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売上分析⑥|分析深度を高める、一歩先の売上分析パターンを紹介
はじめに
前回まで複数回にわたり売上分析のやり方を体系的にお伝えしてきましたが、分析の標準化と定量評価にフォーカスしたため分析メソッドとしての抜け落ちが多々あります。今回は、売上推移の背景や企業の強みを把握する際に役立つ着眼点や分析パターンについて、図表を用いたケーススタディで、いくつか視覚的にご紹介します。
なお、未読の方は事業理解①|兎にも角にも、まず有価証券報告書の「事業の内容」の項を読もう|長谷川 翔平/フリーアナリスト|noteからの閲覧をオススメします。
BtoB企業でも支店数の推移は確認しよう
飲食やアパレルなどの小売企業、ホテルやフィットネスクラブなど施設運営企業であれば店舗数はIR開示されているケースが多く真っ先に分析するKPIの一つだと思いますが、BtoB企業の場合は見落としがちです。Webサービス企業でそもそも本社以外に拠点がない場合は気にする必要はありませんが、営業拠点など支店を持つ企業の場合は売上高推移の要因分解やアップサイドポテンシャルを推し量るために確認すべき事項となります。
例えば、全国の中小ゼネコンに対して建設現場に必要なハード・ソフト設備を包括的にレンタルするビジネスを手掛けるシーティーエス(4345)の支店展開状況は以下表の通りとなります。
このように整理すると、①過去10年ほどで支店を3倍に拡大しており全国展開の積極化が売上成長を牽引した可能性がある、②逆に言えば既に概ね全国展開できており今後の売上拡大には地域や顧客深耕がカギ、といった推察に繋がります。
【シーティーエスの支店展開状況】
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取引先が把握しにくい場合は有価証券報告書の掛金明細を見よう
全社売上高の10%以上を占める特定顧客がいる場合は有価証券報告書で特定顧客としての開示が義務付けられていますが、それでは取引先の把握に不十分なことが往々にしてあります。その場合は売掛金をはじめとした売上債権の取引先別明細が有価証券報告書で開示されていないか確認しましょう。
住宅・建築関連企業に対しソフトウェアを開発・販売する応用技術(4356)の場合、顧客別売上高の開示では大手取引先として大和ハウス工業(1925)の名前しか確認できませんが、【主な資産及び負債の内容】の項を確認することで、以下表のように多くの取引先企業が明らかとなります。
【応用技術の主な取引先企業(過去分を含む)】
![](https://assets.st-note.com/img/1673838308147-bY15U1H1HS.png?width=1200)
上記例では売上債権側を確認しましたが、仕入債務側を確認することで商流上の上流にあたる企業群が判明する場合もあります。必ず詳細開示があるとは限りませんが、一度目を通してみると理解が捗るかと思います。
ユーザー属性やその変遷をおさえよう
調査対象がBtoC企業の場合は、ユーザー属性(男女、年齢、職業他)を開示しているケースがあります。どのようなユーザーが商品購入・サービス利用しているのか把握するだけでなく、①男女や年齢別の人口など母集団に対してどの程度普及しているのか?②横展開した際の売上拡大ポテンシャルはどの程度あるのか?など、考えを発展させるのにも有用です。
例えば、フィットネスジム・スイミングスクール等を展開するセントラルスポーツ(4801)は年齢別の会員構成比を以下のように過去20年にわたり開示しております。
【セントラルスポーツのフィットネス会員の年齢別構成比の推移】
![](https://assets.st-note.com/img/1673838363141-CyR60sUrJ5.png)
2000年代初頭は20-30代を中心に幅広い年齢層を顧客層としておりましたが、ユーザーの経年もあり足元は50歳以上が7割弱となっていると分かります。また、顧客の高齢化と共にライフタイムバリューが低下しており、若年層の取り込みが持続的成長の一つのポイントではないか?といった推察に繋がります。
このように、超長期で企業動向を把握すると新たな発見に繋がりますので、可能な限り開示情報を遡って確認してみることをオススメします。
顧客満足度など外部調査を参考にしてみよう
業界や競合分析を通じて調査対象企業が何かしら固有の優位性を保持していそうだと分かっても、その背景(強み)を推察するのは容易でないケースが多いです。特に、マーケットの占有度や価格優位性など、分かりやすい定量データで横比較した際に違いが見受けられなければ戸惑ってしまうかもしれません。そんな時は、顧客満足度など外部調査や機関がどのように評価しているか確認することが、解の一つになるケースが多々あります。
例えば、中高齢層の女性向けフィットネスクラブをFC展開するカーブスホールディングス(7085)は、以下の通り7年連続でフィットネス部門の顧客満足度1位に輝いており、その丁寧な接客力がエンドユーザーに相応に評価されていると分かります。
【フィットネス部門の顧客満足度ランキングの推移】
![](https://assets.st-note.com/img/1673838416677-2iDHwjbeBq.png?width=1200)
おわりに
売上分析やその背景の把握に有用な分析パターンは数多く、上記はほんの一部に過ぎません。今後も期を見てご紹介していければと思います。次回は、損益計算書の一番上から少し目を落として、売上原価や販管費を含む収益性分析の仕方についてご紹介します。
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