マガジンのカバー画像

長谷部浩の俳優論。

71
歌舞伎は、その成り立ちからして俳優論に傾きますが、これからは現代演劇でも、演出論や戯曲論にくわえて、俳優についても語ってみようと思っています。
劇作家よりも演出家よりも、俳優に興味のある方へ。
¥1,480
運営しているクリエイター

#尾上菊之助

菊之助の『春興鏡獅子』と『京鹿子娘道成寺』配信から見えてきた舞踊の魔

菊之助の『春興鏡獅子』と『京鹿子娘道成寺』配信から見えてきた舞踊の魔

 菊之助が国立劇場とともに収録した映像「尾上菊之助の歌舞伎舞踊入門」を観た。

 『春興鏡獅子』と『京鹿子娘道成寺』が、昨年八月に収録されたが、今回、配信されたのは、それぞれ解説編と本編、計四本となる。

 まず、解説編だけれども、外の景色からすると、国立能楽堂で収録されたものだろうか。入門の名にふさわしく、舞踊の背景を丁寧に語っている。菊之助の語りだけではなく、舞踊のダイジェストもインポーズされ

もっとみる
令和三年の菊之助。後半には『京鹿子娘道成寺』の白拍子花子、『摂州合邦辻』の玉手御前、『義経千本桜』のいがみの権太が見たい。

令和三年の菊之助。後半には『京鹿子娘道成寺』の白拍子花子、『摂州合邦辻』の玉手御前、『義経千本桜』のいがみの権太が見たい。

 現在の歌舞伎は、変則的な興行が続いている。

 三部制を取っているために、出し物の長さにも制約がかかっており、狂言立てを作るにも苦心がいるのがわかる。
 玉三郎や猿之助の談話からも、役者たちが自分の出し物について、時間の制約を考慮した上で企画を考え、松竹とのやりとりのなかで、番組が決められていると思われる。だとすれば、今まで以上に、役者本人の企画力、プロデュース力が問われる時代が来ている。

もっとみる
【劇評232】歌舞伎座第二部、七月は白鸚の『身替座禅』の内省。菊之助の『鈴ヶ森』の気迫。

【劇評232】歌舞伎座第二部、七月は白鸚の『身替座禅』の内省。菊之助の『鈴ヶ森』の気迫。

一年のうち、もう半分が過ぎたのか。
 終息の気配が見えないコロナウィルスの脅威のなか、懸命の興行が続く。
 歌舞伎座の七月大歌舞伎、第二部は、白鸚、芝翫の『身替座禅』に、菊之助、錦之助の『御存知鈴ヶ森』が並んだ。

 まずは、『身替座禅』。白鸚の山蔭右京が初役とは驚いた。年表を見ると十七代目勘三郎を相手に、初代白鸚(八代目幸四郎)は、玉の井を昭和二十六年に立て続けに勤めている。
 ともあれ、白鸚の

もっとみる
【劇評230】博多座の菊之助二題。『与話情浮名横櫛』と『身替座禅』の出来やいかに。八枚。

【劇評230】博多座の菊之助二題。『与話情浮名横櫛』と『身替座禅』の出来やいかに。八枚。

 博多へと旅立つ 六月博多座大歌舞伎、緊急事態宣言下の博多を訪ねた。

 飛行機を予約するときから、現在が「緊急事態」であると知れた。羽田、福岡は、幹線だと思うが、大半の便がのきなみ欠航となっている。そのため、登場した便は、空席などなく、満員御礼の三密状態で、航空会社が極限まで追い詰められているとわかった。

 ホテルにつくと、カフエテリア以外のすべてのレストランが閉鎖されている。オールデイと名の

もっとみる