トイレ読書のススメ

トイレが暇である。

とにかく暇。暇すぎる。

いや、長居するところじゃないのは分かっているけれど、座って、ふぅとなって、そのあとのアクションの間が暇すぎるのである。

いったん作業から離れるわけだからあれこれと何かちがうことを考えるのもいいけれど、私はとにかく何かをしていたい性質なので、できればトイレでもできる作業が欲しい。
せっかちではないよ、言っておくと。
トレイでのことを済ます間にも何か作業をしていたんだよ。

ガラケー時代に携帯をぼっちゃんしてから、トイレでスマホを触るのナシ。
そしたら、やっぱり、アレしかないだろうと思った。

そう、読書である。

ただし、我が家は母がトイレでの読書に後ろ向きなので、置き本はできない。
だから私は毎回、本を持ってトイレに入る。
あ、いや、引かないでくれ。
衛生的なことをこの際抜きにして聞いてってば。

では、何をトイレで読むか。

私は爆笑できるエッセイがいいと思うのだ。
声を出して笑って、ことを済ませて、おなかも頭もすっきりなんでどうだろうか。
トレイは英語で「レストルーム」というぐらいなのだから、一時的な休止をする場所だ。
何かしていないと落ち着かない、けれど、トイレでやれることは制約がある。
だから、トイレで爆笑できるエッセイを読むことは頭をいったん休止にできるかつトイレでできる作業。
なんと理にかなった行動なのだろうか!

私がもっぱらトレイで読むのは、愛してやまない作家・三浦しをんさんのエッセイである。
彼女の書くエッセイはおもしろすぎて電車では読めないし(在宅ワークなので、電車に乗る機会はほとんどないのだけれど)、寝る前に読むと興奮して寝れないし、普通に読んだらいんだけど、どうせなら気持ちよく読みたい。

そこで考えたのが、イッツ・ア・ブックタイム・イン・トイレット。
「全米が泣いた。こんなトイレの時間を待っていた」(大げさ)。

三浦さんのエッセイを読んだことがない方が万が一にでもいる場合のことを考えて、ちょっとだけ内容を紹介しますと。
基本的には大好きな漫画やドラマや映画や俳優さんの話し、「一日中原稿書いててここ数日どこにも出かけてないよ」や「寝すぎて仕事が終わってない」という嘆きだったり、「夜中なのに揚げ物弁当食べちゃったよ」という反省してない反省だったり。
あとは、友人と出かけたバレエ公演だったり、宝塚公演だったり、ライブのことだったり。

そんな普通な内容のどこが面白いの?と思ったそこのちみ、今からそれを教えてやるから耳の穴かっぽじってよーく聞きな。

「舟を編む」という三浦さんの小説はご存知よね?
出版社の辞書編纂部のお話なんだけど……、まあ、知らない!?
即Amazonか楽天かセブンネットショッピングかなんかで買いなさい。
読め!とにかく読むんだ!本屋大賞を受賞した名作中の名作だから!
こほん。
つい、暴走してしまったわ。

言葉を扱う職業である三浦さんが、さらに言葉を扱う辞書ができるまでの物語を書くなんて。
言葉のセンスが破壊的になければ、書けませんて、普通。

言葉のセンスがいい三浦さんのエッセイはまず目心地がいい(私の造語です)。
だから文章の読み心地もいい。
いい匂いかつ、美味しい食べ物って感じだ。

じゃあ、まずどのエッセイから読んだらいいの?って、よくぞ聞いてくれました。
トイレ読書にオススメな三浦さんのエッセイ。
解説しよう!

まずは、やっぱり新潮社の4部作。
・夢のような幸福
・乙女なげやり
・桃色トワイライト
・悶絶スパイラル

どこから読んでも問題はないけれど、できれば刊行順に読むことをオススメする。
三浦さんの一人暮らしまでの経緯が分かるし、刊行順で読むとそれぞのエピソードが入り乱れることなく、混乱せずに読めるから。
私が読み始めたのもこの4部作からで、もう、何度読み返したことやら(もちろん、トレイで)。

次も新潮社から。
・ビロウな話で恐縮です日記
こちらも爆笑必至の日記形態エッセイ。
タイトルが小見出しのごとく細かくつけられており、その小見出しからは想像もつかない爆笑エピソードが満載である。
私がいちばん印象に残っているのは「黒だきゃーも」。
え?それは何かって?
気になるならぜひ読んでみておくれ。

最新作はこちら(私調べなので、もしこっちの方が最新だよ!という情報がありましたら、情報求む)。
・のっけから失礼します
私、これ、2冊持ってます。
なぜかって、このエッセイが発売されると知ってから即Amazonで予約し、発売日に手に入れ、その日のうちに読み切り、満足して翌日出かけたところ、出先の本屋でサイン本を見つけてしまったのだよ!
買わずいれるかこれが!
大好きな作家さんのサイン本だよ!?たとえ同じ本であろうが買うに決まってるわ!
え?内容に触れろ?失礼しました。
こちらも抱腹絶倒で爆笑なことが変わらない最新の三浦さんの日常が書かれております。
ホントはいくつか紹介したいのだけど、そうするといざ読んだときに面白さが半減する可能性があるので、何も言いません(結局言わんのかい)。
あえて言うなら、退屈な日常って存在するの??ということだ。

ほかにももっと初期のエッセイ(「しをんのしおり」)もあるし、書評(「三四郎はそれから門を出た」「本屋さんで待ちあわせ」)も三浦さんの本愛にあふれていてすごく面白いし、ためになる。

そんな本をトイレで読んでしまって申し訳ない!と思いつつ、面白い本で頭もおなかもすっきりできる、トイレ読書。
非情にオススメである。












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