三島由紀夫が「奔馬」の装幀に選んだ書について思うこと。
昨日、勤務先の講義に、ゲストを迎えた。先端芸術表現専攻の一期生で、ベルリンで書家として活躍する皆川知子さんです。
甲骨文字から書体が変化していくデモンストレーションもあり、充実した講義だったのですが、皆川さんがベルリンの剣道の道場のために、太刀の技を一枚の紙に、四十種類書いた作品が話題になった。
武道の道場の緊張感が伝わってくる作品を観て、私が思い出したのは、三島由紀夫の『豊饒の海』第二巻「奔馬」のカヴァーを飾った書のことだった。神風連の加屋霽堅が残した書で、私の思い込みもあるのだけれど、どこか死を賭した人間の迫力が伝わってくる。加屋の書は上手いとはいえない。けれど、切迫した熱情が人を打つ。
書だけにいえることではない。どんな表現も、上手いとか下手とかは、観る人が感動するかどうかには、あまり関係ないのだと教えてくれる。むしろ技術があるために、感動を呼び起こす力を失ってしまうことさえありますね。
フェイクスブックのよさは、こうしたやりとりが、かつての若い友人と出来ることにある。皆川さんがベルリンのユニクロで、書をデザインした作品を販売したことも、フェイクスブックで読んだ。そんなこともあって、今回、来日した機会に大学に来てくれる機会が生まれた。
毎日を楽しく喜びながら過ごしたいと思っています。
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長谷部浩のノート お芝居と劇評とその周辺
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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。