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(特に同族承継の)後継経営者に意識していただきたい2つのこと

はじめに

私は少なくとも年間50名の後継経営者の方々と接しております。
その方々の会社の創業年数は様々ですが、2代目、3代目の方が多いように思います。

ファミリービジネスにおける社長の任期は「約30年」という超長期ですので、それでも3代となるとおよそ100年。大変な長寿企業です。

ちなみに、帝国データバンクの統計データによると2020年時点による100年を超える会社は日本全国でたったの2%しかありません。企業の平均寿命は37.48年とのこと。データ上は2代目の舵取りが盛衰を左右すると考えられます。

会社がダメになる要因の一つは外的要因です。

直近では新型コロナウイルス、以前には東日本大震災、リーマン・ショック、バブル崩壊…など、どうやら10年周期で経営に影響を及ぼすことはご認識の通りです。このような外的要因にどのように付き合っていくか、ビジネスモデルの柔軟性が求められます。

また、ビジネスモデルは創業者が苦心されて生み出された”当時”の条件において儲かる仕組みと言えます。創業者が現場に近しいところで経営ができているのであれば、そのスピード感とトップダウンにより対応ができますが、現場を離れ”勘”が鈍ってくると途端に陳腐化していきます。

したがいまして、過去の成功体験に引きずられず、ビジネスモデルの見直しや変革を行う必要が出てくると思います。

そして、もう一つの要因は内的要因、もちろん「事業承継」です。

これには会社を”引き継がせる立場(現経営者)”と”引き継ぐ立場(後継者)”のどちらも考えなければいけませんが、今回は”引き継ぐ立場(後継者)”について一緒に考えていきたいと思います。

1つ目に意識してほしいこと:スチュワードシップ

スチュワードシップ(stewardship)とは、ファミリー企業においては「財産や事業を先代から受託されたものとして引き継いで管理し、それを未来の世代に渡していくこと。またそのような利他的な姿勢※」とあります。私の解釈としては「バトンを受け継ぎ、次に渡す」という感覚で捉えております。
※ビジネススクールで教えているファミリービジネス経営論(プレジデント社)から引用

なぜ、このスチュワードシップなるものを意識してほしいかと言いますと、創業者が立ち上げた事業が何かしらの「社会的課題の解決」に繋がっており、後継経営者として社会からの期待に応え続ける責任があるからです。

それは会社の存在意義や目的につながるため「経営理念」として表現されていますが、私が見てきた会社で明確にされていないケースも多くあります。その場合は、ご自身が承継したタイミングで会社の方向性を指し示す意味も込めて「経営理念」を用意されることをおススメいたします。

少し話は戻りますが、ファミリー企業における社長の任期は「約30年」のため長期的な視点で経営を行うことができます。これにより、近視眼的な利益追求ではなく思い切ったビジネスモデルの変革や次世代に向けた投資などが可能となります。結果として持続的成長をもたらし、100年企業につながる可能性を高めます。

2つ目に意識してほしいこと:アントレプレナーシップ

アントレプレナーシップ(entrepreneurship)とは、「起業家精神、創業者精神」という意味です。

なぜ、このアントレプレナーシップなるものを意識してほしいかと言いますと、先代の事業を引き継いだ後継者は「先代の事業を守ろう」とされて現在の延長線上で経営をされるケースを多く見かけるからです。

この問題定義には2つのポイントがありまして、1つ目は先のビジネスモデルの話です。ビジネスモデルは創業者が苦心されて生み出された”当時”の条件において儲かる仕組み、と表現いたしました。そう、後継者が引き継いだ時には条件が変わっているからです。

例えば日本の人口。今より10年すれば1割減、30年すれば1億人を下回るということが予測されています。すると、何もしなければ単純に売上額は減少するだけです。それを避けるためには人口の減少やその他外部環境の変化を踏まえたビジネスモデルの変革が求められます。

そして2つ目ですが、熱量の問題です。引き継いだ事業に対して”自分ごと”として捉えられるかどうか、ということです。当然に自分が立ち上げたわけではないので、そこまでの思い入れを持つことは難しいです。この熱量がいざという時に踏ん張れるかどうかを決めることになります。

後継者にとって重要なことは「会社を永続させること」です。そのなかで、「先代から引き継いだ事業」は手段の一つと考えられます。そこで、会社を永続させる可能性を高めるためにアントレプレナーシップを発揮して「自分の事業」を立ち上げてみるのは非常に有効な手段だと考えられます。

福岡県にある明太子のメーカーの株式会社ふくやの川原会長から教わった後継者の3条件は、

  • 経営計画を策定できること

  • 事業再生、もしくは新規事業の経験があること

  • 経営理念の体現ができること

とのことです。新規事業を行うことにより、自らの経営数字に責任を持つことができますし、何より熱量が違う。経営者の意識や覚悟といったものを醸成する一助になると思います。

まとめ

今回お話ししたことは、後継者の経営に対する攻め(アントレプレナーシップ)と守り(スチュワードシップ)の2つでした。

そして、これに加えてもう一つ大切な意識があります。それは「先代経営者とのコミュニケーション」です。事業承継は千差万別、それこそ正解なんてありません。後継者にとっての最大のチャレンジであると思いますが、私の見てきている範囲では”引き継がせる立場(現経営者)”が「任せる」という決断をされた方がうまくいっているように思います。

どのような心境で「任せる」という想いに至ることが出来たのか、色々と経営者の皆様方にご教授いただきながら、改めて皆様にご紹介できればと思います。

今回はここまでとさせていただきます。ありがとうございました。

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