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『ライカムで待っとく』。沖縄の現在と過去が交錯する秀作。

人間は、同情によって、優越感を得る。

 KAATで再演された『ライカムで待っとく』(兼島拓也作 田中麻衣子演出)は、だれの心にも眠っている差別意識をあぶりだしている。

 この物語は、一九六四年の八月、普天間の飲食街で米兵ふたりと沖縄の青年四人が乱闘した事件を起点としている。米兵ひとりが死亡、ひとりが重傷を負った。青年たちは、傷害致死罪で米国民政府裁判所で裁かれた。

 裁判の審理も劇中に織り込まれるが、この舞台はドキュメントに終わらない。神奈川から引っ越してきた雑誌記者浅野とその妻知華が、この事件の当事者だった知華の祖父をユタの力を借りて呼び出すところから、過去と現在が交錯する。
 この舞台がすぐれている理由は、まず、兼島の劇作が、実にしなやかで美しい言葉で書かれているところにある。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。