桑原　　　　とにかく自信満々なんだよな……。
長谷川　　　これが私の生きる道ですから！
桑原　　　　でも、コンサートとかで東京によく行くなら東京に住んじゃえばいいんじゃないかい？　東京に比べたらド田舎だからね。この町は。
長谷川　　　東京って言ってもピンきりですよ。
桑原　　　　どういうことだい？
長谷川　　　コンサートは横浜とかが多いので。東京ではあまりないんですよ。
桑原　　　　でも、よく東京ディズニーランド行ってるじゃない。
長谷川　　　まあ、年パス持ってますから週１では行ってますけど。あそこは千葉なんで。
桑原　　　　ああ、そうか。

長谷川なにかを読みだす。

桑原　　　　なにしてるの？
長谷川　　　御朱印帳見てるんです。
桑原　　　　あの神社に行くと印書いてくれるやつ？
長谷川　　　そうです。日本中のほとんどの神社まわりましたよ。
桑原　　　　すごいね！
長谷川　　　私パワースポットでめちゃパワーもらえるタイプなんで！
桑原　　　　は、はあ。

長谷川パワー溜める動き

桑原　　　　凄いよね。趣味たくさんあるね。
長谷川　　　他になにもありませんから。
桑原　　　　なんか深いね……
長谷川　　　着替えてきます。
桑原　　　　はい。

間があって

長谷川沈んだ顔で登場

桑原　　　　どうかしたの？
長谷川　　　ああ、いや、別に
桑原　　　　そう…

間があって

長谷川　　　店長……
桑原　　　　なに？
長谷川　　　……幽霊って信じます？
桑原　　　　え？　なに？
長谷川　　　いや……
桑原　　　　幽霊ねえ……僕は信じないかな。
長谷川　　　じゃあ霊感とかはない感じですか？
桑原　　　　え？　あ、うん。なに？
長谷川　　　羨ましいなあ。
桑原　　　　え？　まなみ君はあるの？
長谷川　　　なにがですか？
桑原　　　　霊感だよ！
長谷川　　　やめましょ。寄ってくる。
桑原　　　　絶対あるじゃん！
長谷川　　　店長……落ち着いて聞いてくださいね。
桑原　　　　え？　なになに！？　こわいこわい！
長谷川　　　実はずっと前から……
桑原　　　　もしかして、私に例が憑りついてるの？
長谷川　　　私に霊が憑りついてます！！
桑原　　　　君に！？　霊感あるなら自分で除霊しなよ！
長谷川　　　ちょっとカラオケ上手いだけでプロのミュージシャンがどうやってレコーディングとかしてるのかわかりますか？
桑原　　　　いや……。
長谷川　　　それと一緒です。
桑原　　　　わかりやすい！　て、こわいよ！　暗いし！　もっと明るい時に言ってよ！
長谷川　　　怪談って暗い部屋でするものじゃないですか。
桑原　　　　そりゃそうだけどさ。で、その霊はどこにいるの？
長谷川　　　（腕をだして）ずっとここに立ってます。
桑原　　　　鷹か！　そんなとこに立ってるの！？　どんなやつなの？
長谷川　　　バスケの選手っぽいです。顔とかはぼやけていてわかりません。
桑原　　　　今キミ、バスケの選手が腕に立ってるの？
長谷川　　　ピボットしてます。
桑原　　　　腕の上で？　これからどうするの？
長谷川　　　別にほっといてもいいかなって。
桑原　　　　え？　ほっとくの？
長谷川　　　別に呪われるようなこともないだろうし。
桑原　　　　腕にずっと乗ってるなら呪われているようなものなんじゃないか？
長谷川　　　たしかに！（笑）
桑原　　　　なにが面白いんだよ……。
長谷川　　　霊媒師呼ぶのも金かかりますしね。
桑原　　　　まあね。
長谷川　　　保険聞かないだろうし。
桑原　　　　そりゃね。
長谷川　　　そんなことに金使うなら。彼氏と旅行にいきますよ。
桑原　　　　え？　彼氏いるの？
長谷川　　　いますよ？
桑原　　　　いないと思ってた。
長谷川　　　私もずっとできないと思ってたんですけどね。ていうかいらないと思ってました。相棒の薄い本があれば十分だし。
桑原　　　　同族だと思ってたのに……孤独死するなかまだと思ってたのに……
長谷川　　　５６歳独身と一緒にしないでくださいよ。
桑原　　　　え？　でもさ！　処女っていってたじゃないか！
長谷川　　　私彼氏とはそういうことしないんですよ。半同棲みたいになってきてますけど、彼氏っていうか相方って感じなんですよね。
桑原　　　　はあ？
長谷川　　　みっちーファンクラブオフ会で知り合って。趣味が合うから一緒にいる感じ。子供も作らないし結婚もしないけどずっと一緒にいようねとは話している感じです。
桑原　　　　独特すぎて私にはわからんよ！　
長谷川　　　店長と違って、私には最後を看取ってくれる人はいるってことですよ。

