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文字で読む文学ラジオ第1回『独創短編シリーズ 野崎まど劇場』『独創短編シリーズ2 野崎まど劇場(笑)』(野崎まど)


文学ラジオとは?

おはようございます、こんにちは、こんばんは。
BJ(文学DJ)のはるうです。

2023年が明けて、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
仕事も始まり、通常の生活に戻っている方がほとんどだと思います。
私、年末の空気は好きなんですけど、年始のだらっとした空気は好きじゃないんです。
なんだろう……、すべてが止まってしまったような空気感が嫌いなんですよね。
こう、どんだけダラダラしていても「まー正月だし」と許される空気感。
休みなんだから何をしても許されるわけじゃないぞ!と言いたくなってしまう……。

さて。みなさま、お笑いは好きでしょうか?
昨年のM―1はウエストランドが優勝しましたね(←見逃した人)。
私の好きな芸人さんは、サンドウィッチマン、チョコレートプラネット、バナナマン、千鳥、Aマッソ……。
テレビでの露出が多い芸人さんが漏れなく好きなのですが、それもそのはず。
見る機会が多ければ、それだけ「この人たちおもしろ~い」と思うことも多いわけです。
まあ私はネタを見たいというより、バラエティ番組で絶妙に上手く立ち回ったり、当意即妙言い回しをする様子が見たいって気持ちが強いんですよね(麒麟の川島さんのような)。
ネタ番組が減っている中で、次につながるように頑張る姿にはちょっと胸を打たれたりしてます(まあ、当の芸人さんはそんな風に見て欲しくないだろうけど)。

なぜこんなにも芸人さんの話しをしているかというと、今回取り上げる本が「小説なのにまるでお笑いのような本」だからです。

「ほんタメ!」という本や漫画の紹介をするYouTubeのチャンネルをご存知でしょうか?

その動画でMCの一人である齋藤明里さん(愛称・あかりん)が、この本の一冊を紹介していたのです。
そこであかりん(と、愛を込めて呼ばせていただきます)が「小説で笑いを取ることは難しい」みたいなことをおっしゃっていて……。
確かに、そうなんだよね……。漫画や映画のようにビジュアルに頼ることができない小説は、文章ほぼ一本勝負で笑いを取りに行かないといけない(挿絵という手もあるけど、数枚の挿絵だけで笑いをとっても文章そのものが笑えなければ意味がない)。
しかも「笑い」というのは千差万別。万人受けする「笑い」を生み出すことはほぼ不可能に近いのではないでは……?
だから、本書が全員が全員に確実な笑いを提供してくれるか?と言ったらそれは保証できかねる。
だけど、それでもこの本を推すのは一定の「笑い」はもたらしてくれるはず……と信じているから(弱気)。

内容はごくごく短い短篇。1つがだいたい20ページくらいかな??長くても40ページほど。
この短さだからこそ、成り立つ「笑い」でもあるのよ。
だって芸人さんのネタでもあまりにも長いと「え?いつまでやってるの?」と思うこと、あるでしょ?そういう意味ではめちゃくちゃ読者のツボを突いた長さと言ってもいい。絶妙な長さ。絶妙なペース配分。くっ……計算なのか……!?

コホン。
この本の1つの特徴としてZAZYのようなフリップ芸が挙げられる(ZAZYを知らない人はググろう!)。
あかりんも言っていたのだけど、ふんだんに図やイラストが使われ、見事なフリップ芸が繰り広げられているのだ!
「え、それって挿絵で笑いを取ってるんじゃない?」と言われるかもしれない。いやいや、ちがうから。
そもそもの舞台設定と、そのフリップ芸を取り巻く文章があってこの成り立つ野崎まどオリジナルの「小説によるフリップ芸」なんだから。ポンっと挿絵だけを見せられて、それで「うひゃひゃひゃひゃ」と笑えてしまったらもうそれはギャグ漫画である。
この小説は、あくまで「小説」という形を取ることで「笑い」と取っているのだ。
小説の中にフリップ芸が組み込まれることによって、それが激しく摩擦を起こしてる。その摩擦が読者に純粋で崇高な「笑い」を提供してくれる。
読んでいると一瞬「あれ、これって小説?」って思う瞬間が訪れるでしょう……(神託)。

中でも私が「ぶぇっ!」と気持ち悪い笑いが漏れてしまったのが、西部劇のガンマンの決闘の様子を、文字だけで立体的に表現している短編だ。
言っている意味、分からないですよね??私も1ミリも伝わっている自信がない。
「文字だけで立体的に……?」と疑問に思ったらすぐに買って読むことを勧めるのだけど、もう少し、頑張って伝えようとしてみる。
こう、文章って、今読んでいるように「横書き」か「縦書き」ですよね?
小説は「縦書き」、ブログなどは「横書き」。それが常識。
はい、そんな常識をこの短編はぶっ飛ばします。
ページを斜めに使ったり、会話文とか地の文以外の決闘シーンはまるでさながら映画のような映像的な文字配置。
おかげで新たな小説の可能性をビシビシと見せつけられるのだ。
あぁ……、もどかしい。私のこのラジオを読むのではなくて、早く実際に読んでほしい……。
そうは言ってられないので続けると(あとちょっとで終わるからもう少し付き合って!)、「小説で笑いを生むことは可能だ」ということをこの本は見事に証明してくれたのだ。

笑うって、人間という生き物の特権だと思う。
他の生き物は「楽しい」という感情があっても「笑う」という表面的な反応を見ることはなかなかない(ペットだと飼い主さんにしか分からない感情表現をすることはあるよね)。
漫画や映画とかのビジュアルに頼らない、文章だけで笑いを取るなんてもはや芸術の域だと私は思ってる。
そんな野崎まどの「小説による漫才&コント」を、ぜひぜひ堪能してほしい!

さて、本日紹介しましたのは、『独創短編シリーズ 野崎まど劇場』&『独創短編シリーズ2 野崎まど劇場(笑)』でした。

お相手はBJ(文学DJ)はるうこと、西桜はるうが務めさせていただきました。

ではまた、第2回の『文字で読む文学ラジオ』にてお目にかかりましょう!

チャオ!


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