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『定額制夫の「こづかい万歳」』の会社推し回を読んだ感想


◆会社推し

モーニングで連載中の『定額制夫の「こづかい万歳」 ~月額2万千円の金欠ライフ~』
妻と子供二人がいる吉本浩二先生が月21kのおこづかいをどのように使うか?また、他の人もどのように使っているのか?という如何にもなドキュメンタリ漫画。このコンセプトがとても興味深くて面白いし、「あるある~」な共感を呼び寄せ、現実を叩きつけられる苦みがある。ぼくはカネに汚い人間で大正解だったのだとわからせてくれる。

第42話。通称・会社推し回がコミックDAYSにて無料公開された。

この回は掲載当時、SNSで話題になっていたという。
ぼくがちらっとスクショを見た時点での印象はやはりというべきか、「共感したくないな…」「知人は選ぶべきだな…」という忌憚のない本音をとても隠し切れなかった。だがしかし、この回のゲスト・大石さんは何故に会社推しなのだろうか?という疑問と興味はあった。

で、無料開放されたので、改めていざ本編を読んだ単刀直入な感想。
3割方は共感できるかな…でもやっぱり共感し難いな…

◆共感できる要素

1.推しMAP
2.机周りのガジェット環境(※但し自費)
3.はじめての居場所

1は素直に良いなと思った。
何故ならぼくも仕事が終わった後「今日はどこへ当たろうかな」と楽しみにしているからだ。まあ、常連のコンビニくらいしかないのだが。それでもこういう日々の楽しみ・モチベアップはすごく共感できる。
また、部下や得意先等のお客様へオススメスポットを紹介できるのも強みだ。こういう地元の情報網に強い方は地味に重宝できる。

2は自費なら机周りに何でも置き放題は良い会社だな、自由度高くていいのではないかなと共感できる。やはりそれは普段の仕事のモチベを引き上げるにふさわしいと考えられるからだ。ただ、大石さんはいくらなんでも私物を調達しすぎだと思うが…周りのデスクと浮いていそうじゃね?

3は人それぞれだろうが、ぼくも学生時代はぼっちだったので、社会人時代の現在のほうが圧倒的に口を多く開いている。あと自分でこんなことを言うのもなんだが、なんだかんだ言って上司から頼られているので強く共感できる。会社自体がホワイト寄りなのも相まって、大石さんの会社推しパワーを高める最高の環境なのだろう。

◆共感できない要素

1.社史を読み、「自分も歴史の一部になれた」と気持ちになるほど興奮
2.通勤中、必ず社歌を聴く
3.イスベッド・ソファベッド
4.歌舞伎揚げふりかけおにぎり
5.夜勤明けの朝日
6.会社に行けないツラさ

1は大石さんの会社推しのはじまりらしい。だが、全然共感できないな…
まず「社史を読む」という選択肢がぼくにはなかった。時間が有限なのだから、まず他の楽しいことをしたいと優先してしまう。
「この企業にどうしても入りたい!」という人なら共感力は強くあるかもしれない。例えばゲーム会社なら、ファミ通には載っていない社外秘レベルスレスレの情報があるかもしれない。
だが大石さんの場合、元々志望業種ではなかった。それが社史が彼の人生を大きく変えた運命的な確変だった。流石に本編ではすべてを語り切れないので、どれくらい社史のすばらしさを知り心に打たれたかは分からないが、ぼくも同じような結果に至れる自信がとてもない。

2、「恥ずかしい」という正直な想いが先行される。校歌とかニガテなクチである。日本ブレイク工業みたいな社歌なら少し検討するかもしれない。

3、流石に日付が変わるまで深夜残業しない。決算時期は連日クソ忙しいが、それでも限度を決めるようにと上からも言われている。そしてイスベッドやソファベッドは寝心地悪そうでとても寝られる自信がない。

4、ラリってるような表情こえーんだけど!?つーか大石さん本人に怒られそうで心配なんだけど!?

5、「別に会社で夜明けを迎えてもなあ…」という気持ちが強い。

6、禁断症状すぎてこわすぎるよ!今はせめてもの家族サービスを優先しようよ!

◆理想郷なのは理解できる

とまあこんなふうに、共感できない要素は流石に自分でも辛辣なコメントしすぎて大変恐縮なのだが、ただ推したいほどの気持ちに至るのは理解できなくはないのだ。大石さんにとってホワイトで居心地の良い会社なのは理解できる。なんだかんだ言って会社とは人間関係がすべてを決定づけていると言ってもいいからなあ。

だが、うん。まあ、怖いな大石さん…
確かに本人の言う通り、これは社畜ではないが、ないのだが、それに似た…信者的なもの?忌憚のない意見、不気味である。

しかし、共感できる要素は本当に共感できるのだと強く主張したい。もっと言うなら、「あっこれいいな真似したいな」と少し羨めることでもあるのだ。いちおうぼくも会社にタフ・グミ持ち出しているし。幸いマネモブ疑惑かけられていないし。
なんだかんだ言って、本人が幸せなら、それはそれで尊重してあげたいのだ。すっげえ怖いし、「ネタじゃないの??」と信じきれていないけど、とてもバカにする気にはなれないというか、するのは人間してダメだろう。是非とも社長の座を目指してほしいし、よりよく経済を回してほしくもあるのだ。

…と思ったが、マジで社長になったらヤバいことになりそうなので、ちゃんと制御できる存在が必要ですね。月一強制飲み会とかやらせるような、ましてや会社のお金ではなく自分のお金を出すような、かえって他人にプレッシャーをかけてしまう人ではないと思いたいが。何事も程々にだ。

なおこの回、担当さんが「『会社推し』ってよくわからないですよ(笑)僕、会社行きたくないですもん!」とコメントしていたのが地味に良かった。
バッサリ言い切るも大石さんそのものを否定しないオブラートに包んだコメントになっているから、「まあフツーはそうなりますよね~」と一安心できる、バランスの取れた程好い読後感になっている。

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