「通夜」

家の一室。
半通夜も終わり、人気もない。
女が１人、死んだ祖父との最後の夜を過ごしている。
長谷川・父親　　桑原・娘

桑原　　　　ごめんね。長い間帰ってこなくて。最期会えなくて、間に合わなくてごめんな
さい。……ごめんね、おじいちゃん。

長谷川登場

長谷川　　　爺ちゃん最後いい顔してたよ。
桑原　　　　お父さん。
長谷川　　　おじいちゃんはさ、昔から寡黙で。凄く厳しくてさ。写真も嫌うから全く写真残ってなくて。唯一残ってた写真を引き伸ばしたから遺影の画質が酷くて……（苦笑い）
桑原　　　　私の前じゃ、いつも優しかったのに。
長谷川　　　お前が生まれてから変わったんだよ。初孫だったからな。
桑原　　　　……おじいちゃん。
長谷川　　　なんかさ、この停電もじいちゃんのいたずらなんじゃないかなんてかんがえちゃうよな。
桑原　　　　そうね。おじいちゃんいつも真面目な顔しながら人にいたずらしてたものね。私のお尻とか急に触ったりして。でも顔を見ると真面目な顔してて（笑う）
長谷川　　　おじいちゃん最後までおまえの名前呼んでたよ。ゆかり、ゆかりってな。
桑原　　　　おじいちゃーーーーーん（ふさぎこんで泣く）
長谷川　　　（なにかを取ってくる）ゆかり、見てみろ。
桑原　　　　……なにそれ？
長谷川　　　おじいちゃんの遺品だよ。
桑原　　　　え？
長谷川　　　おじいちゃんはさ、物に頓着がなくてさ。だからどんどん持ち物すてちゃうから、なにも私物が残ってなかったんだ。唯一残っていたのがこの段ボール。
桑原　　　　おじいちゃんの形見……。
長谷川　　　なかになにか身に着けられるものがあったら形見として身に着けると良い。きっとおじいちゃんが守ってくれる。
桑原　　　　うん。
長谷川　　　じゃあ、開けるぞ。（ガムテープを剥がすマイム）
桑原　　　　なにが入ってたの？
長谷川　　　これは……ユニフォームだ。
桑原　　　　ユニフォーム？
長谷川　　　おじいちゃん学生時代バスケの選手でさ。全国先発とかに選ばれていたらしいんだよ。

長谷川がユニフォームを見ている間に桑原段ボールに目をやる。

桑原　　　　え？　なにこれ？
長谷川　　　ん？　これは……
二人　　　　エロ本…
長谷川　　　だね……。
桑原　　　　大量の……
長谷川　　　エロ本だね……。

沈黙

長谷川　　　じいちゃんも男だから……ね。
桑原　　　　そ、そうよね。
長谷川　　　ほら、おまえの写真がたくさんだぞ！　やっぱりじいちゃんは孫思いだったんだな。
桑原　　　　……。
長谷川　　　どうした？　また泣いてるのか？
桑原　　　　全部私……
長谷川　　　そうだよ。全部ゆかりだ。
桑原　　　　全部私の胸とお尻…が写ってる。
長谷川　　　え？　ほ……ホントだ。い、いや、たまたまだろ？　これもこれも…。
桑原　　　　おじいちゃん私のことそういう目で？
長谷川　　　いや、まさか！　あ、これはなんだ…あ
桑原　　　　ブラジャー？
長谷川　　　なんでだろうな？　爺ちゃんしてたのかな？　だとしたら形見じゃないか！　身に着けるものあってよかったな！
桑原　　　　それ私のよ……
長谷川　　　え？　これゆかりの？　じいちゃん本物か……でも形見は形見だ！　みにつけたらいいじゃないか！　ああわかってるよ！　お父さん変なこと言ってるのわかってる！　でもなお父さんも寡黙だった実の父親がド変態だったと知って平常心ではいられないんだよ！　
桑原　　　　私が私のブラジャー身に着けたらそれはただの元通りでしょ！　形見でも何でもないわよ！
長谷川　　　じゃあ、写真！　写真を形見に！
桑原　　　　私の写真じゃない！　
長谷川　　　これからはおじいちゃんはずっと天国からお前を見てくれるから！
桑原　　　　いままでもずっと見られてたのよ！　エロイ目で！
長谷川　　　じゃあこれ！　エロ本はどうだ？
桑原　　　　なんで形見でエロ本持たなきゃならないのよ！
長谷川　　　いいだろ！　これだったらお前は関係ないだろ？
桑原　　　　このエロ本はわたしが……
長谷川　　　おまえまさか……（読む）成長したな……。

どんどん変なものが出てくる

桑原　　　　パンドラの箱を開けてしまったんだよ！
長谷川　　　だったら最後に光が出てくるはずだ！

腕時計見つける

桑原　　　　わかった。私この時計おじいちゃんだと思ってつける。
長谷川　　　うん。
桑原　　　　何このボタン？　（シャッター音が鳴り響く）

徐々暗転

「人狼」
※部屋の中

長谷川　　　そう。そういうことです。あなた方の中には、狼にとりつかれている人
がいます！
桑原　　　　もういいって。
長谷川　　　狼に取り憑かれた人、それが人狼です。
桑原　　　　だからもいういいって！
長谷川　　　人狼を生かし続けると、ヤツはどんどん村人を食べていってしまう。怖いでしょ？
桑原　　　　今の状況が怖いよ。
長谷川　　　人狼は昼間は人間、夜は狼の姿になる怪物で、生きている人間に取り憑いてい
ます。友人同士でも安心できません。奴らを葬るには、取り憑かれた人間ごと殺すしかない！
桑原　　　　…なんだこの状況。
長谷川　　　まだはやいよ！　この人狼のアプリで役職を決めるから！
桑原　　　　決めなくていいよ！
長谷川　　　こんなことを言っている村山さんがもしかしたら人狼になるかもしれませんよ！　さあ、全員で話し合いをして、人狼と思われる人を決定してください！
桑原　　　　もういいって！
長谷川　　　えー、最終的に人狼が全滅すれば村人の勝利、村人と人狼が一人ずつ残った場合や、人狼のみが生き残った場合は人狼の勝利となります！
桑原　　　　おい！　聞いてるのかよ！
長谷川　　　その通り。
桑原　　　　なんも言ってねーよ！
長谷川　　　人間の中には特別な能力を持った人間も存在します。彼らの能力をうまく利用して、ゲームを有利に進めてください。人狼か、人間のどちらかが全滅するまでゲームを続けます。
桑原　　　　おまえやべえな。
長谷川　　　それでは始めます。私がゲームマスターを務めさせていただきます。それでは、あなた方の役職を引いてもらいましょう。では、今から後ろを向いていてください。
桑原　　　　え？　うしろ？
長谷川　　　周りのリアクションで、役割を推測されてはいけませんから。
桑原　　　　　…
長谷川　　　では、役職を確認してください。さ、朝になりました。なんと、この村に人狼が潜んでいます。議論をして人狼を探し出し、処刑してください。議論の時間は５分です。スタート！
桑原　　　　議論もなにもねえよ！　お前の他に俺一人しかいないんだからさ！
長谷川　　　議論しなくて大丈夫ですか？
桑原　　　　する必要ねーだろ！　俺の役職市民なんだから！

