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『バンオウ-盤王-』第58話「見えない棋士」感想 何を考えているのかわからない奴が一番恐ろしく怖い


◆ポーカーフェイス

3月8日(金)に『バンオウ-盤王-』の最新第58話が配信された。

これまで月山さんが戦ってきた棋士たちは時代を問わず和装が多い。が、如何にもなチョンマゲがいたり、将棋を指すだけでなく抜刀してそうなヒゲのおっさんがいたり、この1コマだけでも幾百の時を過ごし百戦錬磨の過程が想像できる。空白の数百年間は勿論実際に読んでみたいのだが、描く必然性がないのがなあ~。当然良い意味で悔める。

そしてこのラスボス、新堂竜王はポーカーフェイス。
確かにこれまで能面の如く表情を変えたことは一度たりともなかった。以前対局中に大地震が起きたときも、まるでそんな事象が干渉しなかったのように将棋に向き合ったままだった。思えばあの時点で新堂竜王の強キャラオーラはあったなあ。将棋の実力よりも本人のスゴ味にかかってるが、それもそれですごい。

◆持久戦

天草先生のファンっぽい安藤さんかわいい。それはそうと、新堂竜王の特性理解のためか、今回月山さんは持久戦を慎重に仕掛けることとなった。将棋分からん勢でもその判断は極めて正しいとなんとなくかつふわっふわでありながら断言できる。逆に言えば、新堂竜王にとっては計画通りであり、試されていると思われているのだろうか?

持ち時間は5時間でもたっぷりあるなあと思うクチなのだが(そりゃあそこまでの熟考・対策は必然だが)、8時間はラスボス戦に相応しいボーナスっぷり。今回は大盤振る舞いと言わんばかりに細かく使ってくるのだろうか。単行本だと1.5巻分の対局としてやっても全然かまわない。

◆考えが読めない

将棋解説ってこんなフリーダムでいいんですか?(偏見)
そもそも天草先生カレーばっか食ってないか!?そんなラジオ番組でやるような雑談をやる余裕が生まれたくらい、新堂竜王の熟考が長い。そして「どうでもいい雑談が始まったぞ。面白い」とか言ってる七島名人もなんか面白い。「面白い」って感想を述べるこの人も面白いよ!

いったいどのくらいの時間を削ったのか。そもそも大体どのくらいが平均の熟考なのか。月山さんですら「普通じゃない」と言い占めるのは、逆に脅威を煽られているようだ。単なるハッタリでは竜王の座が務まらないだろう。
今のところスゴイよりも得体が知れなくてコワイ、そんな印象だ。

表情や呼吸仕草からパティーンを分析するのはひとつの作戦としてアリだろう。相手が脂汗を垂らしていれば苦戦を強いられているんだなとこちらのメンタルが和らぐ、とかそういうものは人間として在ってもいいと思う。だって共感でしかないから。

◆正体不明

表情が読めないことから正体不明のなにかとして描かれるのは人によっては大袈裟に見える誇張表現かもしれない。が、月山さん視点からすれば全然こうなってもいいと納得できてしまう。もっと言うならば、月山さんと新堂竜王が対局後CM撮影している姿が想像しがたくなってしまった。

おいおいおい…なんかジャパニーズオカルトホラーみたいなやべー雰囲気になってきたぞ…

こえーーーーーーーーーーーーーーよ!!!!!!????!?

もう最初に能面の如く表情が変わらないって書いたけど、マジに能面だったよ!でもこんな能面姿を春夏冬先生の超絶画力で描かれると背筋が凍るホラー描写になった。
えっなにこれ、序盤でこんなの出すの…??ようやく能面を打ち破った!と思わせたところで本物のりゅうおうよろしくドラゴラムしそうな勢いで第二形態やるんじゃないか?

吸血鬼VS能面と置き換えると、どっちも互角な戦いができそうだが、今の月山さんは吸血鬼の畏れは一切発揮せず人間同然の姿として振舞っているからなあ。いやあこれはストレートに新堂竜王の畏れがヤバイ。今週この1ページだけで大満足です。

しかしこんな人に七島名人が一度勝てたんだよな。故に「新堂竜王に勝てないわけではない」という証明でもあるが、「こんな奴にどう勝てたんだよ!?」と七島名人の株が上がったのは嬉しい誤算だ。

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