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出汁を取る  3月22日

山梨から夫の友人たちがやって来た。
今回は遊びではなく、夫の仕事のからみで。
どうやら原木シイタケが云々かんぬん?とのことらしいが、
詳しくはよくわからない。夫の本業は注文住宅をつくる会社のはずだが、
住宅=暮らしをつくる上で派生することは幅広い。ということか??
なんだかまぁ面白くなりそうなので、第三者は無責任に
話を聞いて楽しんでいる。

そんなこんなで、夫が最近買い込んで読んでいる本は
山関係、シイタケ関係など、今何に関心を持っているかが
見てすぐにわかるものばかり。
それが気づくと、グラデーションのように
移り変わっていくのだが、今のところは原木シイタケということだ。
ふぅんと、すっかり他人事で話をきいていたら、

「ちえさんは今何に関心があるんですか?」と、N君。
そう話を振られて、ポンと言葉がすぐに出てこなかった。

あぁ。私の今の関心事って何だろう?
昨年は庭のあの辺りに顔を出していたフキノトウがまだ出てこないなぁとか。うちの梅の花はいつ咲くのだろうとか。滝桜の開花時期は4月に入ってからかなとか。どれも人に言う程のことでもないし、
いわゆるハマる、掘り下げていることは一体何だろう?
あ、そうそう。くどうれいんさんの本が面白くて、立て続けに読んでいるといえばそうなのだが、学ぶというのとも違うし、何かもっと他にないだろうか? 私がそうして思考を泳がせているうちに、みんなの話題は
次へと進んでいた。が、私はまだそのことについて思いを巡らしていた。

あえて考えて、「あぁ」と思い当たるのは出汁をとることかもしれない。
何もていねいな暮らしをしたいとかそういうことではない。
水2リットルに対しての昆布の大きさ、本枯節のグラム数と、全てかっちり量って出汁をとる。料理でも何でも普段はたいてい分量など量っていない。それを昆布を戻す時間やアクの取り方、鰹節を入れるタイミングや漉し方など、すべてレシピにならってなるべく忠実にやってみる。
それはたまたま手にした「暮しの手帖」に載っていた出汁の取り方で、
本の通りにやってみたら、「おぉ」と声が出るほど美味しかったのだ。
そのことがきっかけで、ほんの少し余裕があって気が向いたときだけ
まとめて出汁を取り、小分けにして冷凍をしている。
この「気が向いたときだけ」ということも私にとっては大きなポイント。
義務になってしまうとたぶん続かない。
何より「おぉ」というほどの美味しさを知ってしまったことが、
私を動かしてくれている。掘り下げているわけでもなく、ただただ、
焦らず、何もはしょらずに行えば、大きな手柄を得られるような感覚。
そのことだけに集中しているのも、余計なことを考えずに済んでいる
からか、頭の中が静かになって心地良い。
手軽な出汁パックもいいけれど、「おぉ」とはなかなかいかないだろう。

と、結局思い当たったことと言っても「食」のこと。
やはり私の関心事は、日々の生活の中にある。

3月22日(金)晴れ 最高気温7℃最低気温ー2℃ 
午前中に用事があって自転車で出かけたが、油断をして手袋を忘れ、
寒さにおののく。