※人狼のゲームを進めていき、最終的に桑原が自分が人狼なんじゃないかと思い出す。

桑原　　　　このゲーム大人数でやったらおもしろそうだな。

「サラリーマン」

路上
桑原・サラリーマン　長谷川・部下

長谷川　　　ゲームで負けて一気しすぎですって！
桑原　　　　うひゃー飲み過ぎたな！
長谷川　　　大丈夫ですか部長？
桑原　　　　大丈夫ではないよー！
長谷川　　　飲み過ぎですよ。最後のガールズバーいらなかったんだよな。
桑原　　　　飲みすぎてもいいだろ！　毎日毎日頑張って働いてるんだあからよ！
長谷川　　　まあまあこんな時間ですし。良い覚まして家に帰りましょう。
桑原　　　　俺は悲しいよ。
長谷川　　　なにがですか？
桑原　　　　こんなに社会の為に頑張ってきたのにさ。女性社員にはバカにされ……
長谷川　　　知ってたんですか……
桑原　　　　知ってるに決まってるだろ！
長谷川　　　キモすぎて受け付けないは言いすぎですよね！　
桑原　　　　それは知らない！　そんな風に言われてるの？
長谷川　　　これじゃなかったんですか？
桑原　　　　違うよ！　私のおつかれギャグをつまらないって言ってたやつだよ！
長谷川　　　それか！　それはみんな思ってますよ！
桑原　　　　あれはね、つまらないとかそういうんじゃないんだよ！　今日もお疲れ様、明
日も頑張ろうねってねぎらいの儀式だ！
長谷川　　　あれ儀式だったんですか！　だから面白くないんだ！
桑原　　　　うるせー！　そんなお前に今日も一日オツカマキリ！
長谷川　　　やっぱりつまらねーなー。（携帯見る）あ、彼女めっちゃ怒ってるじゃん。すみませんもう大丈夫ですよね？　おっサキです。

　　　　　　　　　桑原１人で歌いだす。

桑原　　　　（大きなため息をつく）

「リリース前」
※場所は、ゲーム会社のデスク。
長谷川、桑原　板付き

椅子２つ

桑原：ああー！！　まだ直らねーのかよ！
長谷川：本当にデータ大丈夫ですかね？
桑原：まあ、バックアップは常にとってあるから大丈夫だろ。
長谷川：でも、明日納期だっていうのになにも作業できませんね。
桑原：ノーパソでできる作業するしかねーな。
長谷川：妄想ゲームの続きしますか？
桑原：しねーよ。つまらなかったし。
長谷川：先輩ロリロリだったじゃないですか。
桑原：ノリノリな。俺ロリロリだったら気持ち悪いだろ。
長谷川：そっか。
桑原：それにな。現実逃避してる場合じゃないんだよ。時間ないんだからさ。夜明けまでに
は仕上げるぞ。
長谷川：停電が終わればの話ですけどね。
桑原：今時停電なんて直ぐに直るだろ。
長谷川：まあ、元々二人じゃ無理ですけどね。
桑原：やるしかないだろ。他の社員はみんな食中毒になっちまったんだから。
長谷川：俺は前々からあの中華料理屋やばいと思ってたんですよ。
桑原：俺もみんながあそこで弁当買うの不思議に思ってたわ。
長谷川：灰皿と食器一緒に洗ってましたよ。蠅いつも飛んでるし。
桑原：まあ、とにかく二人でやるしかないってことだよ。
長谷川：はーい。

パソコン作業を始める二人。

長谷川：スーパ―板前ブラザーズ！　ゲームを始めるならスタートボタンを押してね！
桑原：いいって！　真面目に作業しろって。
長谷川：ゲームを始めるよ！
桑原：無視すんなよ。
長谷川：大変だ―！　悪い板前に光を奪われてしまった！　このままでは世界は闇で覆われてしまう！　はーっはっはっ！　どけ皿洗い！　お、おまえは悪い板前！　私の悪い料理で世界を征服してくれるわ！　大変だこのままでは悪い板前に世界を征服されてしまう！　誰か悪い板前を倒してくれないか！
桑原：悪い料理人ってなんだよ。
長谷川：君は良い板前！　頼む悪い板前を倒してくれ！　私を倒すことができるかな？　とりあえずこいつをさらっていくぞ！　あ！　おかみさん！　私は神楽坂で待っている。悪い食材をいい料理にするんだ！　まかせたぞ！
桑原：全然設定入ってこないんだけど。
長谷川：（はじから動いてくる。クリボーみたいに）たまねぎ、たまねぎ！
桑原：え？　アクションゲームなの？
長谷川：ほら、包丁で切って！
桑原：え？　はい（マイム）
長谷川：オニオンスープ―！（やられて、下がってまた違うキャラでくる）
桑原：クソゲーじゃねーか！

