尾上菊之助さんの話題が中心のマガジンです。筆者の長谷部浩は、『菊之助の礼儀』(新潮社)を以前、書き下ろしました。だれもが認める実力者が取り組む歌舞伎、その真髄について書いていきま…
¥6,800
- 運営しているクリエイター
2019年11月の記事一覧
『菊之助の礼儀』 あとがき
五年ほど前に、菊之助さんについて、新潮社から一冊の本を書き下ろしました。あれからずいぶん時間が過ぎて、女方が中心だった役も、次第に立役も増えました。世話物や踊りだけではなく、時代物のレパートリーも増えました。『グランメゾン東京』での敵役、『風の谷のナウシカ』の企画など、今、転機にあるように思います。『菊之助の礼儀』のあとがきを収録しておきます。
菊之助の当り役2 『御所五郎蔵』
歌舞伎劇評 平成三〇年六月 江戸川総合文化センター
音羽屋菊五郎家の嫡子は、江戸世話物を継承すべき立場にある。
美貌と声のよさに恵まれた女方として出発した菊之助は、父七代目菊五郎の相手役を勤めることで、継承の準備を着実に進めてきた。『直侍』の三千歳、『魚屋宗五郎』のおなぎ、『御所五郎蔵』の逢州はその良い例だと思う。『髪結新三』の勝奴も同様。父と同じ舞台を勤め、将来に備える。これは御曹司として生