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私のこれからの本棚

「本」と一口に言っても、物語もあれば、エッセイや詩集、専門書など様々な種類がある。
 
けれど私の中では、本と言えば「物語」だ。
 
何しろ私と本は「物語」で出会ったし、幼い頃、体が弱く、寝込むことが多かった私を、初めてここではないどこか、旅へと連れ出してくれたのも「物語」だった。
 
外を自由に動き回ることが出来なかった私は、本を読むことで、主人公や登場人物になり代わって、物語の中で自由に動き回わり、冒険が出来るようになった。
 
周囲の音や景色が消え、目の前に物語の世界が立ちあがってくる体験は、物語の旅でしか味わえない読書の醍醐味だ。
 
そして物語に始まった私の「旅」は、自らが作り出す空想の世界への旅、映画やドラマの世界への旅、そして移動を伴うリアルな旅へと広がった。
 
けれど今でも、ここではないどこかという逃げ場を、旅することを教えてくれた「物語の旅」は、私にとって特別だ。
 
しかしこの数年は、煩わしいあれやこれやが頭にこびりついて離れず、本を開き、旅に出る気力さえ湧かないことも多かった。



ところで、今、私の部屋に本棚はない。
 
それほどたくさんの本を読んできた、というわけではないけれど、本は買って読む派で、なかなか処分もできないので、それなりの数の本を持っているし、昔は本棚もあった。
 
しかし何度か引っ越しを繰り返す中で、手持ちの本がいくつかの場所にバラバラになってしまった。
おかげで読み返したいと思う本があっても、それがどこにあるのかが分からない。
 
たぶん、手に負えない量を持つのは、何も持っていないのと同じなのだ。
 
だからこれからは、本当に忘れられない大事な本や、何度でも読み返したい本だけを、自分のすぐ近くに置いておきたいと思う。
 
ならば私が、今はまだない、これからの本棚に並べたいのは、どんな本だろう。
 
すぐに思い浮かぶ本もあれば、決めきれない本もある。
 
そこでこれから少しずつ、今までに出会ってきた物語と向き合って、手持ちの本の棚卸をしようと思っている。
 
そうやって、私にとって特別な物語の旅を集めた頃には、私と物語との距離も、また縮まっていることだろう。


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