※くりかえす　・パワーアップアイテムやコイン、隠し通路など

長谷川：一面クリアー！
桑原：もういい！　つまらないから！　真面目に作業するぞ！
長谷川：少し楽しんでたじゃないですか！
桑原：少したのしかったわ！　でももういいわ！
長谷川：はーい。

※二人作業を始める

長谷川：そういえば、このゲームのキャチコピーって決まったんですかね？
桑原：はあ？
長谷川：まだ決まってないって言ってたじゃないですか。
桑原：ああ、言ってたなー。
長谷川：僕たちで考えましょうよ。
桑原：いいよ。担当じゃねーし。
長谷川：「『安い、うまい、早い』！」
桑原：考えなくていいから。酷いし。
長谷川：ダメかあ。
桑原：だから考えなくていいから。
長谷川：えー、何だろう……『良いゲームです』とか！
桑原：いい薬ですみたいに言ってんじゃねーよ。もっとプレイした楽しさが伝わってくるやつじゃないとダメだろ。
長谷川：『指が喜びます！』はどうですか！？
桑原：なんだよそれ！　大体指は動かすから！　このゲーム独自なこと言わないと！
長谷川：じゃあ、先輩考えてくださいよ！
桑原：うーん『携帯ゲームの時代に産声をあげた超大作』的な？
長谷川：プレイした時の感じ伝わってこねーじゃねーか！（叩く）
桑原：叩いてんじゃねーよ！　もういいから作業しろ！
長谷川：はーい！

※作業する

長谷川：そういえば先輩の奥さんいつ出産なんですか？　このまえお会いした時結構おなかパンパンでしたよね。
桑原：今日が予定日だよ。
長谷川：直ぐですね。
桑原：そうなんだよ。

沈黙

長谷川：え？　ここにいていいんですか？
桑原：仕事なんだから仕方ないだろ？
長谷川：それはそうですけど。
桑原：仕事優先だ。
長谷川：カッコイイな先輩。

長谷川：スペシャルガチャタイム―！
桑原：もういいって！
長谷川：回してください！
桑原：いいって！
長谷川：回して！
桑原：はい（回す）
長谷川：ゴゴゴゴゴゴ！　キラーん！　森田たけし　ノーマル！
桑原：誰？　これなんのガチャだよ！
長谷川：はい！　回して！
桑原：はい。
長谷川：ゴゴゴゴゴゴ！　キラーん！　森田たけし　ノーマル！
桑原：だから誰なの？
長谷川：ほら！
桑原：はい。
長谷川：ゴゴゴゴゴゴ！　キラーん！　森田たけし　ノーマル！
桑原：おい！　こいつしかでねーじゃねーかよ！
長谷川：はい。
桑原：はい。
長谷川：ゴゴゴゴゴゴ！　キラーん！　森田たけし　ノーマル！
桑原：他のやついねーのかよ！　てゆーかこれなんのガチャなんだよ！　他のやつ当てててーよ！
長谷川：最後のチケットですが使いますか？
桑原：使うよ！　はい！
長谷川：ゴゴゴゴゴゴ！　キラーん！　森田たけし　ノーマル！
桑原：課金させろよ！
長谷川：すみません課金はやってないんですよ。
桑原：他のキャラが気になるよー！　いまのところ森田たけし五枚しか手に入ってねーよ！
長谷川：真面目に作業しましょ。
桑原：おまえが言うんじゃねーよ！

※作業する

桑原：……
５００

コンビニ

１０００　コンビニ？

二回

１０連
なんぱー？
長谷川　SRでる　森田もでる

作業もドル

合成
小林美穂
茂田武もどる

イベント

すく水versionあたる

合成して倖田來未

桑原：もうやめやめ。作業に戻るぞ……ん？（電話に気づきでるマイム）もしもし。え？　ああ！　ホントに？　うん！　どうしよう？　そう仕事。でもお母さんに任せて大丈夫？　うん。そうだよね。パパになるんだよね。うわー。産まれるところみたいよー！うん仕事頑張る。あいつのことよろしくね。はは。さすが母親先輩だね。そりゃそうか俺のことも兄さんのことも生んでるんだもんね。うん。また連絡する。
長谷川：大丈夫ですか？　生まれそうなんですか？
桑原：ああ！　でも仕事が先決だろ？
長谷川：まあ。他に人がいませんしね。
桑原：でも、人生で一度しかないことだよな。でも仕事が先決だろ？
長谷川：まあ、仕事で出産立ち会えない人ってたくさんいますからね。
桑原：……自分の人生も大切だよな。でも、仕事が先決だよな？
長谷川：そうだと思いますよ。
桑原：話進まないよー！！　冒険に出られないよ！
長谷川：気持ちはわかるけど仕事を終わらせましょう。
桑原：まともなことを言っている……わかったよ！　ダッシュで終わらせるぞ！
長谷川：はい！

