タイムワープ【小説】

中学三年生の春、桜はキレイに咲き渡り、その中の校内に一人の少女が居た。それは、主人公である皮井美子である。この小説は恋愛物語なので、彼女がどんな人か想像出来るだろう。彼女は勉強が得意、そして美人だ。そんな彼女の恋愛物語です。


校内、教科書を持ちながら複数人の男子とすれ違いざま、ふとグラウンドの方を見た。そこに居たのは、私が好きな男子である高井くんだ。彼はスポーツが得意でサッカー部の部長でもある。私の通っている西中学校の三年生は、みんな青春の真っ只中。チャイムが鳴った。授業に遅れる。急がなくては。私は高井くんのことで頭がいっぱいだった。今日も私の平凡な一日が終わった。

数日後、私は彼について女子バスケットボール部の同級生、白山さんに話すと、彼女から

「告白したら?」

と言われた。意外な発言だったので私は顔を赤くしてしまった。チャイムが鳴り、みんなが席に座った。窓の方を向き、グラウンドにある桜の木をぼっーと見ていた。どのくらい時間が経ったのだろう。国語の鬼教師である平山先生が

「皮井、こっちを向け!」

と怒鳴った。すぐさま教壇の方を見た。その時、チャイムが鳴り授業が終わった。助かった。休み時間に廊下で他のクラスの子に告白を受けたが断った。なぜなら高井くんに告白されるまで恋愛をしないことを心に誓ったからである。


ある日の放課後、白山さんに連れられて高井くんの所に来た。白山さんが

「ほら」

と急かすので、私は顔を赤くしながら

「好きです」

と思い切って言った。これが、私達の青春の始まりだった。高井くんは否定も肯定も承諾もしなかったけど、

「そばに居るよ」

とだけ言って校舎に行ってしまった。白山さんは

「良かったね」

と言って部活があるので体育館に行った。初めて、自分からの告白。この幸せが続いて欲しかった。しかし、私は家庭の事情で高井くんと離れてしまうことになった。私が小さい頃に両親は離婚した。父親は総理大臣。母親はシングルマザーだ。


一週間後、私は緑の多い緑山中学校に転校した。特に何かあったわけでもない平凡な生活を送った。離れて寂しい気持ちもあった。グラウンドを歩きながら蝉の鳴き声を聞いて、私はもう夏なんだと思った。後ろから

「なんで、転校したんだよ」

と言われたので、後ろを振り向くと高井くんが居た。驚いて数学の本を落としそうになった。

「なんで、高井くんが居るの?」

私は、恐る恐る聞いてみた。

「そばに居るよ」

と言った時にチャイムが鳴った。恐怖と焦りから私は急いで教室に向った。授業中、私は高井くんが居るのが怖くなった。授業に集中出来なかった。


私は彼に知られないように転校した。新たに転校した学校はスポーツクラブが少ない学校に通った。廊下を歩いていると、階段の曲がり角で高井くんとぶつかりそうになった。

「どうして?居るの?」

二回目なので流石に持っていた教科書は落とさなかった。

「だから・・・」

私は彼の言葉を止めた。ループしそう。私はもう一回聞いてみた。

「何故、ここに居るの?」

彼は少し黙ってから

「俺、未来から来たんだ」

未来?耳を疑った。私は返す言葉が出なかった。すると、彼は私の腕を掴んで、まっすぐに走って行った。どこに行くの?

すると、二次元のワープ的な所に入った。目を開けるとデジタル時計があり、時計が早々と動いている。不思議な空間。ここは地球なのかな。

「ここは?」

真剣な表情をする彼に聞いてみた。

「タイムワープ」

そう言った瞬間、前に光が見えた。目を開けるとそこは高校だった。

「ここは?」

「君の行く高校だよ」

話している時、向こう側から女の人が来た。よく見ると未来の私だった。一年しか未来に来てないのだから、自分は全然変わっていない。最初に口を開いたのは高井くんだった。

「俺、付き合っているんだ」

驚きで口が開かなかった。未来の私が

「高井くんに感謝してね」

と言った。私は何を感謝すればいいのだろうと思った。ふと、高井くんの右手を見ると包帯が巻かれていた。今まで、そんな傷無かったのに。その事を高井くんに言おうとしたら腕を掴まれて前に走った。後ろを向くと未来の自分が手を振っていた。

