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高橋一生のリチャード三世と浦井健治のハムレットについて、いくつか考えたこと。

 日生劇場で上演してる『天保一二年のシェイクスピア』には、写し絵がある。

 高橋一生は、主に、シェイクスピアの『リチャード三世』のタイトルロールを踏まえている。浦井健治は『ハムレット』である。

 もちろん、井上ひさしの脚色だから、原作とは役柄の実質は異なっている。けれども、その骨格を引き継いでいるのは、井上ひさしのシェイクスピアに対する尊敬だろうと思う。

 高橋の佐渡の三世次は、これまでのリチャード三世の演じ方、身体に不自由を持っていることを強調している。

 ただ、高橋が演じると、たとえば、市村正親が演じた『エクウス』の不自由さも思い出される。身体を歪めていることの意味である。演出は、顔にも、大きなアザをつけ、負の記号を現している。

それが、強いコンプレックスが人生を左右してしまった人間の苦渋を現している。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。