作業する

桑原：……必ずSRが引けるレジェンドガチャはないのか？
長谷川：もういいでしょ！

「別れ話」

同棲している部屋
桑原・彼氏　長谷川・彼女

桑原　　　　お願い！　考え直してよ！
長谷川　　　無理！
桑原　　　　だって急すぎるじゃん！
長谷川　　　急じゃないわよ！　私はずっと信号出してたはずよ。
桑原　　　　別れたくないよー！　ずっと一緒にいようって言ったんじゃんよ！
長谷川　　　あの時の私はね。でもさ、今の私は違う私だから。
桑原　　　　どういうことだよー！　わかんないよー！
長谷川　　　昨日の私とも違うし、朝が来たら今の私もいなくなる。
桑原　　　　なにいってるかわかんないよ！　
長谷川　　　１日ってさ、人によって長さ違うんだよね。
桑原　　　　なに言ってるんだよ。一緒だよ。みんな！
長谷川　　　変化する人。しない人。なんとなく過ごして１日を一瞬のように感じる人。逆に濃密で１日を１年くらいに感じる人。

　　　　　　長谷川好きなように話す。夕日の話。零の話。

桑原　　　　よくわかんないよ！　ねえ一緒に色々なとこ行ったじゃん！　幸せだったじゃん！
長谷川　　　幸せだったよ。でもだったってなっちゃってるじゃない。だから過去のことなんだよ。　　
桑原　　　　そんなの屁理屈だよ！　
長谷川　　　記憶というものがひどく曖昧で、生まれて今までのことをはっきりと思い出せないんだ。記憶なんてものは実に曖昧……キミの頭の中にあるその「記憶」が、本当にあなたの過去に起きた事実だなんて証明できる？
桑原　　　　は？　証明……？　俺が、自分のこととして覚えてることは、それは……事実じゃん！
長谷川　　　こうやって同棲してたことだってさ、結局数年後には忘れて違う人と付き合ってるんだよ。今の私じゃ想像できない未来がきっと先には待ってるんだ。
桑原　　　　先のことなんてどうでもいいよ！　今好きなんだからそれでいいじゃん！
長谷川　　　今の好きが薄れてきてて、それが消えちゃうのが嫌だから別れようって言ってるの。
桑原　　　　今まだ好きなのに別れるなんて意味わからないよ！　ほら思い出してよ！ よく一緒に映画観に行ったよね！？　楽しかったよね？

「閉店する映画館」
※場所は映画館の中。
　　　　　　桑原・清掃員の男。
　　　　　　長谷川・後輩。

　　　　　　　少しずつ人の足が減り、静かになる
　　　　　　　明転、舞台は今日で閉館した映画館
　　　　　　　二人は掃除をしている

　　　　　　　
長谷川　　　今日は、掃除いいんじゃないですか？
桑原　　　　え？
長谷川　　　だって最後だったんだから、掃除しても意味ないでしょ。
桑原　　　　まあ、文句言わずにやれよ。今日でこの仕事も最後なんだしさ。
長谷川　　　何が悲しくてもう誰も来ない映画館なんか掃除しなきゃならないんだよ……
桑原　　　　誰も来ないから、するんだよ。
長谷川　　　どういうことですか？
桑原　　　　次にこの建て物を使う誰かさんのために、僕たちはここをピッカピカにするんだ。
長谷川　　　何言ってんだよ。ったく。
桑原　　　　ここを買い取った人の、笑顔と、ビックリする顔を想像すると……なんだかワクワクしてこないか？
長谷川　　　別に…
桑原　　　　まあ！なんてキレイな建て物ざんしょ！隅から隅までピッカピカで、まるで……
長谷川　　　取り壊しですよ。
桑原　　　　え？
長谷川　　　このビル老朽化で取り壊しです。だから次の借り手はいません。
桑原　　　　そうなの？
長谷川　　　次はイオンになるって噂です。
桑原　　　　あ、ああ。そうなんだね。じゃあ、尚更今夜中に全部掃除して引き払わないとな。
長谷川　　　え？　どうして？
桑原　　　　そりゃ、映画館だって死ぬ前に風呂入りたいだろ。
長谷川　　　なにいてるんですか？
桑原　　　　うるさい！　とにかく掃除しろ！
長谷川　　　あの、先輩。
桑原　　　　なんだよ。
長谷川　　　さようならのごげんってしったますか？

語源話す

桑原　　　　しっかり働け、ったく。
長谷川　　　はいー。

黙々と掃除する

長谷川　　　あ……先輩。
桑原　　　　なんだ？
長谷川　　　これって、考えようによっては僕たちがここの最後の客ってことになりませ
ん？
桑原　　　　また、何を言い出すかと思ったら……
長谷川　　　だって、僕たちがここを引き払ったら、あとは今のオーナーさんが来て、それ
でもう終わりなんですから。僕たちが経営者以外でここに入った最後の人で
すよ。つまり、僕たちがこの映画館の最後の客ってことに……
桑原　　　　ならない。俺たちは仕事で来てるんだぞ。
長谷川　　　しかも貸し切り！？
桑原　　　　だから違うって！
長谷川　　　なんかテンション上がりますねー
桑原　　　　上がってんのはお前だけだ。それに、停電してるんだから映写機も使えないか
らな。　　
長谷川　　　あ、ていうことは掃除機も使えないじゃないかー！
桑原　　　　尚更テンポアップでいかないとな。