「どうして、こんな所を通るの?」

「未来から来たからさ」

と言った時に、又、光が見えた。目を開けると私が通っている学校に戻ってきた。高井くんは用事があると行ってしまった。その後ろ姿を見ながら少し手を振った。

校内に戻る。あれは何だったんだろう。その時、ある男子がナイフを持って、こちらに向かって来た。突然のことでどうしょうもなくて声も出なかった。私は思わず目を瞑った。まだ、意識はある。体のどこにも刺されていない。私は恐る恐る上を見ると、手から血を流しながらナイフを握っている高井くんが居た。私は未来で見た傷を思い出した。やっとの思いで悲鳴を上げた。先生や男子生徒が来た数分後、警察も来て事件は解決した。振られた腹いせで私を殺そうとしたらしい。


事件も解決して、中学最後の文化祭!私のクラスはカフェをすることにした。そのカフェの名前はメイドカフェ。もちろん、私はメイド役。文化祭の用意をしているとガムテープを机から落としてしまった。すると手が見えて顔を上げると高井くんが

「ガムテープ」

と言いながら渡してくれた。

私は感激した。彼と同じ班になった。

「どうして、同じ班になったの?」

「そばに居るよ」

と言ってくれた時、私は舞い上がりそうになった。その時、彼は突然

「文化祭当日に爆破される」

と言った。

「爆破?理由は?誰が?何で?」

質問を畳み掛けた。

「未来に行ってきた」

私は次に出す言葉に詰まった。それは私の常識を遥かに越えていたからである。

「どうすれば?」

静かになり、周りの音が聞こえる。先に口を開いたのは高井くんだった。

「昼休み、グラウンドで待っている」

待ち合わせの約束をされた。まるで、告白する時の言い方である。


昼休み。ふざけた男子が騒ぎ始める時間。それを横目にグラウンドに向かった。しかし、そこに居たのは、高井くんではなかった。

「あなたは?」

私の問いかけに

「バスケ部の井間です」

と彼は言った。名前を聞いて分かった。井間くんと言えばクラスの女子の中で高井くんと一、ニを争う関係である。噂で聞いたくらいで顔は見たことが無かった。しかし、なかなかのイケメンだ。

「君も未来に行けるの?」

高井くんと同じように少し間が空いて、私の腕を掴んで校内の方に向った。高井くんと同じパターンだなと思っていると光が見えて、目を開いた時には文化祭当日だった。

「爆破を止めないと」

学校の前。二人は中に入って一歩一歩歩いて行く。校舎を一周すると学校の裏側で爆破装置が置かれているのを発見した。装置の時計を見ると残り三分三十秒だった。井間くんは淡々と爆破装置を解体している。しかし、「ドカッーン」という音と共に爆発した。もう、私の人生は終わったと思った。でも、意識があった。目の前には井間くんではなく高井くんが居た。

「大丈夫か?」

「どうして意識があるの?」

高井くんはキョトンとした顔で

「時間を止めたのさ」

と言った。私はこれから高井くんの言うことが分かる。

「そばに居るよ」

私が言う暇もなく言った。辺を見渡して

「井間くんは?」

と言うと

「井間は僕だよ」

と言った。

つまり二人は同一人物だったのか。変身していたんだ。そんな能力もあるのか。

「好きです」

ついに彼は告白してくれた。気が付けば暗くなり文化祭最後の歌が流れた。なんだか時が止まっている感じがした。

〜作者からのメッセージ〜
タイムワープして未来に行くありきたりな物語。まさか爆弾が爆発するとは思わなかったでしょう。最近は恋愛物語ばかり書いていますね。書きやすいジャンルです。実はこの小説は作者が昔、一番最初に原稿用紙に書いた小説をリメイクした作品です。新ネタが無くなってきました。スランプと言うと大げさですがネタに詰まっています。

植田晴人
偽名。恋愛物語ばかり書いています。