見出し画像

【劇評201】海老蔵一年ぶりの演舞場公演。『毛抜』で家の藝を大らかに勤める。

 昨年の春、三か月の團十郎襲名興行が予定されていた。
 演劇界のだれもが今回のコロナ渦では、甚大な影響を受けているが、襲名が延期になってしまった海老蔵の心中を思うと実に切ないものがある。二○二○年のオリンピックに出場予定だったアスリートと海老蔵は、運命を狂わされたといっても過言ではない。さぞ無念だろう。

 昨年一月に同じ新橋演舞場で座頭を勤めた『新春歌舞伎公演』から一年。東京での公演は久し振りで、どのような狂言建てになるか期待された。

 これまでの座頭公演で取り上げてきた沢潟屋系の通し狂言や宙乗りは、現在の状況ではおそらくオペレーションが難しいのだろう。
 朝幕に右團次を中心とした『春調娘七種(はるしらべむすめななくさ)』を置き、歌舞伎十八番から父團十郎ゆずりの『毛抜』を出し、成田屋の将来を担う、勸玄、ぼたんの踊りを上下で打ち出す。

 ムリをせずに、できる最大限の効果を狙っている。初春にふさわしい公演となった。

ここから先は

766字
この記事のみ ¥ 300
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。