　　　　長谷川、映画のスクリーンを指す
　　　　　　　桑原、スクリーンを見る

桑原　　　　……
長谷川　　　ね。
桑原　　　　ね、って、何も映ってないぞ。
長谷川　　　先輩、何も映ってない映画って見たことあります？
桑原　　　　ないよ、普通。
長谷川　　　ですよね。映画の始まる前とか終わった後ならまあ、あるかもしれないですけど。これは、何も始まらないし、何も終わらない……眠ってる映画なんです。
桑原　　　　まあ潰れた映画館だからな。
長谷川　　　こんなの普通見られないですよ。それが見られるって、僕たちツイてますよね。
桑原　　　　別についてはいないだろ。
長谷川　　　あ。
桑原　　　　今度はなんだよ。
長谷川　　　僕あのシャンデリア好きなんですよね。
桑原　　　　この映画館のシンボルだからな。
長谷川　　　あれもらえないかな？
桑原　　　　家にあんなでかいのあったら邪魔だろ。
長谷川　　　確かに。あ、先輩知ってます？
桑原　　　　はあ？
長谷川　　　人間て生まれてくるときに一番初めにシャンデリアの光を見るらしいんですよ。
桑原　　　　なんだよその話。
長谷川　　　ほら、シャンデリアってもともと聖堂とかに使われていた神聖なものだから。
桑原　　　　なんかよくわかんねーけど黙って手を動かせよ！

『料理』
※場所は、料亭の中。

桑原・味ノ道士郎　長谷川・食山田美巳之助

桑原　　　　だから、こんな田舎やめて都内で開催しようというたんや。ロケーション？ 確かに、こんなに風情のある料亭は都内にはないけどやな。停電になってもうたらロケーションもくそもないで。え？　料理ができた？　うむ。両者料理が揃ったようやな。では、極上のステーキ対決決勝戦。食山田美巳之助対うまうまおの１番。まずは、食山田はんの料理からいただくことにさせてもらうで。
長谷川　　　よろしくお願いいたします。
桑原　　　　（蓋を開けるしぐさ）なんと！　煙の中から出てきたのは花畑や！　どうしてもいろどりにかけてしまうステーキの鉄板の上を彩るこれはなんや？　これ
は……ミックスベジタブルやな！　ごくり……小さく刻まれたニンジンにコーンにグリーンピース彼らの発色が食欲をそそるで！
長谷川　　　さすが天下の料理評論家「味の道士郎」殿。よくミックスベジタブルをお知りで。
桑原　　　　誰でも知っとるやろ……。
長谷川　　　さあ、お食べください。
桑原　　　　言われんでもたべるわ……（食べるマイム）う、うまい！　なんやこれは！？　ひとつひとつの主張がありつつちゃんと調和のとれた味を形成している！
長谷川　　　実は、その使われている野菜は全て同じ農家でとれた野菜なのです。
桑原　　　　同じ農家で？　合点がいったわ！　同じ環境で育てられた野菜やから調和がとれているんやな！
長谷川　　　そう、お笑い芸人が同期の芸人同士だと芸風が少し似ているのと一緒です。
桑原　　　　……あ、ああ。しかも、どの野菜も歯ごたえが良く甘みがある！
長谷川　　　飛騨地方の高冷地野菜なんです。
桑原　　　　岐阜県高山市の飛騨のことやな！　高冷地やさいとはなんや？
長谷川　　　飛騨は夏が涼しく、水も豊富で台風の被害も少ないので野菜の栽培に適した土地です。また、昼夜の気温の差が大きい気候で育つため、普通の野菜より甘さが強く、風味があるのが特徴なのです。
桑原　　　　どおりでうまいわけや！　土地柄が野菜からぷんぷんでとるで！！
長谷川　　　その飛騨の野菜の中でも最高と言われる知る人ぞ知る農家さんがいましてね。そこの方はよそ者には野菜を売らないことで有名なので、半年間通い詰めて口説き落としたんです。
桑原　　　　この料理大会の決定が１年前……その大半を付け合わせの為に使うとはなんという料理バカや！（笑う）　面白くなってきたで！　続いては……このフライドポテトやな……これは、なんとも！　外側の塩気と、中の甘さが口の中で混ざり合い、それだけでなんという深い味わい！
長谷川　　　こちらは、長崎県のジャガイモを使用しました。、長崎は北海道に次ぐ全国有数のじゃがいも産地です。寒冷地の北海道と異なり、温暖の長崎で独自の品種改良と新品種開発が進められ皮が薄くみずみずしいジャガイモはフライドポテトに適しているのです。僕はこのジャガイモをさがすのに２カ月以上費やしました！
桑原　　　　最高や！　自分最高やで！
長谷川　　　いうならば、芸人でも育った出身地によって芸風が違うのと一緒ですね。
桑原　　　　あ、ああ……では、ここでメインであるステーキをいただくことにするで！　
ごっつよだれ出てきたわ！　ゴクリ……どれどれ……（食べるマイム）これ
は！　ものすごいで！　ナイフがなんの抵抗もなく……入らん……堅ッ……
スジ多っ……ぱくり（口に入れる）なやこれは！　肉汁が……全くでてこな
い！　この肉スッカスカや！　この肉スッカスカやで！　なんやこの肉ごっ
いまずいで！　なんでや！？　こんなに付け合わせが美味かったのになんで
や！？
長谷川　　　付け合わせに時間を使いすぎました。
桑原　　　　なんやて！？
長谷川　　　付け合わせに時間を使いすぎて時間がなくなり、今日ここに来る途中に肉のハナマサでタイムセールしていたアメリカ産の肉を買ってきたんですよ。
桑原　　　　あんたアホや！　これステーキ対決やで！
長谷川　　　妥協はしたくなかったので。
桑原　　　　１番肝心なところ妥協してもうてるやん！
長谷川　　　ボケをふやすことに気を取られ過ぎて作品性を失ったネタのようですね。
桑原　　　　あと、さっきから言ってるその例えもやめろや！　ワシ関西人やけどそない
お笑いすきちゃうで！　なんでも芸人に例えるなや！
長谷川　　　最高の飛騨牛を用意する予定だったんですがね……時間が足りなかった。
桑原　　　　アホや！　というか、このミックスベジタブルが飛騨のやつなら肉も行けた
んちゃうか？
長谷川　　　農家に顔を出すだけで精一杯でした。
桑原　　　　いや、少しぐらい顔出せたやろ！
長谷川　　　僕は、１日に１つの予定しか入れたくない人間なんですよ！
桑原　　　　……あかん！　こいつはアカンやつや！　もうええわ。あんたの時間は終いや。うまうまおはんの料理をいただくわ。
長谷川　　　ちょっと待ってください。
桑原　　　　なんや？
長谷川　　　これだけ、話していたのに肉が全く冷めていないと思いませんか？
桑原　　　　え？　確かに！　焼きたてのような温かさや！　なんでや！？
長谷川　　　鉄板ですよ。
桑原　　　　鉄板！？
長谷川　　　広島に伝説の鉄板職人がいましてね。その人にこの勝負の為にわざわざ作ってもらったんですよ。
桑原　　　　すごい！　まったく熱が冷めへん！　まずい肉の熱が全く冷めへんで！　冷めてくれや！　まずい癖に熱々でごっい腹立つわ！
長谷川　　　年に数枚しか作らない頑固な職人さんでね。信頼を得る為に弟子入りして数カ月鉄板づくりのいろはを習いました。
桑原　　　　その時間を肉に費やしたらよかったんやで！　鉄板は熱したらそんなに変わらへんから！　
長谷川　　　妥協したくなかったんですよ。
桑原　　　　くるってるわ！　あんたくるってる！　というか今思ったんやけど、時間なくても最悪肉屋で高級な肉は買えるやろ！　なんでタイムセールのアメリカ産やねん！
長谷川　　　予算が足りなかったんですよ。
桑原　　　　はあ？
長谷川　　　この鉄板に２００万もかけてしまった。この大会で優勝しても賞金１００万。大赤字なんです！　もう一文無しなんですよ！
桑原　　　　こいつ、時間と金にルーズなやつや！
長谷川　　　あと、今月４本大会にでてるんで忙しくて……。
桑原　　　　スケジュール管理下手すぎるやろ！　ちゃんとせえ！
長谷川　　　来た仕事を断ったり妥協するのが嫌なんですよ！
桑原　　　　仕事断らんから妥協するはめになるんや！　自分のキャパ把握せい！　それに、安い肉でも昨日今日で工夫すればなんとか柔らかくしたり肉汁だしたりできたやろ？
長谷川　　　昨日は、このイベントの台本読んで立ち位置とか出はけとかコメントの入れるタイミングとかを把握してました。
桑原　　　　料理に時間使えや！！　立ち位置とかどうでもええねん！
長谷川　　　でも、それだけじゃありませんよ！
桑原　　　　そりゃそうやろ！　料理の準備にも時間使ったやろ！
長谷川　　　Twitterやホームページ、Facebookなどで今日の告知を書くのに時間がかかって！
桑原　　　　なにに時間使っとんねん！
長谷川　　　全部ひとりで更新してるんですよ！
桑原　　　　知らんわ！
長谷川　　　ここの場所をGoogleマップでアップしたりとか大変なんです！
桑原　　　　もうええ！　あんさんの時間は終わりや！

