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【ミニ社長塾 第45講】「部下の育成」について、これだけはお伝えしたい話。

おつかれさまです。中小企業診断士の長谷川です。

私がプログラムディレクターをしている「アタックス社長塾」で、「社員を成長させる 組織・人事制度と人財育成」という一日研修が先日行われました。

その講義の冒頭、受講生である経営者や後継経営者の方々の人事管理についての課題感について講師が質問したところ、最も多かったものは「部下の育成」でした。

そのとき、同じく「社長塾」のOBOG会が先日行われた時にも参加いただいた修了生(経営者)の皆さまからも「部下の育成」について色々な悩みの話をお聞きしたな、ということを思い出しました。

そこで今回のミニ社長塾は、先日の「社長塾」の講義レポートがてら「部下の育成」について書いていきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。


1.「あなたはどうなりたいの?」に注意

キャリア面談や採用面談などで

「あなたはどうなりたいの?」

といった質問をされた経験はあると思いますし、逆にしたこともあると思います。しかし、この質問をする時には注意が必要なんです。

この質問を行う意図としては、今は多様性の時代なので部下自身の意思を尊重したほうがいい。また、自分自身の人生なので自分の将来像=あるべき姿に焦点を当てて考えてもらう機会を作りたい。そのようなことが挙げられます。

ですが、「どうなれるのか」という知識(情報)がない状態では、その質問を受けた相手は「考える」のではなく「悩んでしまう」ことになるのです。

先日の研修で、講師はキャリアプランの図を用いながら
「自社はこのようなレールがあります」
「自社ではこういう仕事があります」
「こうなれます」
といった仕事の段階を見せて示す必要がある、ということを話されていました。この情報が「あるべき姿」を考えるうえでの知識になります。

エドガー・H・シャインという心理学者が提唱しているのがキャリアアンカーという理論です。キャリアアンカーとは、個人が自らのキャリアや働き方を選択する際に、どうしても譲れない「価値観」や「欲求」「コアコンピタンス(能力)」のことです。そのキャリアアンカーは8つに分類されます。

①専門・職能別コアコンピタンス → 専門的知識を活かすこと
②経営管理コアコンピタンス → 経営など組織運営を管理すること
③自立・独立 → 自分の裁量で進めること
④保障・安定 → 安全や安定を得られること
⑤起業家的創造性 → 新しいものを創り出すこと
⑥奉仕・社会貢献 → 人や社会の役に立つこと
⑦純粋な挑戦 → 挑戦し克服すること
⑧生活様式 → ワークライフバランスを求めること

※詳しくは下記のサイトが参考になります。

ここでお伝えしたいことは二つで、一つ目は「あるべき姿」を考えるには何らかの枠組み(フレームワークなど)が必要だということ、そしてもう一つは人によって「働きがい」や価値観は様々で共有することが重要であるということです。

画一的に「あなた、どうなりたいの?」と聞くのではなく、仕事の段階をお伝えしたうえで「あなた、どう思う?」と聞かれるのは良いと思います。そのうえで自社の仕事の段階とキャリアアンカーとどのように関連づいているのか。お互いの価値観を共有できると、部下の方の心理的安全性を高めることにも繋がります。

2.見直すのはコミュニケーション不足?

部下の育成が上手くいかない原因の代表的なものがコミュニケーション不足です。上司が多忙であると、日常のコミュニケーションが不足してしまい、与えられた仕事に対して「やらされ感」や対応に対する「不信感」から関係性が悪化した、というケースをお聞きします。

ここで二つの視点があって、一つ目はコミュニケーションを取る時間が増えれば解決するのかという視点と、もう一つの視点は「やらされ感」や「不信感」などはどうすれば解消されるのか、です。順番に考えていきます。

①コミュニケーションを取るために

私は、上司が多忙であるのは良いことだと思います。なぜならば、それだけ仕事を取ってきているからです。だからと言って、部下とのコミュニケーションの時間を減らしてよい理由にはならない、とも思います。

今回の講義では「コミュニケーションを自然発生させようと思っていてはダメ」ということを講師は話していました。では、どうすれば良いのでしょうか…。

そこでお伝えしたことは「仕組みにすること」です。具体的には、向こう1年間分の部下とのキャリア面談などのスケジュールの予定を押さえます。つまり、コミュニケーションを強制発生させ、部下と向き合う時間を優先するのです。

ただし、何をやるのか、何のためにやるのか、を決めておくことも重要です。部下の成長を促すためには、フォローであったりフィードバックが必要です。フォローとは部下が行っている業務を円滑にするための手助けであり、フィードバックは行った業務に対し評価やアドバイスを送ることです。

ただ面談がある、となると部下は身構えてしまいますし、何より自分自身は多忙の身です。お互いにとって有意義な時間にするためにも、面談前には予め話したいことを共有しておくと良いと思います。

②「やらされ感」や「不信感」などを解消するために

先ほどはコミュニケーションの話をしていたのですが、とはいえコミュニケーションの時間が増えたからといって「やらされ感」や「不信感」が解消される、とは限りません。

「やらされ感」や「不信感」といった感情は組織に蔓延している空気感や雰囲気といったものから漂ってきているものですし、その根本は組織の「あり方」にあります。コミュニケーションの総量を増やしても根本的なものが変わらなければ、対症療法的なもので終わります。

では、どうすれば? という話で、講師の中で解説されたのが「GRPIモデル」です。グリッピーモデル、というものは、チームビルディングを行う時に考えるフレームワークで、

・Goal(目標)
・Rple(役割)
・Process(手順)
・Interaction(関係性)

※詳しくは下記のサイトが参考になります。

の頭文字で「G R P I」モデルです。このモデルの大事なことは、上から順に重要、かつ決定する順番となっているということ。つまり、まず決めることが「目標」であり、その次に「役割」。目標と役割が決まれば業務手順や意思決定フローなどの「手順」を決めて、最後にコミュニケーションを取るという「関係性」を考えます。

「やらされ感」や「不信感」といった感情を解消するならば、コミュニケーションのことを考える前に「手順」であり「役割」であり「目標」を見直す必要があるのです。

具体的には、各要素が明確かどうか、共有・浸透しているかどうかを確認します。この部分を見直していただくことが、部下の育成を更に加速させるうえで必要な視点かと思います。

3.参考にすべきは自社の歴史!?

会社が今日まで続いているのは、これまでの経営者の判断が正しかったからと言えます。様々な経営の意思判断のなかにはヒトにまつわるものもあったはずですので、経営者にとって自社の歴史を知るということはとても大事なことだと思います。

会社が長く続いていればいるほど、会社に文化として根付いているものがあります。私が以前勤めていたのは設立60年を超える会社でして、来客の方から社員の振る舞いに対して「(会社名)さんらしいですね」と会社名を付けて評されることが多かったです。

会社の文化がどのようにつくり上げてこられたのか、どのような危機があって、どう乗り越えてきたのか。部下を育成する上で参考になるのは、実は自社の歴史だったりします。

部下育成について、様々なアイデアが書籍やネット上から学ぶことができますが、それが自社に適合するかどうかも自社のことを知っていなければいけません。仕組みは作ったら終わりではなく、運用が大事です。「手段の目的化」にならないようにも気を付けていただきたいです。

今回の記事は『「部下の育成」について、これだけはお伝えしたい話。』ということで書かせていただきました。部下育成にお役立てていただければ幸いです。

次回の【ミニ社長塾】も、どうぞよろしくお願いいたします。

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