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長谷部浩
2020年12月21日 23:12
伝承には、さまざまな形がある。 名だたる家に生まれた歌舞伎俳優にとっては、師匠であり、親でもある父との共演がまず、なにより先立つ。歌舞伎の配役は、なかなか一筋縄ではいかないが、一般に親は子を子役として使う。祖父の意見が大きく左右することもある。 次第に長じてくると、立役の親は、子を女形として、自分の相手役として使う。音羽屋菊五郎家も、このやりかたで、菊之助を育てた。つまりは、菊五郎
2020年12月2日 23:26
コロナ渦の影響で、玉三郎から菊之助に替わった『日本振袖始』を観た。急な代役にもかかわらず、舞踊としての高い水準を保っている。 幕が開くと深山の趣。甕が八基並び、上手には瀧。妖気漂う絵で、演出家としての玉三郎の美意識が緊張感を生む。 まずは、梅枝の稲田姫の出がいい。村人たちに囲まれて生贄に捧げられる姫の純粋さ、哀れさが一瞬にして伝わってくる。澄み渡った心境、自己犠牲の哀れ。役がまとう雰囲気
2020年11月29日 17:44
代役という言葉にひかれる。 歌舞伎の世界に留まらず、代役によってチャンスを得た人は多いに違いない。 私が一九九九年から五年ほど、日本経済新聞で現代演劇の批評を書く機会を与えられたのも、代役だったと聞く。 予定していた筆者に不都合があって、亡くなった文化部編集委員の川本雄三さんが推薦して下さった。川本さんとは芸術祭の審査委員でご一緒していたときに毎日のように劇場でお目にかかった。その決め手に
2020年11月28日 22:22
歌舞伎役者の誇りは、急な代役が勤められるところにある。 レパートリーシアターならではのプライドだが、めったに出ない演目、しかも一座に過去に勤めたことのある役者がいない場合は、いったい、だれから教えを受け、突発的な代役となるのか、昔から、疑問に思ってきた。 今回、十二月の歌舞伎座第四部『日本振袖始』もまた、かなり例外的な代役となるのだろう。 岩永姫を勤めるはずだった玉三郎が新型コロナウイル
2020年11月27日 20:26
感染者数の拡大とともに、私の身近にも関わりのある人が見つかるようになってきた。 今日、もっとも驚愕したのは、坂東玉三郎が来月の歌舞伎座、第四部『日本振袖始』を七日まで休演するとのニュースだった。 日刊スポーツの伝えるところによると「22日に新型コロナ感染を発表した片岡孝太郎(52)と対面で会話をする機会があったため。2人ともマスクをしており、会食などではないという」という。 国立劇場第