長谷川どく

桑原　　　　　立ち位置しっかりせんでええ！　なんやねんこいつ！　では、気を取り直して。うまうまおはんの料理をいただこうか……ん？　料理はどこや？　はあ？　どういうことや？
長谷川　　　　さすがうまうまおさん！　まさか１年かけてコックスーツを仕立ててくるとは！
桑原　　　　　もうええわ！

「馬の出産」

舞台は、牧場。馬の出産中。

桑原・牧場主（５２）　長谷川・従業員（５２）牧場主と同級生。

長谷川　　　　ほれ！　頑張れ花子！

桑原馬のマネ

長谷川　　　花子もうすぐだぞ！

産まれた感じ

長谷川　　　ほれ、うまくいったぞ。
桑原　　　　なんどやっても馬の出産は緊張するな。
長谷川　　　牧場主のおめぇが緊張してどうすんだよ。
桑原　　　　それもそうだな。でも同級生のおまえがよ、いつも手伝い来てくれっから心強いっぺよ。
長谷川　　　まあ、俺はうまのことよくわかんねぇからよ。一緒にシュミュレーションすることくれーしかできねーけどよ。
桑原　　　　でもよ、俺ばっかり馬の役をしててもよ、あんまり練習にならねーからおめえも馬役をやってくれよ。
長谷川　　　了解。いつ出産が始まってもおかしくねーからな。急ごう。
桑原　　　　おう！

