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【ミニ社長塾 第14講】「どうすれば売れるか」ではなく「なぜお客様に買ってもらえるのか」を考えよう

おつかれさまです。
中小企業診断士で、社長の後継者に【徹底伴走】するコンサルタントの長谷川です。

私のメインの活動の場は「アタックス社長塾」という社長の後継者や右腕左腕となる方々を対象とした経営塾です。
※詳しくは下記のリンクをご参照ください。

そこでお伝えしている財務アタマ(財務を強く意識して、会社を絶対につぶさず伸ばしていく経営思考力、のことです)について、受講生の伴走のために財務アタマのポイントを見返していました。

財務アタマのポイントは16項目あるのですが、その1番目は「高付加価値主義」です。

また、社長塾でお伝えしている実践経営理論について、目標である長期安定利益を達成するためには、「高付加価値主義」であることは、とても重要なポイントです。

この繋がりを十二分に理解したうえで、より丁寧に伝えていきたいと思っていたところ、ある書籍と出会いました。

それは「付加価値のつくりかた」という元キーエンスの田尻望氏が書かれた書籍です。

この書籍に書かれている付加価値の定義はもちろん、「どのように付加価値を高めていけばよいか」のケーススタディに及ぶまで、財務アタマの書籍や研修の内容と非常に繋がっているな、と読了後に思いました。

そこで今回の記事は、「書籍『付加価値のつくりかた』の中で自分が読んで、付加価値についての気づき」について、お話しします。

一番のポイントは、タイトルにもしている『「どうすれば売れるか」ではなく「なぜお客様に買ってもらえるのか」を思考すること』です。

なお、本書籍では「キーエンスはなぜ高付加価値を生み出せるのか」
についても記載がありましたが、これだけでも十分一本の記事になるなと思ったので、次回のミニ社長塾の中でご紹介しようと思います。

とにもかくにも、今回は付加価値についてです!

1.商品やサービスを買ってもらうための超シンプルな計算式

社長塾で付加価値について、まず説明をする時に「ペットボトルの水」の話をよくしています。

近くのコンビニで買った水は「100円」だけど、少し離れたスーパーでは「60円」で売っています。安い方が良いのであればスーパーまで行って買うはずなのに、あなたはコンビニで100円を出して買いました。それはなぜ……?

大抵の方は「近くだから」や「手軽さ」と答えられますが、100円ー60円=40円の差額こそが付加価値であり、この場合の価値は「移動コストの軽減」や「便利さ、手軽さ」である。そんな話をしています。

商品やサービスを買ってもらうためにはどうすれば良いか。
その答えは、

「価値>価格」

という計算式でとらえることが出来ます。

「ペットボトルの水」の話でいうと、水単体の価値を60円とするとコンビニ価格の方が高いので、それだけでは買ってはもらえません。

しかし、価値として「移動コストの軽減」や「便利さ、手軽さ」というものが乗っかってきて、価値が価格の100円を超えたものとしてお客様に認識されれば買っていただけるようになります。

次に、「価値>価格」の状態を作り出すうえで重要なポイントは、お客様のニーズを正しく把握できているか、です。

ニーズは「お客様の困りごと」から生まれます。一方で、自社の技術力や商品力をいくら磨いたとしても、「お客様の困りごと」の解決に繋がっていなければ、価値には加算されないので「価値<価格」となり売れない状況となる可能性があります。

だからこそ、「どうすれば売れるか(=プロダクトアウト)」ではなく「なぜお客様に買ってもらえるのか(=マーケットイン)」で考えることは、お客様のニーズを正しく把握する上で重要なポイントです。

2.付加価値の正しい理解

付加価値とは、財務的には次のように表されます。

(販売業の場合)
付加価値=売上総利益=売上ー売上原価(外部購入費)

(製造業の場合)
付加価値=売上総利益+製造プロセス費=売上ー外部購入費

ここでの売上は、価格と同義です。したがって、

付加価値=価値ー外部購入費

と言い換えることが出来ます。

ここで、「価値>価格」でない状態、すなわち「価値<価格」となった時のことを考えます。この時は、価格ほどの価値をお客様は実感していない状態です。とはいえ、買う必要があるので、お客様から言われることは「値下げ」です。つまり、お客様の実感している価値>価格となるようにしているのです。

この状態における付加価値は、当初の価値よりも低い金額のため、少なくなってしまいました。

書籍『付加価値のつくりかた』における付加価値の定義は「ニーズが源泉」です。相手のニーズがある部分に対して価値を提供できれば付加価値が生まれる、という理解です。

先の事例においては、価格ほどの価値をお客様は実感していない状態ということですので、相手のニーズをとらえていなかったということになります。

一方で、相手のニーズを超えたものを提供した場合はどうでしょうか?
より高い価値を実感してもらえるので、価格を上げることが出来るのでしょうか?

答えはNoです。

書籍『付加価値のつくりかた』によると、お客様のニーズを超えた部分についてはムダとなるようです。

書籍『付加価値のつくりかた』より、付加価値の構造図を筆者作成

この話について、私が社長塾で伴走している製造業の社長が「過剰品質」という言葉で表現されていました。

お客様のニーズを超えたからと言って価格に反映できないのであれば、ムダとなる部分を別の商品群に充てることで全体の付加価値を高めていく、という戦略は合理的だと思います。

また、お客様のニーズは潜在ニーズと顕在ニーズに分解することが出来ます。以下、書籍『付加価値のつくりかた』より引用させていただきます。

書籍『付加価値のつくりかた』より、付加価値の全体像を筆者作成

顕在ニーズは字の通りで、お客様の期待通りの付加価値を提供できている状態です。一方で、潜在ニーズはお客様も気づいていない付加価値を提供できているため、高い価格に繋がる可能性があります。

したがいまして、お客様のニーズをどこの部分までとらえることが出来るかによって、値上げの可能性に繋がるという気づきがありました。

3.高付加価値にするための方法

ここまでの話をまとめていきますと、

①付加価値を高めるためにはお客様のニーズを把握すること
②ニーズを満たすために自分たちは何ができるか
③そのうえで足りないことは何か、どうすれば補うことが出来るか

という順番で考えていった方がよさそうです。

そこで、ニーズの裏側には重要な要素が潜んでいるそうです。その要素とは「感動」「感情が動くこと」だそうです。

「エイブラハムの感情の22段階」というものがあり、人間の感情には22のステージがあるという考え方です。上の方が喜び、情熱、希望などのポジティブ要素、下に行くにつれて失望、落胆、不安、恐怖などのネガティブ要素になります。
※詳細は、下記をご参照ください。

そして、高付加価値にすることを考えるうえで、付加価値は大きく3種類あることを押さえておいた方がよさそうです。

①置換価値:今より便利に、今と同じ感情を味わえる価値
②リスク軽減価値:つらい感情を感じるリスクを減らせる価値
③感動価値:今より高い位置の感情を味わえる価値

この3種類のうち、最も重要な付加価値は③の感動価値だそうです。なぜなら、他の2つに対して未知の価値であるため、潜在ニーズが非常に大きいからです。

いずれにしても、高付加価値にするためには、お客様の潜在ニーズを探索していくことが大事になってきます。

そのためには、実際にお客様と会うことが大切で、「どうすれば売れるか」ではなく「なぜお客様に買ってもらえるのか」の視点で考えていくことが重要であることを、改めて気づきました。

次回は、いよいよ「キーエンスの付加価値のつくりかた」についてみていこうと思います。また、次回の【ミニ社長塾】も、どうぞよろしくお願いいたします。

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