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長谷部浩の俳優論。

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歌舞伎は、その成り立ちからして俳優論に傾きますが、これからは現代演劇でも、演出論や戯曲論にくわえて、俳優についても語ってみようと思っています。
劇作家よりも演出家よりも、俳優に興味のある方へ。
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2023年10月の記事一覧

熱狂させる力 亀治郎の会の十年 

熱狂させる力 亀治郎の会の十年 

 四代目猿之助が自費を投じて、長年続けていた「亀治郎の会」は、この歌舞伎役者の意欲と方向性を読み取ることが出来ました。本来、猿之助は、こんな役者へと進んで行きたかったのだとよくわかります。雑誌『演劇界』の求に応じて書いた原稿を掲載します。
        

 平成十四年八月二日、第一回亀治郎の会が、京都芸術劇場春秋座で幕を開けた。演目は、『摂州合邦辻』と『春興鏡獅子』。玉手御前と小姓弥生後に獅子

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【追悼】闘将猿翁の逝去について、思い出すこと、いくつか。

【追悼】闘将猿翁の逝去について、思い出すこと、いくつか。

 闘将という名がふさわしい人だった。
 二代目市川猿翁(三代目猿之助)は、高校生時代の私にとって、特別な存在だった。
 歌舞伎座で観る大立者たちの芝居を、仰ぎ見ることはあっても、三代目猿之助のように、若い世代の人々をわくわくさせる歌舞伎役者はいなかった。
 歌舞伎座の三階から見る通し狂言やスーパー歌舞伎の数々は、猿之助が、革命家であると語っていた。
 今でこそ、「ストーリー(Story)」「スピー

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