長谷川馬役
○恩返し風
・馬が話だし桑原に感謝を告げる

桑原　　　　て、なんだべこれ！　花子喋っちまってるじゃねーか！
長谷川　　　こういうこともあるかもしんねーべ！
桑原　　　　ちゃんとやってくれよ！

※この感じで何回かやる
○海外に行っちゃう風
○世界の中心で愛を叫ぶ風
○くだん風　予言する
○人類に復讐風
○未来から来た風

桑原　　　　これなんだべ！！　もういい！　逆になるべ！　おらが見本見せるべ！

※全部繋がっていってしまう。

桑原　　　　士郎さんに猟銃借りてくる！
長谷川　　　誰か田吾作を止めろー！

※暗転？　当日リハで要相談。

「エピローグ　産声」
※場所は、プロローグの場面に戻る。

長谷川　　　……あと少し。
桑原　　　　ほんとにあと少しで動くのかよ。
長谷川　　　少しだけ時間ありそうだし
桑原　　　　もう人見知り相撲はやりませんよ！
長谷川　　　ほんとに外に出ていいんですね。
桑原　　　　ああ、もう決めたからな。
長谷川　　　ホントは迷ってるんじゃないですか？
桑原　　　　そんなこと……。
長谷川　　　ない、って言い切れるんですか？
桑原　　　　そう言われると……困る。
長谷川　　　やっぱり。
桑原　　　　確かに、ちょっとは迷ってるよ。本当に正しいのかどうか。
長谷川　　　迷うならやめますか？
桑原　　　　決めたから。
長谷川　　　なにか確信があるんですか？
桑原　　　　分かんない。けど、直感で決めたんだ。
長谷川　　　……直感ねぇ。
桑原　　　　それに、この子が可哀想だしな。
長谷川　　　可哀想？
桑原　　　　そうだよ、せっかくここまで育ったのに。
長谷川　　　ただの肉の器ですけどね。もう引き返す事はできませんが大丈夫ですか？
桑原　　　　ああ。
長谷川　　　そろそろですね。
桑原　　　　なあ、最初にシャンデリアが見えるって本当かな？
長谷川　　　シャンデリア？
桑原　　　　ああ。外に出るときにシャンデリアの光が差し込んでその方向に進むって聞いたことがあって。
長谷川　　　ああ、それはね勘違い。
桑原　　　　勘違い？
長谷川　　　シャンデリアじゃなくて分娩代の上についてるライト。
桑原　　　　分娩代のライト？　ああ確かに薄目で見たら形似てるかも……。
長谷川　　　最後にひとつ、これは絶対に忘れないでください。あなたのの記憶は生まれてまもなく上書きされます。だから声に出すんです。記憶がなくなる前に今の自分というものを次の自分につなげる為に。
桑原　　　　ああ。行ってくる。

※桑原、椅子から飛び降り走り出す。
照明変わる。
音が入りだす。

長谷川　　　ほら！　走って！　勢いが大切ですよ！　光が見えてきた！　走って！　そして、叫ぶんです！　過去になる今を刻んで！
桑原　　　　生きる、生きるんだ！　俺はいる！　俺を照らせ―！　うわーーー！　うわーーーー！　意外と叫びたいことなかったーーーー！　うわーーしかいうことねーーーよーーー！　意外と時間余っちゃったよ―――！　うわーーー！
長谷川　　　うあーーーーー！　俺だって生きたい！　変わりたい！　なんかうまく変われなくて、暗いところに籠って隠れて誰にも見つからないようにしてた！　そしたら自分がどこにいるかもわからなくなってた！　でも僕はもう妥協はしたくない！

「料理」
桑原　　　　だから妥協しないなら肉やろ！　ええねんデザートとか！　え？　この打ち上げ会場をセッティングした？　知らんがな！

長谷川　　　信じてくれ！　今日の僕は変われる！　信じてくれ！

「人狼」
桑原　　　　信じてくれ！　俺は市民なんだって！　もう朝だぞ！　何時間やるんだよ！
じゃあもういいよ人狼で！　いやそこも疑ったらもう終わらないよ！

長谷川　　　誰にだって欠落したところはある！　何もできなかった無駄にした日だって
ある！　でもそれでいいじゃないか！

「通夜」
桑原　　　　そうだれにだってダメなところはあるわよ。おじいちゃんは変態だった。でもさ、私達の思い出の中にいるおじいちゃんだって本物なんじゃないかな？
よし、おじいちゃんが変態だと知った今の私たちを写真に収めておこう。カメラがない？　ここにあるでしょ（腕時計をかざす）

長谷川　　　決めた！　僕は変わる！　過去の自分とさよならするんだ！　

「別れ話」
桑原　　　　別れたくないよ！　マジで！　ずっと一緒にいてよ！　え？　別れないでく
れるの？　やったー！　どうして気持ちが変わったの？

長谷川　　　今日の君のことは好きかもしれないから！　今日の光を！　今の僕に光を！

「映画館」
桑原　　　　凄い！　スクリーンに朝日が差し込んで綺麗だ。そこに俺達の影が……。この
映画館最後の上映作品は俺達ってか？　おい無視すんなよ！

長谷川　　　ついてくんじゃねーよ！　俺はもう未来に進んだんだ！　ついてくるな！
　ついてくるなー！！　どこまでついてくるんだよ！
桑原　　　　まてよー！　外での強姦もいいよね！　

音FO

長谷川　　　変わるから！　ひきこもりやめるから！　もうバランス良い食事とるから！ついてこないでー！　あ！　人が！　すみません……パンツ１枚のおっさんを写真撮影してる！　あっちには全力で謎の歌を歌うサラリーマンが……この町変態だらけかよ！　あ、北村マートが開いてる！

落ち着いた音楽FI

桑原　　　　はあはあ、間に合った？　え？　男の子？　これが俺の子供？　スーパーレアだな。頑張ったな。朝日とともに生まれるなんて規則正しい生活を送る子供になりそうだな。
長谷川　　　助けてください！　あれ？　いない？　いや、さっきまで変なやつが……霊感？　ありませんよ！　ああ、じゃあこのサラダください。え？　あ、ああ、おはようございます。
桑原　　　　（抱えてる子供に）おはよう。

暗転
音楽アップしていく。

暗転の中
長谷川　　　さあ、新たな生命としてあなたは生まれ変わりました！　おめでとうございます！

明転

桑原　　　　馬の方かよ！

Ｌ【暗転】

終演

撮影：藤澤孝代

全編公演映像

感想まとめ

クレオパトラ第0回単独公演「産声シャンデリア」

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